第20話
「別に深刻にならなくて良いよ。ホルスを選んだのは城から近いってだけだから」
「また顔に出てましたか」
「エリィってほんと顔に出やすいよね」
「ワタシの悪い癖ですね」
「エリィも他人のこと言えないね」
「王族は思えぬ振る舞いをされるアリス様とは違いますっ。まったくもう」
以前よりはだいぶ隠せるようになったと思っています。それでもアリス様にはやはりお見通しというか、悪癖と言うのはなかなか抜けないものですね。
「ねぇ、エリィ。ホルスに着いたらなにか食べようよ」
「携帯食料では足りなかったですか」
「うーん。そういう訳じゃないけど、やっぱりご飯は楽しみだよね」
「宿を見つけたら少し街を散策しましょうか」
ホルスまで半日ということは夕刻までには到着するはずです。街の中心広場では夜市が頻繁に行われているそうですから屋台を巡るのも良いかもしれません。
「楽しみになってきた?」
「そうですね。でも、視察が目的なのですからそこは忘れないで下さいね」
「エリィは真面目過ぎ」
わかっていると言わんばかりに頬を膨らませるアリス様ですが考えていることはわたくしと同じようです。楽しみを隠しきれずに異議ありと膨らませたはずの頬は緩んでいます。
ホルスまではあと半日ほどの道のり。女王陛下が馬車を使わずに地方の視察など普通は考えられません。ですが不満を口にするどころか旅人のような過ごし方を楽しまれるアリス様を見ているとわたくしも自然と笑みが漏れるのでした。




