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そして、わたしの生活指導がはじまった。
ちゃんと学校に行きなさい。
部屋の掃除をしなさい。
髪を切りなさい。
爪を切りなさい。
洗濯をしなさい。
食事は自分で作りなさい。
食べたらすぐに食器を洗いなさい。
ごみはきちんと分別しなさい。
布団は敷きっぱなしにしない。
お風呂はシャワーでなくちゃんとお湯に浸かりなさい。
わたしはことあるごとに目に余る点を指摘して是正するよう彼に意見した。
なにせずっと一緒にいるし、わたしにはそれしかすることがない。
必然、彼がわたしの言うことを聞くまで辛抱強く訴え続ける。
「ゆーきやー!」
「んっだよ次から次へうるせえな。んないっぺんに言われたって覚えていられるかっつーの」
「メモを取りなさいメモを」
「面倒くせえ……」
彼は悪態をつきながらも、さいごには折れて、渋々ながらわたしの言うことに従った。
やはり仕送りは欲しいのだろう。
でも……。
思えば全て、わたしが自分自身でできなかったことだった。
◇
そんな状況をくりかえして何週間かが経った。
有紀哉の生活は、少しずつましになってきた。
少しはわたしの指導が効いたとみえる。
そして久しぶりに有紀哉ママが訪ねてきた。
彼女は部屋の様子を見るなり、
「あら見違えたわ。やればできるじゃないの」
わたしは有紀哉ママから、とても感謝された。
ずっとこの家にいてください、と懇願されてしまった。
とうぜんながら、有紀哉は嫌そうに顔をゆがめるのだった。