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人間になりたかった犬  作者: 仁咲友希
8/20

ー カイザー (改)

ー カイザー 



「えっ、この後 ひなた カイザーくんと会ってるって 間違いないの?」


そう そうだよ間違いない、最後に会ったカイザーその映像は出ていない だって…。


「あぁ、これは最後に会った映像じゃない、いつとか…は 覚えてないけど、

最後に会ったところが変わっていたんだ だから思い出した アイツがいたのは…」

「えっ ドックランの 外?」


俺の言葉を信じてないんじゃない…って言いつつ、その映像を探すことになった、

やっぱり楽しんでるのか? 天空は 感情の上げ下げが忙しいヤツなのかな。


「あっ、弟くんたち、ランドセル背負ってるね、うれしそう」

「ああ、スゴく喜んでたよ、散歩の時とかも背負おうとして怒られたり…って、

もう すでに映ってるか、入学…だっけ、あの頃は人間がいっぱい来たよ」

「親戚とか、おじいさんたち とかかな、にぎやかそうだね」

「ああ、確かに にぎやかだったよ」


確かにあの時はにぎやかだった でも 騒いでいたのは人間たちだけで、

俺はだんだん相手をしてもらえなくなって、ゲージに入れられたんだよなぁ…、

それからは…。


「まだ カイザーくん出てこないね…」

「特に 俺には何もないから 早送りで良かったろ」

「わかってたんだ…」

「当然だろ、弟たちが小学校に入学したころから 俺 また 独りが多くなった、

それは仕方ないことだったんだよな…、今はどうしてか 分かったけど」


あの時の俺はもっと遊んで欲しいって思ってた、俺は必要ないのか…ぐらいに、

こうしてみると…、結構みんな 時間をみつけて遊んでくれていたんだなぁ、

今ならわかる、大事にされてる、そう言える…と思う。


それから 弟たちの入学イベント以外、特に何もなく7歳の誕生日を向かえた。



「映像がとまったね、ずっと座ってるから ちょっと疲れちゃった、

ひなたじゃないけど…」


天空が立ち上がった、ソファーから少し離れたところまで歩くと背伸びをする、

そして 背中の羽をバタバタと動かし始めた。


「ずっと同じような姿勢だったから 色んなところが固くなっちゃた感じだよ…」

「そうだな、ちょっとした運動…って 飛ぶのか?」

「えっ 別に飛んでもいいけど…」


「ソファーがあんなに小さく…って、やっぱり ここ 何もないなぁ」

「さっきといい… そんなに飛んでみたかったの ひなた」

「ああ、鳥を見てるとさ 鳥は色んなところ行っていいなぁって…さ」


ソファーの見え方が違う…、さっきは やっぱりスゴく低く飛んでたんだなぁ、

俺は どうせ飛ぶなら 俺も連れていってくれ って 天空に頼んだんだ。

見えるものが このソファーしかないから さっきはよくわからなかったけど、

あぁ 俺たちが住んでるところ こうやって飛んで見れたら 楽しいだろうなぁ。


「鳥とさぁ、ちょっとだけ話せるんだ、鳥の話 聞いてたら楽しそうで」

「じゃ 飛んで楽しめた?」

「気持ちいいけど 思ったほどでは…、だって見えるのが アレだけだからなぁ…」

「…それは そうだね」


スクリーンの映像じゃないけど、矢印でも付けてアレって強調したい気分だよ。

そうか 白だ、白い空間に目立つ色のソファーセット それしかないんだから、

天空は 俺の言葉をきっかけにしたように 下に降り始めた、

そう 鳥だったら あの映像の中でも 自由なところに行けるんだろうな…。


「お待たせ着いたよ すぐに続きを見る? それとも もう少しゆっくりする?」

「ああ そうだな…」


…俺の言葉を聞くと 天空は 何もないところに行って何かをはじめた、

しばらくすると、手にたくさんの物を持って戻ってきた。


「また 僕の分ももらっちゃった、ひなた食べる? これでよかった?」

「別に、いらないけど…、って いい匂いだなぁ、あっ、これは…」


俺はさっき天空に、少し休んでから映像の続きを見る って言ったんだが…、

戻ってきた天空が 楽しそうにテーブルに何かを並べはじめた、

それは 特別な日しか出ない まさにスペシャルメニューのようなごはんだった、

なんだ? 何かあったのか? って アレか目の前の映像のごはんか…。


「アレか、誕生日のごはんか? その ごはんは同じよつなヤツか?」

「だって美味しそうだったし、それに ひなた なんか考え込んでたようだし…」

「考え込んでた 俺が?」

「なんか…そんな感じがさ、いろいろあったからね、美味しいもの食べようよ」

「そうだな…、うんっ 食べるか」

「誕生日のごはんだから…、7歳はさっきしたから、8歳の祝いってことだね」

「誕生日でもないのに? まぁ 別に いいけど…」


俺は空の容器しか咥えられないから、じゃ 先に俺の分を下に…って思ったら、

天空は 僕も一緒に食べたい~って言い出した、

それから、わざわざテーブルをずらして、布… ラグ? ブランケットだっけ? 

とにかく その布を敷いて、自分の分のごちそうも並べはじめた、

それから とりあえず一緒に食べ始めたんだが…、


いただきま~す の声もむなしく、あっ という間に俺は食べ終わった、

まぁ なぁ…、 そりゃそうだよ 俺 そのまま食べるし だって 俺 犬だし。


「食べるの早いよ ひなた…、一緒にと思って せっかく 用意したのに~」

「犬が早食いなのは当然だろ 人間と違うんだから」

「…もう 床に座るのを痛くなってきたから、やっぱりソファーに座ろうかな、 

ねぇ、座ってもいい?」

「別に好きにしていいけど、でも 映像は先に進めるからな」


ちょっと残念そうな 天空は置いておいて、また俺は映像の早送りを始めた。


渋々というか なんというか…、天空はスゴく残念そうな顔をして立ち上がると、

せっかく床に準備したごちそうを またテーブルの上に戻すように並べていった、

それから 必要のなくなった物を持って また何もないところに行くと、

そこへ置いて 何かをはじめた、

すると、さっきと同じように それらは消えてなくなった。

そして 戻ってきた天空は 自分が過ごしやすいように…? かな、

テーブルの上の食べてる途中のごちそうを置き直して、ソファーに腰かけた。


「ねぇ ひなた 映像は 進んだ? もう カイザーくんは出てきた?」

「いや、まだだけど」

「そう、じゃ ひなた ここに座らない? 僕だけじゃ… 怒られそうだし」

「…んっ~、まぁ いいけど」


怒られる… っていったい誰にだ? 天使の先輩とかか? とは思ったが、

俺が座れば それで怒られずに済むらしいから まぁ いいか。

少し前まで、この ふっかふかのソファーに座るのも、天空に触られるのも、

ずっと警戒してたのに…、今ではなんとなく しっくりきてる、不思議なもんだ…。


「疲れたら 僕の所で休んでもいいよ、映像は止めてあげるから」

「別に 疲れてないけどな もしかして 天空 俺を撫でたいのか? 

まったく… しょうがないなぁ…、 〈お前の為に〉 だからな…」


言われるままに 俺は座っている天空の足辺りに手と頭を乗せた座った、

なんだか 落ち着くなぁ、コイツの側…、このままってのも悪くないかも…な。



「…起きてよ、ねぇ そろそろ起きてよ ひなた、カイザーくん出てきたよ」

「あっ ゴメン 俺 寝てた…」


結構 スッキリするまで眠ってしまったようだ、やっぱこのソファーは…。

でも 今度は 夢としてあの映像の続きを見なかった、見たのは普通の夢だった、

仲間と遊んでいるとき、鳥から 飛んできたところの話を聞いていた…そんな夢、

さっき天空と一緒に飛んだからかなぁ…、飛べたら 好きなところ見れるのに…。


「結構 眠ってたか 俺」

「どうだろう…、でも ひなたも時間を気にするようになったんだね」

「明るく暗くじゃなくて、朝と夜 日にちと時間 だろ、知らなかったからな」

「…んっ? 早く帰りたいからの時間を気にしてるんだよね」

「あっ うん、そうだ うん そうだよ、早く帰りたいんだ 帰りたい…」


どうしたの… とばかりに、天空がキョトンとした顔をして俺を見ている、

でも そんな顔になりそうだったのは… 俺の方だった、

何で? さっきまで帰りたいって言い続けていたのに…、忘れた…? まさか…。


「そっ それで カイザーは?」

「ほらっ ここ、ひなたが言ったのって こういう意味だったんだね」


天空が指差す画面の中に カイザーが映し出された。


「あぁ…たぶん これがカイザーと最後に会った映像だ、やっぱちょっと変だろ」

「うん ホンとに ドックランの外だ、しかも こんな遊具の影に」

「そうなんだ ドックラン外側 俺たちは柵越しに話したのが最後なんだ…」


ドッグランの外にいる飼い主たちからは 大きな遊具が邪魔で見えにくいところ、

大きな遊具の後ろ側で そこは人間があまりこない しかも その柵の外側、

そこにカイザーはいた。

すごく警戒していた。

まるで遊具を目隠しにして 人間の視線を避けているようだ、

どうやら柵の外側から仲間を呼んでいたらしい、そこに過去の俺が現れた。





「あっ、何かと思えば カイザーか なんか久しぶりだね」

「なぁ ひなた お前、何か食べるもの 人間からもらってくれよ」

「お腹 減ってるの? どうしたんだよカイザー なんかボロボロじゃないか…」


ちょっと離れたところから呼ばれた気がして そこに近寄ってみたら、

そこにいたのは カイザーだった、なんかボロボロだ いつもは気取ってるのに、

それに 何故か俺たちが遊んでるところの向こうに、ぶつかるところの外にいた。


「もらってって…、あっ 俺を探してご主人様が来た、おやつをもらおう」

「ひなた~ ひなた、あっ いた~ 急にいなくなるから ママ 心配しちゃ…」


カイザーと話していると ご主人様の声が聞こえた 近づいているようだ。


「ひなた 探しちゃった…って、アレっ 君… もしかして… カイザー…くん?」

「ご主人様 あのね、カイザー お腹空いてるんだって…何か…」


ご主人様が僕たちを見つけてすぐそばに来てくれた。


「あの、ごはん持ってないですか? いや、ご主人様 僕のご主人様を見て…」

「何で柵の外に? しかも こんなに汚れて もしかして無理矢理でちゃったの?

 なら ご主人様に…、あれっ でも カイザーくんの飼い主さんて…」

「ねぇ ご主人様 カイザーに何か食べさせあげてよ」


ご主人様は ぶつかるところの向こうのカイザーに話かけてる。

何を言ってるかわからないけど、カイザーにごはんをもらえるかなぁ。


「…お水あげるね、こんなになって…大変だったんだね、なんて…ヒドイことを…」

「ありがとう ひなたのママさん、あっ アイツが また来た、またな~ひなた」

「あっ 待ってよ カイザーくん」


行っちゃった… ご主人様からお水をもらえたけど、ごはんはよかったのかなぁ、

僕たちのところに人間が近寄ってきたのを見て、カイザーはあわてて走って行った。

近寄ってきた人間がご主人様に話しかけてるようだ、

でも カイザーって この人間が嫌いなのか? そんなこと…あるのかな…、

だってこの人間って、ここに入るとき いつも優しくしてくれる人間だもんな。


「失礼します あの…お客様 お伺いしたいのですが、

さっきの 柵の外側にいたワンちゃんは、お客様のワンちゃんですか?」

「いえ、知り合いの犬だと思って…、外に飛び出しちゃったのかな…って」

「その飼い主さんは どちらにいらっしゃるか わかりますか?」

「……その、今日は 見てないです…」

「そうですか、では お客様に お怪我は御座いませんでしたか?」

「ええ 何もないですけど、どうしてそんなことを?」

「よかったです、実はあの犬 最近よく来ていて 最初は迷子と思ったのですが、

どうやら野犬化してしまったようでして、お客様に何かがあっては大変ですから」

「何か? それは…」


なんだろう ご主人様困ってるのかなぁ…、

この人間と話し出してから ご主人様が元気がなくなったようだ。


「はいっ… その…、飼い犬が野犬化してしまうと 危険なこともあるんですよ、

人になれている分 近づいて…人を噛んだり、場合によっては感染症を…」

「…そう…なんですか…」

「えぇ… あぁ…もうダメかな ここのワンちゃんたちの為にも対処しないと…」

「対処? どうなさるんですか?」

「飼い主さんが現れない以上、もう 〈保健所〉に連絡して対応するしかないと、

何もしないわけには…、可愛そうですが、ここのワンちゃんたちを守るの為です…」

「ご主人様 元気出して 遊ぼう きっと 僕と一緒に遊べは元気になるよ」


ご主人様が人間と話してる それだけなのに だんだん悲しそうな顔になってる、

いつも通り遊べば元気になるよ、そう言いたいけど… 言葉が伝わらない…。





「なぁ、さっきのママさんたちの話って…」


俺は映像を止めて 天空に話しかけた、また 〈保健所〉って言葉が出てきた。


「カイザーくんは 迷子じゃなくて 野犬になっちゃたようだね…」

「何でそうなったんだ? それに ママさんは ヒドイ…とか言ってたし…」

「えっ、ちょっとよく…、でも 映像を見ていれば 理由が出てくるかも…」

「いつ出るかわからないだろ それに 出ないかもしれない」

「そうだけど…、別にカイザーくんのことだし…」

「俺 知りたい、知りたいんだよ…、カイザーも ルークさんも その家族も、

俺 知らないことばっかりだ、映像の中の俺も 今の俺も 何も分かってない、

何が起こってるんだ 犬の知らない所で人間はいったい何をしてるんだ?」


人間の言葉が解って、行動が解って、人間を知れば知るほど…、

《人間 と 犬》ってなんなんだ、人間にとって《犬は家族》じゃないのか…?


天空は困った顔をして、しばらく黙っていたかと思ったら 立ち上がった、

そして そのまま何もないところにに向かって歩き出した、

そこに着くと、そこで何かをはじめた、俺はそれを 黙って見つめていた。



「僕には 人間の気持ちとか 説明できないこともある…

だから…、僕に出来ることはこれだけ、ちょっと試してみて ひなた…」


戻ってきた天空は、俺の前に立ってそう言うと 俺の横に腰かけた、

そして 俺の頭をひと撫ですると 映像の再生をはじめた。

動き出した映像は 俺やご主人様たちを追わずに 別のところを映しはじめた。



“何でだよ、やっとの思いで住みかに帰ったのに、帰ってきたのに、

住みかにも ここにも…、何でだよ 何でいないんだよ ご主人様”


映像は 過去の俺ではなく カイザーを追いかけはじめた、

映像の中で カイザーは走っていた、たくさん たくさん走っていた。


最初に着いたのは カイザーのご主人様の家かな? でもそこには誰もいない…。

まだ そこは 人間が暮らしているかのように いろんなものがあるけど、

なんだかスゴく 汚れてて 散らかってて… これが 夜逃げというものなのか。

それから たぶん カイザーがご主人様と行ったことがあるところだろう、

いろんなところに行っては 匂いをたどって、ご主人様を探して 叫んでいた。


“ご主人様 何処ー? 僕はここだよー” って 何度も何度も…。


途中でお腹がすいたのか、水溜まりや川で水を飲んだり、ゴミを漁ったり…、

あの気取ったカイザーが それが汚くても、危ないところでも 構うことなく…。

最初は カイザーを知ってる人間から おやつをもらったりしていたようだけど、

そんな人間たちも 急に カイザーを避けるようになっていって…。

人間が理由を知ったのかもしれない、カイザーはさらにお腹をすかしてるようだ、 

最後に俺と会ったときよりも もっとボロボロなって、だんだん…弱って…、

それでも…。


きっと すれ違ってるんだとか きっと次は会えるさとか、カイザーは探し続けた、

ご主人様は カイザーを探しているって カイザーと会いたがっているはずだって、

ボロボロになっても ケガをしても 諦めず探し続けた。


そうやってカイザーは ご主人様を探して走り回って、犬の群れを見つけていた、

野犬だ それは野犬の群れだった、どうやら仲間に入らないかと誘われたようだ、

でも、カイザーは仲間に入るのをキッパリと断っていた。


ご主人様に会って たくさん撫でてもらって遊んでもらうんだって 探し続けた。

ご主人様と会えるってずっと信じていた、ご主人様をずっと信じていた…。



その後もカイザーは イジワルな人間に追いかけられようとも、

いつも優しくしてくれていた 知ってる人間に追い払われるようなろうとも、

それでも ご主人様探しをやめなかった、必死にご主人様を探し続けていた。


〝俺は人間にかわれたんだ、ご主人様が必ず迎えに来るんだ〟ってそう言って、


でも そう言ってるカイザーのしっぽは ずっと… 下がったままになった…、

楽しそうに 大きく振られることは ずっと…なかった…。


その姿はまるで、母さんの迎えが来ると信じて ずっと待っていた、

子供のころの 俺の…、かつての俺のようだった。


何度目だろう…、どうやら俺たちがいない時のようだ、

さらに弱ったカイザーが ご主人様を探して またドックランに来ていた。


カイザーは俺よりも大きいのに、しかも抵抗をしてるのに、それなのに…、

お腹を空かせたカイザーは ついに人間に捕まった、

あの人間が連絡をしたんだろう、〈保健所〉の人間に あっさりと捕まって、

ゲージに入れられていた。


保健所の車の中で、カイザーは泣きながら呟いて…、いや…力なく叫んでた…。



“俺 頑張ったのに、〈コビ売れって〉あそこで教えられて… あんなにガマンして…、

やっと俺 人間に買われたのに、人間に飼われれば、人間にいっぱい遊んでもらえて、

お腹を空かすこともなくて、ヒドイとこにも連れて行かれないって… 言ってたのに、

そう言っていたのに…、 違うのかよ… そうじゃ… なかったの…かよ…。

………。

何でだよ…、何なんだよ、人間に かわれたら 幸せになれるんじゃないのかよ、

嫌だ 嫌だイヤだ 保健所なんか行きたくない 助けて…助けてよ…”


“…ご主人…様…”



「天空…、これって…」

「ひなたが知りたいことって たぶん… こう言うことだよね…」


さっきまでの元気がまるで嘘のように、天空は 声も小さく説明してくれた…、

天空はさっき 何もないところに行って、

〈ひなたの知りたいことを知るために協力してほしい〉と頼んだそうだ、

それに対して出された答えが 〈映像を見なさい〉で この映像だった。


俺が見ていない、聞こえていないところで、俺の関わりが深いものたちに、

いったい何が起こっていたか…、それを少しだけ見せてくれるようにしてくれた。


もちろん、今までの映像と同じで 巻き戻しは出来ない 過去には戻れないそうだが。


天空は どうしたら俺の要望に答えられるかわからなくなって聞きに行った と、

なんだか とても悲しそうな顔をしながら 俺に謝っていた。


これで鳥のように自由に追いかけれたら…って思ってことが出来るようになった。



「さっき ママさんが言ってた、ヒドイこと って この事なのか?」

「どうだろう…、ママさんはここまで考えていたのかは 分からないけど、

たぶん カイザーくんが捨てられたことに気づいて 心配したんだと思うよ」

「でも 保健所 に 連れていかれたんだろ、それなら 迎え…が…」

「……来る…のかなぁ」

「だけど だけど、 走り回って探すよりは…、お腹を空かすことはないし」

「そう…だね…」


保健所につれていかれたんたろ 何でだよ、何で まだ悲しそうな顔をするんだよ…。

俺はつい天空の頬を舐めた、なんだか泣きそうな顔をしてるのが 

弟みたいで放っておけなかったんだ、

俺が人間なら 泣きそうなコイツの頭を 撫でてやれるのに…な。


天空は、そんな俺の行動に驚いた顔を見せた、

それから俺を持ち上げて太股の上辺りにのせてから ぎゅっと俺を抱き締めた、

とりあえず そのままじっとしていた、俺は 天空を抱き締めてやれないから…。



どうやら天空は眠ってしまったようだ…、

天空の手が まるで力が抜けたように俺の体から離れた、

俺は天空を起こさないように そっとその場を離れた…。


「このままじゃ たぶんダメ なんだよな…」


ご主人様が 眠ってしまった弟たちに よくやってたことを思い出した。


「このままじゃ 風邪をひく… だったよな、…アレなら使えそうだ」


天空に聞こえないように小さい声で、大きな音をたてないようにっと…、

まだ使うつもりだったのだろうか? さっき床に敷いていた 布がまだあった、

よしっ これを引っ張って天空に…、咥えて… 少しずつ天空に掛けてやれば…、

…でも 上手く出来ない、こんなこと人間は簡単に出来るのに…犬には出来ない。


なるべく起こさないように…って注意をして やっと掛けてやれたけど…、

かなり不恰好な感じだ、でも こんなに色々したのにな、

よく起きなかったもんだ、よほど疲れていたのかもしれないな…天空は。


ソファーで寝てる天空を残して 俺はソファーから離れた、

映像の続きを見る為だ、適当なところまで離れて その辺に座ると、

とにかく見よう見まねで そこにスクリーンを出した、

それから映像を再生をはじめた…、よかった 天空は起きなかったようだ。



映像は もうカイザーの映像ではなかった、元に戻ったのかな? 

でも、元に戻ったにしては ドックランでもなかった、どうなってるんだろう…。

ドックランでカイザーと別れた日の、その日の夜まで進んでいるようだった、

どういうふうに決められた映像なのか 分からないけど、見れるならいいか。


その日の夜、やっぱりご主人様たちは 二人でお酒を飲んでいた、

祝いだけじゃなくて こういうときもご主人様たちはお酒を飲むんだよなぁ、

ちょっと怒ったように話す その話題は、やっぱり昼間のカイザーのこと。


詳しくわかならいけど カイザーくん捨てられてた って そう話している、


内容は天空の言っていたこと、ほとんどその内容を話していたようだった。



“飼い主は 夜逃げ をして あそこには もう誰もいない…” ってパパさん、

それって、飼い主は 住みかを 家を捨てたってことだよね、


“戻らない飼い主を待ち続けてるのが それがとても可哀想で…” ってママさん、

やっぱり ご主人様たちは 捨て犬がどうなるのかを 知っていたんだね…。



俺は映像を消して、天空の寝ているソファー戻ると そっと天空の横に乗った、

それから さっき掛けてやった布の上から天空の足辺りに座った、

手と顔を天空の足に乗せて ふせをするような感じに… そのまま目を閉じた、

そういえば… 弟たちによくやってたなぁ…これ。



「あっ ひなた やっと起きた…」

「アレっ 天空 寝てたんじゃ…」

「えっ 寝てたのは ひなたの方でしょ?」


俺が天空に掛けた布は ソファーのところに広げたままあった、

さっきのごちそうも テーブルの上にそのままあった、

天空の何事もなかったようなその態度に、さっきのは本当だったのかって、

寝ぼけて勘違いしてたのかって、ちょっと思ってしまった…。


でも、それは映像の続きを見たことで、勘違いじゃなかったってすぐに分かった。


「アレっ 映像が進んでる いつの間に見たの? ひなた」


またソファーの前で映像の早送りがはじまった、ソファーの上には俺と天空、

何かを口にしながら 画面を眺める天空に、たまに天空に撫でられる俺、

これでもう一人の弟がいたら ほとんど俺の家のソファーと同じだ、

弟たちはいつも二人で俺を挟むようにして、ソファーでくつろいでいたよな…。


早送りの映像は また 遊んでほしそうにしてる俺が映っていた…。


天空は心配してたけど、きっと大丈夫さ、アイツも元の生活に戻ってる…、

保健所に行った俺たちが帰れたんだ、カイザーにも きっと迎えが来てるさ、

迎えがつく頃には いっぱい食べて もっと元気になってるだろう。


よく考えれば アイツが俺の一番古い知り合いなんだよな…、

ペットショップからの仲間だもんな、映像を見たからよりそれを意識してしまう。


飼い主が逃げて 遠くに行ったようだから、

もう会えないかもしれないけど、

もし アイツにまた会えたらさ、そうしたらさ、

まぁ、アイツの愚痴ぐらい聞いてやってもいいかな。


きっと迎えにきた飼い主とまた仲良くやってるさ。


また遊びたいな カイザーと。


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