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「さて、皆さんが揃ったところで。改めて自己紹介をしましょうか。私は主催者の漆黒の翅です。いつもファンクロのコスプレ写真をうpしてるやつですね」
「えっ!?漆黒の翅さんって女性だったんですか!?」
その反応はさっき見た。再放送か?
そういえば、鈴木さんも漆黒の翅さんの性別を知らなかったのか。
「はい。男じゃなくてすみません。……なんて」
「ぼ、ぼくは!翅さんが女の人でもすこだから!翅さんの少納言コス、本気で推せるから!」
漆黒の翅さんの言葉に先程のゴスロリ少女が立ち上がって反論する。もしかして、口調的にこの子は……
「ふふ。どうもありがとうございます。ではそのままぽてとさんにも紹介して頂きましょうか」
「……ぼ、ぼく、ぽてとちゃん……。よろしく……」
やっぱり、ぽてとちゃんさんか。
でも彼女って確か高校生って言っていたような。目の前にいる彼女はどう見ても小学生……贔屓目に見ても中学生くらいにしか見えない。
「ぽてとちゃんって、小学生?」
嗚呼。俺が敢えて口にしなかったことを鈴木さんはぶっ込んでいく。彼女はアレか。空気が読めないのか。
「っ、違う、もん。ぼくはコーコーセイ、だもん。式部と結婚だって出来るんだもん」
「えっ!?ご、ごめんなさい!」
「ショーガクセイが上位ランカーになれる訳ないだろ。……ばか。やむ」
ぽてとちゃんさんはぬいぐるみを抱き締めて、黙ってしまった。どうやら拗ねてしまったらしい。
そういや彼女は平安キャラ関係のイベントでは毎回ランキング上位にいる。しかも、URキャラクターの中ではかなり使いにくい式部というキャラクターを使っての上位なので、式部と言えばぽてとちゃん……そう言われるほどだった。
そして、ぽてとちゃんさんの普段の呟きを見るに、割とメンヘラっぽくて……式部にガチ恋をしている。
……しかし、見れば見るほど高校生には見えない。どうやら彼女の地雷っぽいので口には出さないが。
「じゃあ次はYOU霊さんにお願いしようかな」
「は、はい!えっと、私はYOU霊です!推しは式部です!」
「……は?それ、病み病みの病みなんだが?」
今の一言でぽてとちゃんさんが反応する。これはアレか。同担拒否か。
「あー!違います!式部の嫁はぽてとちゃんさんだって思ってますから!私はその、絵とか小説書いてます!」
YOU霊さん。彼女はいつもツブヤイッターでテンションが高いイメージだ。
昨日のツブキャスでも彼女のテンションが異様に高かった気がする。フォロワーが呟くといつも反応をくれて、仲の良い人も多い。
ファンクロではガチ勢ではなく、割とエンジョイ勢。ランキングも圏外が普通なくらい、自分のペースで楽しんでやっているイメージだった。
「なら次は……小亜さんよろしくね」
「はい。私は小亜です。ファンクロは微課金勢です。ツブヤイッターでは基本、イラストを描いてますね」
眼鏡をかけた女性が淡々と話す。
彼女が小亜さんか。ツブヤイッターでのイメージ通りだな。
「推しはエジソンです。初めて引いたURですし、可愛くて強いのでいつも使っていますね」
そう告げてぺこりと頭を下げ、小亜さんは席についた。……うーん、実に無駄の無い自己紹介だった。