表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終焉王女と覚醒騎士の王国創世記  作者: 織姫
第2幕 女王と騎士の初行幸

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

102/103

第45話

                 ◇ ◇ ◇


 ジル様が出て行った数時間と言ったところでしょうか。コツンコツンと階段を下ってくる音が聞こえました。足音の数から複数人が一度に階段を下っているようです。

(ジル様でしょうか)

 ウィレット様が一度だけ来た以外、地下室へ来るのはジル様だけです。徐々に近づく複数の足音に身体が緊張で強張るのがわかります。

(……助けが来た? いえ、それならもっと慌ただしく降りてくるはずです)

 ジル様がウィレット様たちを連れてきたのでしょうか。今朝の話を考えれば十分あり得ます。足に枷を嵌められているので自由は利きませんがアリス様の騎士として恥じぬ行動はしなければ。

 アリス様の為に犠牲になる覚悟はあります。ですが無抵抗にやられるつもりはありません。アリス様の、王家の近衛騎士としてやるべきことはします。

(――来ました)

 足音が止むと同時にカチャカチャと錠前を弄る音が聞こえます。息を呑むわたくしは扉が開くのを待ちます。相手の正体がわかるまで警戒を解く訳にいきません。ですが――


――エリィ!


「アリス……様?」

 わたくしの名を叫ぶ声に思わず涙が出そうになりました。

 目の前にいるのは我が主君。この屋敷に軟禁されてから声すら聴けなかったアリスリーリア女王陛下なのです。

「アリス様!」

 主君の名を叫ぶと同時。足枷の存在を忘れ、入口に立つアリス様へ駆け寄ろうとします。ですがその直後。アリス様の背後に見えた姿にわたくしは動きを止め、すぐさま彼を睨みつけました。

「貴様の主君は強情だな。見逃せば開放すると言うのに聞く耳持たずだ」

「陛下は決して悪事を許しません」

「そうみたいだな。おかげでこんな陰気臭い場所に来る羽目になった」

 如何にも悪党じみたセリフを吐くウィレット様はアリス様の両肩を押さえつけるように持ち、陛下がわたくしへ近付かぬように動きを封じます。それを合図にするかのようにウィレット様の男が二人現れ、わたくしとアリス様の間に立ち塞がりました。一人は手枷を持ち、もう一人は――

「……なにをするつもりですか」

 これからなにが起きようとしているのか、彼らの持ち物を見れば言われなくともわかります。それでもあえて問うたところで答えは返ってきません。代わりに彼らは不敵な笑みを見せ、その背後からウィレット様の声が聞こえます。

「貴様の主君が強情だからな。悪いが少し痛い目に遭ってもらう」

「待ちなさい! 話が違います!」

「命の保障はすると言った。だがなにもしないとは言っていない」

「やめなさい! エーリカは王家の人間ではありません!」

「やれ」

 声を荒げるアリス様を無視するウィレット様の号令で男の一人がわたくしの腕を掴み、後ろ手で手枷を掛けます。これでは抵抗のしようがなく、そんなわたくしにもう一人の男がニヤリと笑い掛けます。彼の右手には鞭が握られています。

(……死なない程度に痛めつける、ですか)

 手に持つ鞭をしならせる男を睨みつけるわたくしですが立っているのがやっとでした。恐怖で足が震えているのがわかります。そんなわたくしを舐めるように見回す男は少しだけ横へ動き、アリス様の目にわたくしの姿が入るよう立ち位置を変えます。

「どうした。怖いか? 主君に助けを乞うか?」

「…………」

「ウィレット卿! あの男をエーリカから離しなさい!」

「助けたいなら私の好きにさせろ。今後一切ホルスに関わるな」

「アリス様ダメです!」

「この期に及んでまだそんなことを。大切な臣下が甚振られる姿を味わえ」

 ウィレット様の言葉と同時に男が持つ鞭が振り上げられ、空気を切る音と共に勢いよく振り下ろされ――


「っ!」


 わたくしの横を掠めた鞭は床石に思い切り叩き付けられました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ