RW資料集
資料の入った袋を持ってRWに降り立つ。ちょうど拠点のリビングで複数人がくつろいでいた。
「あら、おかえり…その袋はどうしたの?」
「みなさん集まっててちょうどよかった。手伝ってもらいたいことがあって。」
「「「???」」」
みんなが不思議そうな表情を浮かべる中、僕は床の上に袋を置き、中身を一つずつ取り出した。
「これを、祖父が持っていたんです。そしてこの量を一人で解読するのはさすがに厳しくて、みなさんにも一緒に解読してもらいたいんです。」
「うーん、どれどれ?」
数枚の紙を手に取ったチトセさんが固まる。
「…どうしたんだ?」
固まったチトセさんを見た或都さんがチトセさんの手元の紙を覗き込む。
「…。」
「ん?どしたの、ふたりとも固まって。」
一ノ瀬さんもまた不思議そうな顔をして紙を覗き込む。
「…え?」
数秒固まった後、一ノ瀬さんが周りの本を漁り始める。
「ちょっと、なにこれ?!なんでこんなものがあるの?!っていうかRWのシステムってなに?!」
「おい、ちょっとまて、どういうことだ?」
とくに興味を示すことなくお茶を飲んでいた和紙剛さんが慌ててこちらに向かってくる。
「…は?RWシステム?暴走?おい、ちょっとまて、なんだこれは?」
「僕の祖父の、遺品です。僕も見つけた時、腰が抜けるかと思いました。」
「システム暴走って…。」
「あくまで僕の予測ですが、今RWで異常事態が起きているのかもしれません。」
「異常事態…。」
「まだ確証はないですが、もしそうだとしたらいち早く止めないといけません。そこで、みなさんにも協力していただきたいんです。」
僕は床に膝をつき、土下座をした。
「どうか、手伝ってもらえませんか?この未曾有の事態に一緒に対応していただけないでしょうか?」
「と、とりあえず頭を上げて…!!」
とりあえず頭を上げる。
「もちろん手伝うわ。けど、これは一体…?お祖父様の遺品って言ってたけど…。」
「僕も、全く何も知らないのですが…。もしかしたら、祖父は何かしらRWと繋がりがあったのかもしれません。」
「見てみないとわからないわね…。」
「とりあえず、中身を見てみよう。なにか行動しないと何も始まらないからな。」
「ええ、よろしくお願いします。あ、あと。」
「?」
「カレンさんを呼ばないと。このシステムの本が、プログラムっぽいんで解読できるとしたら彼女しかいませんから。」
「なるほど。」
インカムをオンにして、カレンさんを呼び出す。
「ごめんなさい、カレンさん、今手が空いていたら拠点に来てもらえますか?頼みたいことがあって。」
数秒後、面倒そうな声で「わかった」と短く返事が返ってきた。
「私たちは具体的に何をしたらいい?」
「とりあえず本を読み漁って、なにかしら気になる点、特にその紙類に書いてることと関係ありそうなことをメモっていって貰えますか?」
「おーけー。」「了解!」
「急に呼び出して何?」
「カレンさん!ごめんなさい、急に呼び出してしまって。まず、これを見てもらえますか?」
「何この紙束…?」
紙の内容を見たカレンさんがフリーズする。
「ちょっとまって、なにこれ。陰謀論?」
「…の可能性もありますが…。僕の祖父の遺品で、そこら辺の本と一緒にあって。今はみなさんに協力を頼んで何かしらの手がかりを探しているところです。」
「つまり、手伝えと。」
「まあ、つまりはそういうことですが…。これを。」
例の『RWシステム』をカレンさんに渡す。
「これは…。ってちょっと待て、Java?しかもこれ…待て、これ…。」
「もしかして、RWシステムって割と冗談じゃなかったりします…?」
「ちょっとしか読んでないから断言はできないけど、そうかも。これを解読しろってこと?」
「お願いできますか?」
「…わかった。でも、これってホントに大丈夫?仮に本当にRWのシステムだとしたら世界の真理を知ることにならない?」
「それは、そうですが…。もう、これしか方法が思いつかなかったので、祖父の冗談だって信じてこの選択をしました。」
「冗談に付き合わされるの?」
「本当だったってオチより遥かに幸せな終わり方ですから。」
「…なるほど。わかった、できる限りやってみる。ただ、全部Javaかは分からないし、かけてる部分があったら解読できないからそこは理解しといて。」
「はい、もちろんです。お願いします!」
「りょーかい。」
カレンさんが個人部屋へと戻っていった。
僕も手元の本を開く。題名は『RW管理者手記』。
―RWにシステム導入完了。大きな問題なし。これからはこの手記でRWの様子を記録していく。
―RWについてわかったこと。どこかの都市を飲み込んだような世界。サーバーを発見したことは奇跡に近いだろう。システムを使い簡単に探索したが、とてつもなく広い世界。いまのところサーバールームへの入り口はいつも使っている一か所しか見つかっていない。とりあえずは探索してマップを作ろう。
―バケモンだ。あんなやつがいるなんて。いや、でも予想はしていたんだが。仕方がない、システムの研究をして、なんとか消せるようにしよう。
―問題が発覚した。どうやらこのシステム、しっかり更新しないと破綻するらしい。どうしたものか。管理者の引継ぎも必要な様子だし、困ったな。
―OWからRWに人が迷い込んでしまったようだ。こちらで保護したが、OWでも行く当てがないらしい。しばらくはRWで保護することにしよう。
―彼女が色々アイディアを出してくれた。おかげさまでRWが素晴らしく快適になった。もはや新種のゲームのような世界になってしまったが。これは良いのか?とも思ったが、今のところOWへの影響はなさそうなので良いことにする。
―新しいフォルダを見つけた。どうやらRWとOWは私たちが通ってしまった扉でのみ繋がっているようだ。物の持ち込みは可能、でもシステムは全て独立。国で例えるとわかりやすいかもしれない。世界としては繋がっているが、法律・憲法・文化、国同士は違う。
―色々調べて、分かってきた。まず、ここのプログラムを弄ることには問題ないようだ。このRWでリスキルのプログラムを組んだりしたら永遠に死ぬことも生きることもできなくなってしまうから気を付けなくてはならないが。
―もしかしたら、RWがOWに、OWがRWに影響を及ぼす日が来るかもしれない。慎重に観察しつつ、更新作業・要素追加などを続けよう。
―また新たに人が迷い込んできた。今回はしばらく干渉せず見守ろう。もしかしたら面白い世界を彼らが作ってくれるかもしれない。
―次に人が来る前に、大半の機能を管理者のみが使えるものとした。彼らが使えるのは職業、そしてそれに関係する技術などだけ。あとは三大欲求を感じない、それでいて体の健康状態は保証、異常な環境による精神の異常を抑えるようプログラム。OWとは全く違う、都合の良いゲームの世界だ。上手く生きたまえ。
―数日、彼は探索したのちビルの中に拠点を構えようとしている。せっかくなのでここで要素を追加。リスポーン地点の設定機能を追加した。さてさて、彼はどう使うかな?
―驚いた。ビルの屋上から突然飛び降りるもんだから驚いたよ。一瞬、バケモン対策で作ったリスポーンシステムが作動しないのではと心配になったが、とりあえずはリスポーンしたようで安心。彼はとても驚いた様子だが。
―どんどんと人がこちらに流れてきそうで怖い。システム書き換えなどをするうちに扉が平きっぱになってるんじゃと心配になる。だが、扉とOWには干渉できないため、その可能性は低いものと思われ。
―大勢の人を処理しきれないので、新たなシステムを導入。その名も団体システム。RW入場時に、団体に振り分けられる。その団体ごとでゲームをしてもらおうというサイコパスな案だ。RWからの退場は可能だし、まあ、嫌ならやるなよってだけだからな。RWの情報が世間に流れるかもしれないが、オカルト話で終わるだろうと期待。
―久々に精神が不安定になってしまった。ここに来て数年(OWでは半年もたってないだろうが…。)安定期だっただけに気持ちが緩んでいた。まあ、最近になってRWのことが明らかになったり、RWに人間が現れたりしているし、仕方ないとも言える。とりあえず、彼女から休むように言われたので少し休む。




