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休息と関わり

『現時刻を持ち、RW大戦を終了いたします。』


 ワールドアナウンスが流れる。あの後は特に戦闘もなく平和な時間が過ぎていった。


「さて、待機の必要もなくなったし、訓練でもしますか。」


 部屋の電気を消し、廊下を進む。拠点の隣のビルの地下が訓練場。


「ここに来るのは初めてだな…。」


 階段を下りて一番手前の部屋に入る。

 そこには数体の麦を束ねた人形が等間隔に何十体も置かれていた。

 部屋は20m四方と広い。


「これはちょうどいいな。」


 近くに立てかけられていた木刀を手に取り、ステータス画面を開く。


「スキル残数も回復してるし、これなら丁度いいや。」


~スキル・加速~


 重心を低く、刀を目の前に構える。

 三倍加速。僕の計算上、1秒程度で部屋を横断できる。


「さあ、どうかなっ!」


 地面を蹴る。そして一気に近づいてきた人形を手当たり次第に斬り、部屋の角にぶつかる寸前で止まる。


「だいたい2秒くらい…かな?」


 僕が斬った人形は全体の八割五分といったところか。


「微妙かなぁ。」

「それで微妙って…どんな感覚してるんだい。」

「あ、えーと…。」

「コルトだ。よろしく、Sou。」


 見た目はまさしくアサシンといった人が、愛想のよい笑顔でこちらに近づいてくる。


「あ、よろしくお願いします。」


 コルトさんは部屋を見渡ししばらく考えていた。


「いや、やっぱ君面白いね!」

「え、あ、うん…?」

「あの刀裁き、それに反射速度、どれをとっても俺は見たことがないくらい優れてる!」

「あ、ありがとうございます…。」

「いやぁ、実に素晴らしい!リーダーほどの人が ”すごい人がいる” っていうからどれほどかと思ったけど、確かに彼女が言うとおりだ!」


 はははとコルトさんが笑う。この人、見た目は冷酷って感じだけど中身はすっごい愉快な人だな…。


「ああ、訓練中にごめんね、さきにリビングに戻るわ~、また後でね。」

「あ、はい、ありがとうございます。」


 コルトさんが手をひらひらと振りながら部屋から出ていく。


「さて、君はそんなところで何をしているんだい?」


 この部屋の壁と柱の間に、少しの隙間があることに気づいて暫く観察していたけど、やはり彼女かな。


「カレンさん。」

「…!」


 しばらく静かにしていたが、諦めたように部屋に入ってきた。


「さて、別に僕は怒るつもりはないし、そもそも部外者の僕がここにいる時点で僕にその権利はない。でも、僕だって人間なんだ。盗み見られていたら気になる。理由を聞いてもいいか?」


 カレンさんはしばらく僕を睨んでいたが、諦めたように言葉を発する。


「あんたが信用できなかったから。あんたの実力と信用性を観察していた。」

「なるほどね。」


 まあ、そりゃそうか。最初の時からわかっていたけど、カレンさんは用心深い人なんだろうな。


「で、今のところ僕は君の信用を得られそうかな。」

「…それ本人に聞くんだね。」

「まぁね。」

「正直、あんたはとてつもなく強い。前のあの水の矢といい、バフといい、それらは否定するまでもなく強い。でも、今ので分かった。」


 彼女は相変わらず僕を睨んでいるが、その顔は面白い、というような表情だった。


「あんた、素でもまあまあ強いんじゃん。」

「それは良かった。」

「でもね。」


 彼女の表情はまた険しくなる。


「あんたを信用しろってのは無理だね。」

「ほぇー。」


 僕の適当な返事に彼女の顔は驚きにあふれた。


「意外…。もうちょっと反応すると思ったんだけど。」

「僕はね、最初から信頼を勝ち取れるなんて思ってないんだ。」

「へぇ。ちなみにその根拠は?」

「人間、信頼を得るには関わりじゃ足りないんだ。」

「…?」

「考えてみろ、今の学校は一つの教室に30人も40人も生徒が詰め込まれて、相手を簡単に信用できる、他人に心を開けられる人なんて何人いる?それに、一緒に一年過ごしたとしても、基本全員に心を開ききるなんてことはないはずだ。」

「同じ場所で過ごすだけでは、仲良くなれない、と?」

「そういうこと。それに僕は厳密には十六夜メンバーじゃない。信頼されないのは当たり前だ。だから僕は最初から信用なんて得ようとは思っていない。」

「…もし信用を得られる環境だとすれば、信用を得ようとするのか?」

「いや、しないかな。」


 彼女はまた驚いたような表情をした。


「なんで…?」

「信用は作るものじゃないと思ってるから。信用は、個々人の心に生まれるものであって、他人に作られるものじゃないさ。」

「なるほど…。」


 彼女はしばらく考えた後、ふっと笑って呟いた。


「面白いね。君をストーカーすることは止める。」

「おっけ。まあ、なにか僕について聞きたいことがあればいつでも聞いてもらって構わないから。」

「ありがと。」


 カレンさんもまた部屋を離れる。その姿を見送った後、僕は人形の藁の交換に取り掛かった。




 階段から一番離れた部屋に入る。この部屋では射撃訓練ができる。

 まあ、この世界に工場がないどころか金属の採掘すらされていないから弾薬の供給が追いつかない、よって銃器が殆ど無い。

 それが理由でこの部屋も基本使われることがないらしい。


「まあ、実戦で使うことはないだろうけど興味はあるからやってみるか。」


 と言っても使い方は良く知らない。

 とりあえず机の上の拳銃を手に取り、マガジンをセットする。次にスライドを引く。これで弾が装填され、引き金を引けば弾が発射される…はずだ。うん、確信はない。


「まあ、やってみよう!」


 だいたい20mくらい先に設置された的を狙う。ちゃんとした照準の合わせ方とかあるんだろうけど、そんなの知ったこっちゃない。撃ってみようってだけだから細かいこと気にしない気にしない!

 そんなノリで引き金を引く。


 驚いた。

 引き金を引いたら拳銃が手から弾け飛んだ。

 弾は部屋の角に飛んでった。

 僕の手から強烈な電気信号が流れる。


「…。」


 映画とかで、銃の反動はよく見かけるけれども。


「想像以上に反動が大きい…。」


 まさか銃が吹き飛ぶほどとは…。手が痛い…。


 もう一度、銃を拾い構える。

 今度は銃を手放さないようしっかり保持して…。


「難しいなぁ。」


 全く的に当たらない。反動は上手く逃がせられるようになったけど、狙うこと自体難しい…。そもそも拳銃自体が重く、手が疲れてくる。


「こんなもの、現実で使われてるなんてな…。」


 尊敬。

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