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終焉王女と覚醒騎士の王国創世記  作者: 織姫
第1幕 王女と騎士の帰還

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第25話

「――さて。そろそろ出立の時間ですね」

「もうそんな時間なの? それじゃ、サミ君?」

「ん? なんですか。殿下」

馬車が出る時間が迫る中でサミル様から少しだけ後ろへ下がるアリス様の表情は先程までとは違います。これまでも幾度か見たことのある“王女”の顔をしたアリス様は深々とサミル様に頭を下げられました。

「此度のフェリルゼトーヌでの一件、多大なご迷惑をお掛けしたこと深くお詫び申し上げます。そして、政変から逃れた私を受け入れて下さったこと、心よりお礼申し上げます」

アリス様の謝罪と謝辞にサミル様は儀礼的な文言で答礼されます。ですが儀礼的と言いつつ、言葉一つ一つにはアリス様やフェリルゼトーヌを想う気持ちが込められているのはわたくしにも分かります。

「アリスリーリア王女殿下。殿下なら必ずフェリルゼトーヌを民の手に取り戻せると確信しております。どうか武運長久を」

「それは戦場へ出る兵に掛ける言葉では?」

「貴女にとっていまのフェリルゼトーヌは戦場も同然。ぴったりの言葉だと思うのですが?」

「それもそうですね」

再び笑い合うアリス様とサミル様。お二人のそんな姿をいつまでも見ていたいと思ったのも束の間。近衛兵の一人がサミル様に耳打ちをし、それを合図にするかの如くアリス様が先に馬車に乗り込みました。そのあとに続くわたくしは最後にもう一度だけサミル様の方を振り返りました。しかし既にサミル様は近衛兵に囲まれ、その御姿を目にすることは出来ませんでした。悲しくはありましたがこれも仕方ないこと。

「どうかお元気で」

そう独り言を呟き、待たせていた馬車に乗り込むわたくしは下座、アリス様と向かい合うように座ります。さりげなくこの位置を選んだつもりでしたがアリス様は「別に気にしないのに」と不満そうに言われます。普段は気にしなくとも、アリス様にお仕えする身ですのでこういう場ではきちんと立場を弁えさせて頂きます。

「ねぇ、エリィ?」

「どうされましたか?」

「いまさらだけど、本当に良かったの?」

馬車が離宮を離れて暫くしてのことでした。本当にいまさらですが、自分についてきたことに後悔していないかとアリス様が尋ねられました。勢いに任せて言われたとは思っていませんが、それなりの後ろめたさはあったのかもしれません。

「後悔などしていませんよ。ワタシは、ワタシの意思でアリス様にお仕えすると決めたのです」

「そっか。ありがと」

「それでアリス様、フェリルゼトーヌへ戻った後はどうなさるおつもりなのですか?」

「うーん。まだ決めてない」

「そうですか……はい?」

「まだなーんにも決めてないよ」

「じょ、冗談です――痛っ」

まさかの答えに驚き立ち上がるわたくしは思い切り天井に頭をぶつけてしまいました。

「馬車の中で立ち上がると危ないよ」

「……だれのせいだと思っているのですか」

「まぁ、すぐに城に殴り込みはしないかな。まずは内政がどう変わったのか調べて、あとは仲間探しかな」

「仲間?」

いわゆるレジスタンスというやつでしょうか。国を取り戻すための仲間が必要だと言うアリス様の顔を伺う限り、どうやらその当てはあるように見受けられます。

「宰相たちは殺されたけど、王に近しい人みんなが粛清されたとは思えないんだよね」

「その人たちをこちら側に?」

「上手くいく保証はないけどね。私が生きていると分かればきっと」

「アリス様……」

自らのプランに自信がないのか、窓に映る自身の姿を見つめるアリス様の表情に覇気を感じることは出来ませんでした。それでもアリス様は大丈夫と自分を奮い立たせるように笑顔を見せてくださいます。


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