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第五回なろうラジオ大賞用

雪山のご馳走

作者: 城河 ゆう

 雪深い山中を彷徨っていた。

 

 友人達とスキーに来て、遭難してしまったのである。


 高い位置にあったはずの太陽も沈みかけており、一人でいる不安も手伝って、疲労が溜まってきていた。


 このまま死ぬのかもしれない、そう思った矢先、“ソレ”が目に映る。


「あ……明かりだ! 人がいるのか!?」


 明かりを目指して進むと、そこには古い一軒家が建っていた。


 人里に着いたのかと思ったが、周囲に他の家はない。


 ただ、最近では、山奥にポツンと佇む一軒家は、テレビで取り上げられる程メジャーな存在だ。



 だから、きっとこの家の人も、いい人に違いない。



 そう自分に言い聞かせて、玄関の扉を叩いた。


「ごめんくださーい!」

「……誰だい? こんな所に何しに来た?」


 声が聞こえて間も無く、開かれた扉の向こうには、いかにも“田舎のお婆さん”と言った風貌の老婆がいる。


「すみません。 迷ってしまいまして……少し休ませていただけませんか?」

「……もう少し日が高けりゃ、さっさと山を降りろと言う所だが、暗くなって来たし危ないかねぇ。 いいよ、朝まで休んで行きな」


 そう言うと、老婆はこちらを促すように、家の中へと入って行き――


「取り敢えず疲れてるだろうから、この部屋で一休みしておきな」


 ――そう言って布団を敷いてくれた。


「そう言えば、ずっと歩いて来たんだろ? コレ飲んどきな」

「あ~、ありがとうございます」


 のどが渇いていた俺は、お礼を言ってから、差し出されたコップの液体をグイッとあおると、口一杯に仄かな酸味とハチミツのような甘味が広がる。


 一息つけた事に安心したのか、一気に眠気が来た俺は、布団の上に倒れ込むようにして眠ってしまうのだった。


「ゆっくりお休み――今晩は、ご馳走にするかねぇ」
















 どれ程眠っていたのだろうか。


 やけにスッキリした頭とは裏腹に、体が鉛のように重い。



 そんなに疲れてたんだろうか?



 そう思ったのも束の間――



 シャ



 シャ



 シャ



 ――と、刃物を研ぐような音が微かに聴こえている事に気付いた。



 山奥の家、動かない体、刃物を研ぐ老婆……



 そんなわけない!



 そう言い聞かせようとすればする程、嫌な予感が膨らんでいく。



 なんとか起き上がろうとしていると、不意にガラッと音がして部屋の戸が開かれた。


 そこには――


「おや……思ったより早く目が覚めたみたいだねぇ」


 ギラッと光る包丁を持った老婆が――


「さっきの薬で疲れは取れるはずさ。 ほれ、夕飯は兎鍋だよ。 ――ヒッヒッヒ」


 優しげな笑みを浮かべていた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 昔話で良くあるお話かと思っていたら、最後の最後でどんでん返しが(笑) お婆さんが獲物のことを全て兎、と表現しているのだとしたら……というのは考えすぎですよね。 [一言] ポツンと佇む一軒…
[良い点] ヤバいぞー! 逃げろー! 逃げろー! って思ってたら、最後にズルっと転けさせられました。 面白かったです。 [気になる点] 1000文字ちょっきりにしたいからだと思いますが、「、…
[良い点] 殺戮パーティーの開催か!?‥‥と思いきや(*´Д`*) [気になる点] 兎鍋って、お話でよく聞くけどどんな味なんだろう‥‥気になります!
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