プロローグ
退屈だけど幸せな毎日
そんな何気ない日々がずっと続くと思っていた
あんな事になるまでは
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入学して一ヶ月程経ち、段々と学校になれてきた。
あれほどピンク一色だった校庭の桜の木も、緑に染まりつつある。
私、横尾若菜はこの春高校一年生になった。
幼馴染と同じ高校に入れたし、友達もできた、まさに順風満帆だ。
校庭を眺めていると、窓から吹き込んだ春風が頬を撫でる
「ふわぁぁ......」
心地よさから、授業中にも関わらずついつい眠気を催してしまう.....
ウトウトしていると、四限終了のチャイムが鳴った。
起立 気をつけ 礼
いつも通りの昼休みが始まる
「起きて若菜ちゃん、授業終わったよ~」
「ふわぁ...ぁ....七海.....」
「もう、また寝て.....まだ入学したばかりなのに」
「あはは、ごめんごめん」
幼馴染の由良七海、隣の家に住んでいて幼い頃からの大親友で、いつも私の世話を焼いてくれる女神の様な子だ。正直私は七海無しでは生きていけないので同じ高校に入れて本当によかった。
「今日のお弁当はね、若菜ちゃんの好きなエビフライ作ってみたの!」
「おぉ!エビフライ!いただきます!」
「はーい、召し上がれ~」
「んぐ...!!」
サクサクの衣にプリプリのエビ...そしてタルタルソース...手作りか!?
流石私の幼馴染、ソースまで私の好みの味に仕上げている....
「おいしい....おいしすぎる....」
「ほんと?よかった~!もっと食べて!」
「学校でこのクオリティのエビフライが食べられるとは.....」
「幸せだ...感動で涙が溢れて来た....」
「も~大袈裟だなぁ」
幼馴染とエビフライと過ごす幸せな昼休み
こんな幸せがずっと続きますように....
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「若菜ちゃん、なんだか騒がしいね」
「.....んぐ........ん?」
言われてみれば教室内が少し騒がしい
原因を探そうと辺りを少し見渡してみると、入口に見知らぬ女性が立っている。
その女性は、誰かを探しているのか、教室内を見渡していた。
「わぁ、美人さんだね」
「うん......もぐもぐ......」
透き通るような白い肌、黒い髪、茶色の瞳
わ、目が合った
「.......!!」
瞬間、その女性は大きく目を開きこちらへと歩き始めた。
一片の迷いもなく、こちらへ向かって一直線にどんどん進んでくる。
「あれ?あの人こっちに来てない...?」
七海も困惑している様子だ、もちろん私も心あたりがない
その女性は、教室の隅の私達の席まで歩いてくると、止まって私を見つめてきた。
「んぐ....えっと.............何か御用です...か.....?」
エビフライを飲み込み恐る恐る尋ねる
「横尾若菜さん、ですよね?」
え?私のこと知ってる...?
「えっと....はい..」
私の答えを聞くと、その女性の表情は目に見えて明るくなった
「(やっぱり....そうだったんだね)」
「え?」
小声でよく聞き取れなかった
「いえ...何でもありません」
「あの....それで....要件は....?」
「あ!すみません、こほん、あの、本日は若菜さんに伝えたいことがありまして.....」
「.....あっ....はい」
「横尾若菜さん」
「はい....?」
「私、貴方の事が好きです!」
え?
「え?」 「ひぇ?」
???????????
落ち着け、私
「今、なんと?」
「ですから、若菜さんを愛しています....と♪」
なんか知らん間に愛されている
「え?え?....なんで?...え?」
私は混乱し
「..............」
七海は硬直している
「それでは.....本日はこれにて失礼します....♪」
「あ、ちょっと、待.....」
行ってしまわれた
「えぇ..................」
どうなってんだこれ......