第40話
「少なくとも陛下や貴女が置かれている状況が正しいとは思えません」
「アリス様は何処にいるのですか」
「わかりません」
「知らない、ということですか」
頷くジル様は屋敷の中にいるのは間違いないと言われ、再び食事を勧めてきました。
「私は下がりますのでお食べ下さい」
「あ、ありがとうございます」
「籠を取りに後ほど参ります」
会釈程度の礼をして回れ右をするジル様は地下室を出られます。その際、入口扉に鍵を掛けられたのはそれなりに逃亡を警戒しているからでしょう。ジル様は暗に逃げても良いと言われていましたし、ウィレット様の命があってのことなのでしょう。
(さすがに鍵が掛かった扉を打ち破る訳には参りませんね)
ジル様が怪我をされては困る仰っていたのは本心でしょうし、やはり今は大人しくしていた方が良いのかもしれません。
(アリス様はきっと大丈夫です)
ジル様を信じるのであれば、少なくともアリス様に危害が及ぶことはないはずです。ならばわたくしは自分の身を守ることに徹し、然るべき時が訪れるのを待ちましょう。アリス様さえ御無事なら良いのです。アリス様さえ御無事なら。




