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「ふぁ……」
欠伸をしながら学校へと向かう。正直、睡眠時間が足りなかったことは否めない。
「おはよ、氷室様!」
「田中……その呼び名止めろ」
顔出しをしているので俺達が配信者であることはある程度はバレているが、それでも外で呼ばれるのは気持ちのいいものじゃない。
「ごめんごめん。ダーヤマ、寝不足か?」
「何だよダーヤマって……」
「あだ名!」
「そうかよ……。ちょっと動画の編集作業で寝不足だ……」
山田としてツブキャスをやっていることは誰にも秘密なので、嘘をついた。
まあ実際、編集作業をしながらツブキャス配信をやっていたので、半分嘘といったところか。
「え、大丈夫かよ。保健室行くか?」
「おう……一時間だけ寝る……」
「りょーかい!遅くまで動画編集させて悪いな。先生には体調不良だって上手いこと言っとく!」
「……ん。頼んだ。ふぁ……」
最後に大欠伸を一つして、田中を見送る。
そして俺は保健室へと向かった。
……幸い、先生は居なかった。職員会議でもしているのだろうか。
まあ良い。こんな明らかに眠そうな顔を見られたらサボりだとバレてしまう。
とりあえず先生の机に置き手紙をしておいて、っと。……よし、寝るか。
「……眠れねえ」
しかし人間とは不思議なもので、いざ寝る準備が出来るとなかなか寝付けないものである。
「明らかに眠気はあるし、頭も働いてないんだけどな……」
仕方ない。スマホでも見るか。
……お。鈴木さん、ツブヤイッターに書き込みしてるな。
『友達に勧められてウィーチューブ見てみたけど私にはあんまり合わなかったかな……』
成程。鈴木さんはウィーチューブを見ていないのか。
山田がウィーチューブで活動しているなんて知ったら、彼女はどんな反応をするだろうか。
「まあ、言うつもりなんて無いんだが……」
暫くツブヤイッターを見ていると、ちょうど良い感じに眠くなってきた。
「これは、一時間どころじゃ済まないかもな……」
今日の授業は諦めた方が良いかもしれない。まあ田中がノートを取ってくれているだろう……そんなことを思いながら、俺は眠った。