第7話
私は貴族も市民も分け隔てなく暮らせる国を作りたい。でも理想を追い求めるあまり間違った選択をするかもしれない」
「暴君になるかもしれないと言うことですか」
「簡単に言うとそうかな。王として間違った道を歩くつもりはないよ。けれどもし、私が道を踏み外しそうになったらその時はちゃんと言ってね」
「もちろんです。たとえアリス様の意に反する結果となってもその時は必ず、ワタシが止めます」
貴族や市民、立場によってアリス様の印象は変わります。聖君と言う者がいれば暴君と批判する者もいるでしょう。それは致し方ないことです。ですがアリス様が暴君だったと未来永劫語り継がれるのは好ましくありません。それを防ぎ、アリス様が良き王だったと語り継がれるように環境を整えるのもわたくしの役目です。
「ねぇ、エリィ?」
「なんですか」
「フェリルゼトーヌに来てくれてありがとね」
「お礼を言うのはワタシの方です。アリス様にお仕え出来ていなければ今頃乞食になっていたかもしれません」
路頭に迷うと言うのは多少言い過ぎかもしれません。ですがいま感じている幸せを味わうことは無かったでしょう。
「アリス様、ワタシを騎士として迎えて下さりありがとうございました」
「どういたしまして。エリィ、これからもよろしくね」
「はい。誠心誠意、お仕えします」
「うん。よろしくね」
期待しているよと言わんばかりにアリス様はニパッと笑われます。その無邪気な笑顔を裏切ることは出来ません。まずは明日。貴族をはじめとする招待者との懇談会が成功することを願いましょう。




