第13話
「その模様は王家に伝わる由緒あるものだ。本来なら王族以外は使うことが許されない柄だ。それを御許しになった陛下のお気持ちを考えろ」
「わかっています。だからこそ、わたくしだけ特別扱いされている気がするのです」
「そう思うのであれば、それが当然なんだと思って貰えるようになるんだ」
「え?」
「常に剣となり盾となり、時には身をもって陛下を御守りする。だから優遇されて当然だと周りに認めさせる人間になれ」
「周りを認めさせる……」
とても難しく思いました。アリス様は誰がなんと言おうともわたくしへの接し方を変えないでしょう。ならばそれを認めさせるだけの人間になれというのは簡単に見えて難儀なことです。
「この国には陛下の考えに反対する奴らもいる。ブレアム卿のようにエーリカ殿へ悪意を持って接する奴がこれからも現れるだろう」
「……はい」
「だからと言って卑屈になることはない。エーリカ殿は陛下がお認めになったれっきとしたフェリルゼトーヌの騎士だ」
「――ありがとうございます」
「それにしても陛下には困ったものだな。陛下にはあからさまな特別扱いはしないよう言っておく」
あまり深く考えるなとグラビス様はそっとわたくしの頭を撫でます。この歳になって誰かに頭を撫でられるとは思っていませんでしたが意外と心地良いものです。
「環境の変化に追いつかず戸惑うことも多いと思う。悩むことがあれば陛下に相談すればいい」
「アリス様に――ですか」
「エーリカ殿にとって陛下は主君であると同時に親友なのだろ? ならば悩みの相談くらいしても良いと思うぞ」
その方が陛下も喜ばれるはずだと付け加えられるグラビス様は屯所に戻ると言われ、別れ際に「周りは気にしなくて良い」とわたくしの肩を軽く叩かれました。
騎士団長を拝命されてからグラビス様はそれまで以上にわたくしを気遣い、自由奔放なアリス様にも寛容でおられます。団長として騎士団を纏めるだけに留まらないグラビス様の活躍は尊敬に値します。
(わたくしも見習うべきところが多くありますね)
屯所へ向かわれるその背中は頼もしく、そして全てを包み込むような温かさを感じます。わたくしもいつかはグラビス様のような騎士にならなければ、そう決意する日となりました。




