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新たな付与術師

 大戦が終われば、戦闘は極端に少なくなる。なぜなら、「ペナルティ」が課されるから。

 空に浮かぶスコアランク表もデータなしと表示されているのみ。


「平和だなぁ。」


 ビルの上で呟く。マップを展開してもつい最近まで映り続けていた赤い点はなく。金属のぶつかる音も聞こえず。空は相変わらず灰色。街を見下ろせば半壊したビルがあちこちに乱立している。コンクリートは冷たく、訓練後の火照った体を冷ましてくれる。


「ここにいたのかい。」


 誰かが屋上に入ってくる。


「あ、打さん。」

「遅くなってしまってごめんね。これ、服、できたから着てみて。」

「あ、ありがとうございます。」


 渡された服は、白色の長袖のアンダーウェア、レギンス、黒の革製の半ズボン、袖の短い薄い青のライダースジャケットのような革製のジャケット、という一式だった。

 ビル内の空き部屋で着替える。ジャケットはベルトがあちこちにあって重たく見えるが、着てみると思ったより軽い。というか、革製の服だけどそれにしても軽い。

 それに、とても動きやすい。確かにこれは戦いやすそう。


 ズボンの腰にもベルトがあり、刀の鞘が挿せる。


「こんな感じです〜。」


 部屋を出て打さんに見せる。


「おー、似合ってるよ。ちなみにサイズや動きやすさは大丈夫?」

「はい、問題ないです。ありがとうございます。」

「よかったよかった。」


 それにしても完成度が高い。


「そういえば、打さんってどうやって装備を作ってるんですか?」

「あー、チームスタートじゃないからSouは知らないのか。」


 そう言って打さんはチームバッジを見せてきた。


「右下に、ハンマーが描かれているだろ?これが役職を示していて、このハンマーは鍛冶師のマーク。まあ、鍛冶師と言っても武器だけじゃなく今回みたいに服とかもなんでも作れるよ。サイズの制限はあるし、その技術を習得しないとできないけど。それで、それこそ君がバフを扱うように、念を込めるイメージをしたら作れる。時間がかかるのは、設計図を脳内できっちり作ることかな。イメージにちょっとでも不備があれば不良品ができちゃうし。」

「職業…。鍛冶師も、難しいんですね…。」

「まあ、得意不得意あるからね。人によるかな。自分は戦闘するよりも脳内イメージのほうが得意だからなんとも思わないねぇ。」

「なるほど…。」


 職業、そして職業に合わせた能力を持つ、か…。最初、バフを使えるのは全員で可視化で把握する必要があると思っていたけど、ヒーラーやアタッカーも職業なら僕がバッファーの可能性もあるのか…。


「そういえば、蒼さんって職業がわからないんだっけ。」


 そんな話を聞いた覚えがある。


「…聞いてみるか。」





 チームメイトに聞き、蒼さんを見つける。


「蒼さん、少しお時間よろしいですか?」

「。」


 コクリと頷く。相変わらずその目には生気がない。


「蒼さんって職業がないんでしたよね?」

「。」


 頷く。少し顔が暗くなった気がする…。


「実は、蒼さんの職業で一つ可能性を考えまして。」

「…。」


 じっとこちらを見ている。


「もしかしたら、蒼さんがバッファーの可能性があるかなと。」

「…バフ…存在しな…。」


 途中まで言いかけて、僕の顔を見て固まる。


「そう。この際はっきり言うと、僕はバフを使えます。まあ、実際にはバフではなくスキルと呼んでますが。」

「…それ…私使え…る?」

「試してみないとわかりませんが、使えるかもしれません。といっても僕も発動条件をよく理解していないので保証はできませんが…。」

「…やれることはやってみる!」


 表情が一気に明るくなる。


「では、やってみましょう!!」


 ビルの屋上に出る。


「バフは基本口頭でフレーズを発して僕は使っています。」


 -スキル・飛翔-


 そう僕は呟き、その場でジャンプする。


「高い…。」

「同じようにやってみて。」

「スキル・飛翔」


 彼女はそう呟いて同じようにジャンプするが、特に変化がない。


「うーん。バフの発動条件があるのか、そもそもバッファーじゃないのか…。」


 いろいろ思い返してみるが、発動条件があまり思い浮かばない。


『警告!敵複数接近!』

「Souさん、複数の敵が近づいてませんか…?」

「ああ。全く、あそこももうちょっと労働環境を改善したらどうなんだ…。」

「…呑気ですね。」

「とりあえず、下がってて。」

「…私も…戦え…ます…!」

「今死んだらペナルティが課されるぞ。」

「あなたも、でしょ。」

「確かにね。」


 白兎を鞘から抜き、筋力上昇と加速を自身にかける。


「-スキル・速度上昇,筋力上昇,跳躍-」


 隣で蒼さんが呟く。


「…できた。」

「えっ?」

「バフがかかった感覚がする。」


 ずっと無表情だった彼女が微かに笑う。彼女のバッジにはいつの間にかプラスのようなマークが描かれていた。


「…できる!今なら戦える!」


 彼女の目に光が見える。

 お互いに頷き、背中を合わせる。


「夢だったんです。誰かと戦うことが。誰かの助けになれることが。」

「君の役に立てたのならとても嬉しいよ。」

「本当に、ありがとうございます。」

「あ、ついでに言っておくとバフには時間制限があるからできるだけ早めに処理したほうがいいよ。」

「任せてください!!」


 敵の姿がはっきりと視認できる距離。僕と彼女は同時に地面を蹴り、敵の軍団に飛び込む。

 矢が飛んでくるが、飛翔で避ける。そのまま加速でめいいっぱいに空を蹴り、剣を躱しつつ二人の首を切り落とす。


「まずは二キル、とね。」


 そのまま速度を上げて敵の反応よりも速く捌いていく。


「ふ、ここからが本番だぞ。」


 十数キルしたところで目の前に強そうなのが現れる。

 構わずに突きを仕掛けるが、パリィされてしまった。確かにこいつは手強そう。


「どうした?ビビってんのか?」


 後方から複数人が同時に襲いかかる。それを両手の刀で受け止める。が、背中ががら空きになってしまった。


「隙あり!」


 後ろからあいつが斬りかかってくる。まずいかも。


「私、変わったんですよ。舐めちゃ駄目ですよ。」


 剣と剣が交じりあう音。


「蒼さん!」

「もう呼び捨てでいいですよ。こいつは任せてください。」

「あ、ああ、頼む。」


 もう一度背中を合わせる。後ろの敵は彼女に任せ、僕は目の前の敵に集中する。

 順に攻撃してくるがそれを片手で捌き、もう片方で仕留める。すると敵は一拍置いて塊になって突っ込んでくる。その剣が振り下ろされる前に間合いに入り込み、刀を大きく振る。すると目の前にポリゴンの壁ができた。

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