第37話
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地下室へ監禁されてからどのくらい経ったのでしょうか。寒さから目が覚めたわたくしは蝋燭の灯に照らされた室内を見渡し……なぜ蝋燭が?
(まさかっ⁉)
反射的に手が動き、着衣に乱れがないか確認します。わたくしの居場所を知るのはあの男たちとウィレット様だけ。アリス様の為ならこの身体惜しくありません。でも――っ!
――ようやくお目覚めですか。
聞こえたのは女性の声でした。聞き覚えのない声は身体が本能的に身構えますが蝋燭の薄明かりでは声の主の居場所はわかりません。かといってその場を動くことも出来ず、わたくしは見えない相手に誰かと尋ねます。
「屋敷の者ですか。名を名乗りなさい!」
「この屋敷で女中をしているジルと申します」
「女中……ではそこの蝋燭は?」
「私です。主より貴女の世話を命じられました」
「わたくしの……世話?」
なるほど。一応は身分相応の扱いはされるのですね。いえ、元貴族令嬢と言ってもいまは爵位のない騎士です。世話人など分不相応ですがいまはそのようなことはどうでもよく、わたくしはジルと名乗る女中を問い質しました。
「アリス様はっ。女王陛下は御無事なのですか!」
「女王様は御無事です。なにをそんなに慌てていたのですか」
「い、いえ。なんでもありません」
「そうですか。まぁ、なんとなく想像は付きます。貴女のような若い娘に手を出そうとは――男と言うのは汚い生き物ですからね」
呆れてしまいますと言うジル様はこちらの味方になって下さるのでないでしょうか。少なくともウィレット様や昼間の男たちとは一線を画しているように思えます。




