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『ロゴス、パトスがリストから消えたしタグも解除されたんだが何か知らないか?!』


 光が消えた場所をただ見つめつつ、トランシーバーのスイッチを入れる。


「パトスは、往ったよ。」

『どういうことだ?』

「詳しく説明する。どこで会えるか?」

『そっちに向かう。少し待ってくれ。』

「わかった。」


 何事もなかったかのように、風が吹いている。

 まるで彼女が居なかったかのように。

 彼女の存在を隠すように。




「なるほど…。そんなことが。」


 エトスが赤色の花を手向ける。


「それは…アザミ?」

「ああ。美しいだろう。」

「なぜ、アザミなんだ?」

「駄目かい?」

「…アザミの花言葉は、『報復、復讐』だ。」

「へぇ、君は花言葉も知っているんだ。乙女なところもあるんだね。」

「エトス、君もその意味を知っていてこの花を手向けたんだな?」

「なんのことかな、よくわからないな。」

「とぼけるな。…お前は、何に復讐するつもりなんだ。」

「別に復讐の意味なんてないよ?何を考えてるのか知らないけどね。」

「そろそろ、その顔に書いていることと言っていることが違う現象、なんとかならないのか。」

「君ってさ、何も知らないのにそういうことよく言えるよね。偉い人間気取っててさ。」

「そのようなつもりは一切ないが。」

「あるさ。…だが、今回ばかりは君の言う通りだ。私は花言葉を知っていてこの花を選んだ。」

「何のためだ。」

「決まってるよ。社会。人間。それら全てに対する復讐さ。」

「…は?」

「私も、君も、パトスも。生きる意志をなくしたからここに来た。その生きる意志は、何に奪われたんだ?周囲の人間だ。社会だ。それらが私達の生きる意志を奪っていった。」

「何を、するつもりなんだ?」

「君に話しただろう。このRWにいた化け物。パトスの話で確信したよ。あれは、あれが、死神なんだって。」

「死神…?」

「そうさ。ここは、生きているのか死んでいるのかわからない人間が集う世界。…死と生の選別会場なんだ。」

「…。」

「死神に殺られるか、それまでに生き延びられるか。ここで生死が決まる。そうさ、きっとここはそういう世界なんだ。」

「それが復讐とどうつながる?」

「RWとOWを繋げる。そして、死神をOWに、私達を追い詰めた “いじめっ子” たちにプレゼントしてやるんだ。そうだ、そうすれば無力な人間たちは死に、私達の辛さを、怒りを味わえる。そうだ、苦しめばいい!私達の積み重なった苦しみと怒りを、味わえばいい!」


 あまりにもイカれた話に、私はしばらく思考が停止していた。


「何を言ってるんだ?」

「私達はもう苦しまなくていい。OWから追い出された私達が、再びOWに戻ることができる!家族、友人、会社…。私達を苦しめたものはなくなり、私達を苦しめない!なんと素晴らしいじゃないか!」


 だめだ、ついにエトスが壊れた。…かくいう自分も上手く思考が回らず、この場に適した言葉が思い浮かばないが。

 頑張って頭を捻って出てきた言葉もまた、意味がわからないものであった。


「彼女は…パトスは病気だったのかもしれないぞ?病気で病院から出られず、生きる意思を失っただけかもしれないぞ?それは彼女も、彼女の周りも悪くない。復讐の対象が居ないじゃないか。」

「いるさ。病気でも生きたいと思えるような環境を、周囲は作れていなかったということじゃないか!周囲が彼女に手を差し伸べなかったということじゃないか!周囲は彼女を見捨てたということじゃないか!許してはいけない。」

「…彼女は、望まない。こんなこと。」

「彼女も望むさ。自由が手に入るんだ。」

「彼女の望む自由はこんなものじゃない!彼女はこんな方法で手に入れた自由など好まない!…彼女はただ、平和と安寧を望んでいた。望んでいたのは憎悪でもなく、狂気でもなく、ただただ安らぎを求めていた。」

「平和は、無償で手に入るものじゃない。血肉の上にしか、平和はやってこない。」

「だが、君のやっていることはただの殺戮に他ならない!殺戮は、許されないぞ!」

「私達は、生殺しにされ続けていたんだ。殺戮の苦しみは一瞬だ。罪のない私達が受けた仕打ちが許されて、罪を持った者共が殺戮を受けることが許されないのは可笑しな話だな。」

「だからと言って人の命を奪ってもいいわけじゃない!」

「何人もの命が奪われたのに?それを傍観していたのに?それを許容していたのに?」

「殺されたなら殺していいわけじゃない。殺しは、道具じゃない。」

「彼らにとっては道具だろうがな。抜かれた銃に素手で挑むバカはいないさ。」

「…そうか、それなら俺がそのバカになってやろう。あんたは銃使えんだろ?抜けよ、銃を。」

「とうとう頭がイカれたのか?そうか、パトスが死んで君に取り付いたのか。だから君は感情的になったんだね。そっかそっか!そうなんだね。」

「だからなんだ。俺は彼女の歩めなかった人生を歩むと決めたんだ。彼女が見たかった景色を見るんだ。」

「へぇ、それはそれは高尚な心持ちでぇ。…で?それでどうなる、君が私を止めれるとでも?」

「思っているさ。思っているから、今君と対峙しているんだ。パトスと、君を信じているから。大切な仲間だから。」

「へぇ、私のことを仲間と思ってくれていたのか。てっきり致し方なく私達に協力しているのかと思っていたよ。」

「最初は、な。今は違う。これが俺の意志だ。お前の意志を、見せてみろ。俺に銃口を向けるのか、どうするのか。」

「そうだな。私の意志は、こうだ。」


 エトスがウィンドウを展開する。


「失望したよ。君にはOWで生きる意志があるようで、ね。」

「おまっ…」

「もう永遠にここに来るなよ、」


 エトスの、生気のない目が俺に向く。


「裏切り者が。」



『―あなたは BANされました―』

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