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人間になりたかった犬  作者: 仁咲友希
6/20

ー 遊べない… 人間の都合 ー (改)

ー 遊べない… 人間の都合 ー



「じゃ… 気になるところが終わったし、続けよう 早送りでいい?」

「そうだな、さっさと見てしまおう」



俺は見る前に ソファーにするか、床にするか ちょっと迷って 床に座った、

その横に天空が座る、それがまるで当然のように。

ソファーに座っても構わないんだが、どうしても 間違えるんだ 

まるで 弟たちの側にいる そんなにふうに間違えるんだ…、

だからソファーに座るのはやめた。


「この頃の ひなたは よくドックランに行っているんだね」

「そうだな… なぁ 天空、俺ばっか見て 楽しいのか」

「俺ばっか…って 他にもいっぱいワンちゃんが出てきて 楽しいよ」

「俺は見飽きたよ、他にも見られたらいいのに…」

「他にねぇ…、例えば…こんな感じとか? ちょうどいい 試して見るね」


映像が再生に切り替わった、画面はちょうどドックランに着いたところだった。





「最近はここに来ることが多いな…、まぁ いっぱい走れるからいいけど」

「さぁ ひなた いっぱい遊んでおいで…、ねぇ パパこれからどうする?」

「俺がひなたを見てるから 子供たちと…って、…逆の方がいいかな?」

「もう行っていいの? あっ デュークくんのご主人様だ、…長くなりそうだ」


デュークくんのご主人様がこっちを見ている、ご主人様たちが話すようだ。

ほらね始まった、弟たちと大きな方のご主人様は 僕をおいて離れて行く。


「まずは…、一番向こうまで 行ってみよう…」


ご主人様同士が話すと長いの知ってるんだ、僕も 遊びに行こう。



「こんにちは、デュークくんママ」

「こんにちは ひなたくんママ、ひなたくん元気ねぇ、もう あんなところに」

「ホンと元気すぎで…、最近デュークくんは走らないんですか? 調子悪いとか…」

「違うの、最近ねベッタリなの、…せっかく連れてきたのに これじゃ無駄ね」

「えっ? それって 何かあったんじゃないんですか やっぱり病気じゃ…」


いっぱい走ったぞ、ご主人様たちはあんなに離れた、…やっぱ何か話してるな、

いっぱい走って 離れたところから、デュークくんを呼んでみたけど。

やっばり ご主人様の側をあまり離れない、ミーナさんの言った通りだ…って、

ミーナさん来てないんだよな、カイザーもしばらく来ていないし、

新しい仲間をつくりたいところだなぁ…。


「病気? 違う違う…って、でも これも病気なのかなぁ」

「どういうこと?」

「ほらっ この間お土産渡したでしょ、あの旅行先でちょっとした事があったの」

「ああ あの旅行の時の… ちょっとした事って何かあったんですか?」

「えぇ… デュークね 旅行先で逃げ出しちゃって、置いて帰ってきたの」

「えっ 置いてきた!?」


あれっ、ご主人様 あんなに楽しそうだったのに、急に元気が…。


「仕方なくよ 仕方なく、どうしても見つからなくて…、だから話しづらくて…」

「なんだ ビックリした、見つからないんじゃ 一旦 帰るしかないですよね」

「そうでしょ…、それでね それからしばらくして 保健所から連絡があったの、

『お宅の犬ではありませんか…』って」

「迷い犬の届けを出していたんですか?」

「届け…というより チップかな マイクロチップ それで連絡があったみたい」

「そうなんですか なら マイクロチップ を入れてよかったですね」

「よかったと言えばだけど…、迷子になったの旅先のサービスエリアでしょ…、

それで、 届けてくれませんか ってお願いしたの そうしたらダメだって」

「…それは、まぁ 無理でしょうね」


でも どうしたんだろう、僕がいなくてさみしいとか? 


「こっちだっていろいろ事情があるのに…、でね わざわざ都合つけて行ったの」

「そっ そうですよね、大事な家族ですもの」

「そうしたらね ひどいの、 もう うんざり 犬はこりごり って言うぐらいに、

わざわざ行ってあげたのに、迷い犬の登録が…とか 受け取りのお金が…とか、

もう面倒でさんざんで、挙げ句ちょっと説教…いや イヤミ そうあれは イヤミよ、結構 言われちゃって」

「でも、デュークくんが元気だったんですよね よかったじゃないですか」

「…まぁ…ね…、そうそう そんなことより イヤミと言えばよ、知ってる?

カイザーくんのところのご主人の話」

「そんなこと…ですか… えっと… それで…カイザーくんがどうしたんですか?」

「ご主様の方よ、あそこの家ね ご主人が何か失敗して 会社でマズイらしいの」

「えっ そんなこと… 勝手に噂するのは…」


あれっ、寂しいっていうのより なんだが困ってるのかなぁ、じゃ 戻らなきゃ。


「えっ、だって~みんな噂してるし、あそこの奥様も…ちょっと感じ悪いでしょ」

「えっ?」

「噂はきっと本当のことよ…、最近ここに来ないのも きっとそのせいなんだわ…、 

居ないし清々しい…って、私じゃないわよ、みんなが みんながそう言ってるの」

「そんな…、 あっ ごめんなさい ひなたが…、ちょっと失礼」

「あっ それなら私 このまま帰るから また今度 ひなたくんママ…」

「ええっ、また今度、デュークくんママ」


「ご主人様 どうしたの 困ってる? それとも 僕がいなくてさみしかった?」


ご主人様の近くにかけ寄ったら、すぐに 僕の側に来て お水をくれた、

大丈夫 僕はいつも見てるよ ご主人様。


「ひなた~ ご主人様が帰るみたい、またね~」

「うん、またね デュークくん」


少し離れたところからデュークくんが声をかけてくれた、どんどん離れていく、

ちょっと怒られてるみたいだな デュークくんはおっとりしすぎだから。


「帰るよ デューク、もう ホンとあんたは…」

「ご主人様 待っていたんだよ どこに行くの?」

「ホンとに… ほとんど走らないなら しばらくここには来ないからね!」

「もう帰るんだよね? 住みかが一番だよね~」

「もう… あんたのせいで 恥ずかしい思いをしたんだから、分かってんの!」


「あぁ… チップなんて忘れてたし まさか戻って来るなんて ホンと失敗したわ…、

……せっかく遠くまで行って捨ててきたのに、…なつくな このバカ犬!!」


怒られてる… それでもデュークくんはご主人様が大好きなんだなぁ、

一緒にいれることがスゴく嬉しそうだ、本当に 住みかに帰れてよかったなぁ、

ちょっと怒られてかわいそうだから 今度 会ったら もっと遊んであげよう…。


「ひなた、私たちも帰ろう、なんだかイヤな気分になっちゃった」

「えっ もう帰るの ご主人様、まだ遊びたいよ~」





「なぁ 天空、今の話って…」


映像は ご主人様と離れて遊んでいた俺より、ご主人様たちを大きく映したんだ、

俺は小さく映っている程度、そのおかげで 話を聞くことが出来たんだけど…。


「ひなた いや、ご主人様も…か 見えないところで あんなことがあったんだ」

「ママさんと話してた時は笑ってたのに、あの人小さい声であんなひどいことを」

「人間が都合で 犬が捨てられることが あるんだよ、…イヤな話だよね」

「そうなのか…、俺 そんなこと 考えたことも…」


子供の頃 捨てられたって思ったこともあったけど…。

でも ご主人様に飼われたら、もう そんな心配はないんだって思ってた、

ご主人に飼われた後は、楽しいし、おいしいごはんも もらえてとても幸せで。

犬嫌いのイジワルなヤツでもないのに、自分たちで買っておいて、捨てるなんて、

俺たちが 犬たちが人間のこと大好きな気持ちって…、こんなのって…、


……捨てるぐらいなら 最初から。


「でもさ、ひなたのご主人様たちは とても優しい人たちだね」

「えっ なんで?」

「ほらっ、画面を見て…」


音声もそのままに画面の映像は流れていた、ご主人様の家族が合流したようだ、

みんなでごはんを食べて、そのあと車で帰ることにしたらしい、

俺はキャリーバックに入って、弟たちは車内で眠ってしまっているところだった。





「子供たち寝ちゃったね、ひなたは… まだ遊び足りないみたいだけど」

「子供たちさ、もうすぐ幼稚園だ~ って 結構 はしゃいでたんだ」

「そうなんだ…、そっちの方が楽しそうだったな…」

「…で、どうしたの 柚希」

「…もう 聞いてよ太樹くん、すごーくイヤな事があったの」


ご主人様たちが何か話してる…、まあまあ遊んだし ちょっと一眠りするかな。


「さっさね、ドックランで 久しぶりに デュークくんママと会ったでしょ、

話してたらね、ちょっと前に デュークくんが迷子になってたって言い出して」

「えっ そうなの?」

「うん、話を聞いてるとね 迷子になったのは あのお土産を貰った頃だって」

「お土産? …あぁ あれか、でも それって かなり前の話だよね」

「そうなの、それでね それでね 見つかったのは どうも最近みたいなの、

そんなに長い間 犬が…、家族がいなかったら 普通 スゴく心配じゃない」

「そうだね、もし ひなただったら大騒ぎだ 君はひなたにメロメロだからね、

でも…さ ちょっとは 僕のことも大事にしてほしいな… 僕の奥さん」





「ちょっと待って、なぁ 天空 これ大丈夫か」


俺は映像を止めた、映像の中の俺はおもいっきり眠ってしまったようだからだ、

映像の中の俺がまったく聞いていないと、人間たちの会話は聞こえないんじゃ…。


「大丈夫だよ、見てて…」


俺が全部を伝えてないのに、まるで俺の言いたいことが分かるように、

天空はニコッと笑うと、映像を再生させた。





「えっ~、大切にしてると思うんですけど~、それより 聞いてよ~」

「ハイハイっ それで?」

「もうっ、よけい腹が立ってきた~ ひどいんだよ デュークくんママ」

「…柚希がそんなになるなんて 珍しいな そんなにひどいの?」

「たぶん… たぶんだよ たぶん…なんだけど… デュークくんママね…、

……デュークくんを 旅行先に捨ててきたんだと思う」

「えっ? ちょっと今は 危ないから 着いてから聞かせて もうすぐだから」


「わっ ビックリした、どうしたのご主人様」





「ホンとだ 大丈夫だった 俺が眠ってしまったのに ちゃんと話が聞けた」


俺が心配したこと、それは俺が眠ってしまったら何も見たり聞いたりしてないから、

映像で何を話してるとかわからなくなるんじゃないか? ってことだった。


「うん 大丈夫だったでしょ、ひなた」

「じゃ 映像の俺が、見たり 聞いたりしてなくても、広い範囲が映るんだな」

「これで ひなたが全く側にいない映像があったら もう普通に映画だね」


俺は 映像を見ていて、俺が関わっていないところが見たい って思ったんだ、

最初の映像もだけど、見えなかったり、聞こえなかったりのところがあって、

そこを すごく知りたかったんだ。


どうやら、 〈視点〉って言うのを替えて よく見たい所を見れるようにしたらしい、

俺が 小さくても映っているところなら 替えられるようになったそうだ。


「へぇ~映画ってそうなんだ、…それでさぁ 天空 覗いたのか?」


えっ? そんなことしてないよ…って、天空は驚いた顔をして 言った、 

天空が俺のしたいことがわかったのは 天空もそう思っていたからだって。

心を覗くのは集中しないとダメだし、触る必要もあるんだっとも言ってた。


それにしても…、俺の知らないことが 誤って理解していたことが、

こんなにたくさんあったなんてなぁ。

人間と犬の会話だから まったく 噛み合っていないことも たくさんあった、

映像がそれを映し出してる、こうして見れたから 分かったんだよな。


俺 人間が大好きだ、ずっと一緒に居たい なら人間に…って 思ってたけど…。


「ほらっ、話の続きが始まるみたいだよ」

「あぁ そうだな 見よう 天空」


天空は人間みたいだけど 人間じゃないんだよな、

だったら…、さっきの人間みたいに あんなふうに笑いながらひどいことを…さ、

笑いながら あんなひどいことを言ったり 仲間を裏切ったり… しないよ…な。

映像は 話を途中でやめて家に帰りついていた、弟たちを寝かしつけたりと、

バタバタしていたが やっと二人で一息ついたところを映し出した。





「ベッドに子供たちも寝かせたし… どうする…風呂上がりに かるく飲む?」

「うん 頼むよ 柚希、今日はちょっと疲れた…」

「わかった準備するね、もしかして子供たちの世話大変だった?」

「いや そんなことはないよ、頼まれた幼稚園の準備も大丈夫だと思う」

「ご主人様たち ちょっと元気ないかも… 大丈夫?」

「ひなたも もう眠い頃だろ… おやすみな ひなた」


ご主人様が僕を寝床に置いて離れていく…、

こういうときは大人たちだけで ごはんをするんだ、

ごはんを食べたら きっと元気になるよね…。


「お待たせ~、じゃ 飲もう」

「おっ 美味そう~、ありがとう いただきます…って、何か 忘れてない?」

「えっ、何か足りなかった?」

「テーブルは足りてるよ、それよりさっきの…、俺もスゴく気になってるんだ」

「あ~ あれ、…思い出すと腹が立つ、ちょっと あの人 嫌いになったよ」


ちょっと うとうとしていたのに、離れたところから聞こえる声は、

さっきみたいに不機嫌のようだ、ごはん食べて機嫌がなおるといいな…。


「さっきのは、 飼い犬を捨てた って話しだったよね どういうこと?」

「もちろん たぶん…だよ あの時は 本人に それ以上 言えなかったんだ…」

「うん…、聞きにくい話だよね… 何があったのか 聞かせて…」


ご主人様たちずいぶん話し込んでるみたいだ、でも、楽しそうって感じはしないなぁ。


「…ってね そう言ったの、ひどいでしょ」

「へぇ~ そんなことが、んっー …もう ちょっと 酒 追加しようか…」

「あっ ありがとう、今日はホンと飲みたいよ、あの デュークくんママの

仕方なく とか わざわざしてやった とか、聞いてたらもう…」

「まぁまぁ ほらっ ついであげるから」

「もうね あの 『届けてくれませんか』って言った時ったら…」

「確かに、それは常識的なことではないね」

「スゴく文句言いたくなったんだけど 我慢したんだよ、もう 腹が立つ~、

これが ひなただって思ったら…、あ~なんだが、ひなたに会いたくなった」


あれっ 足音だ、もう遊びに来ないんじゃなかったの、ご主人様たち。


「見つからなくて 一旦 帰るって 確かに それは仕方ないと思うよ、

でも 帰ったら 探すためにやれることは いっぱいあると思うんだ」

「でも、マイクロチップをいれていたんだよね、ちゃんと対策してるじゃない」

「でもね、あの人 たぶん 犬にチップを入れてたの忘れていたと思うの」

「えっ!? 忘れてた?」


暗くなった僕の寝床にご主人様たちがやって来た、何か…すごい強い匂いが…、

この匂い苦手なんだけど…、また遊んでくれるのは 嬉しい。


「聞いててね そう思ったの。チップが入っいてたのに それを忘れてて、

そのまま 外さないで捨てたんじゃないか?って、外すの忘れてたから 

登録が残ってて デュークくん無事に帰ってこれたんじやないかって」

「えっ えっ? どういうこと?」

「たぶん たぶんだよ、保健所の人にイヤミを言われたって言ってたけど、

ちゃんとチップを入れてるのに 飼い主が探す努力をしてなかったから

保健所の人が親切に、迷い犬の探しの方法を教えてくれたんだって思うんだ」

「なるほど…、それは 一理あるかも…な 〈サービスエリアに捨てた〉 とか

よく報道されてたもんね… そんな話なら ん~ ちょっと イヤな話だな」

「でしょ! 探さなかったからでしょ!って言いそうになるの ぐっとこらえたの」

「確かに 直接 言ったら…、ちょっと大変なことになるかも…」


僕をなでながら 話してる さっき続きなのかな、なんだか 楽しくなさそう、

ごはんを食べたのに まだ機嫌がなおらないみたいだな…。


「そうしたらね 無理やり話題を替えてきたの、それが〈人の悪口〉なんだよ」

「悪口か…、はぁ… さらにイヤな感じだね」

「もう、はっきり聞くと角がたつし、でも 誰かに話すわけにもいかないし、

よけいに考えてイライラしちゃって… 太樹くんが聞いてくれてよかったよ」

「そうだね…、でもさ 俺もここだけの話にしておくから、ユズも…な」

「もちろん、私が勝手にそう思っただけだもん 軽はずみなことはしないよ、

でも…ね、大型犬が大変なのは分かるけど 自分たちで家族に迎えたんだよ、

デュークくんは心配だけど、もう あの人とは あまり付き合いたくないな…」

「しばらく、ドックランはやめようか…」

「そうね…、あっ でも あの人 しばらくドックラン利用しないかも、

そういえば、たまに公園に来るって言ってたなぁ、そっちを変えようかなぁ…」


いっぱいなでてくれて ご主人様たちは僕に何かを言っている 


「ひなた~、ひなたが迷子になったら耐えられない~ 迷子はダメだからね~」

「そうだぞ 首輪抜けしちゃダメだぞ、ママが寂しがるからな」


それから また離れていった、たぶん この後はごはんの続きだろうな。


「ついこの間、野犬騒ぎもあったし… ひなたのこと 守らなきゃね 太樹」





「ほらっ いい人だ…って、ひなた 難しい言葉があったけど大丈夫だった」


パパさんたちがまた お酒を飲みながら話している映像が流れている中、

天空が俺に向かって話しかけてきた。


「うん なんとなくわかったよ、大丈夫」


確かに難しい内容はあったけど、人間の言葉の意味が理解できた、

これが天空との共有ってヤツなんだろうな。


「ご主人様に大事にされていたんだね、ひなた」

「そうだな…、じゃ 早送りにしよう」


映像が早送りになった、あの日を境にドックランの映像は出てこない、

それにあの公園も、近所の公園だから、仲間とはすれ違ったりしてるけど、

遊んでいた公園とは別の公園が映っている、最近 行っているところだ。


でも、あの公園に行かなくなったのって、みんなと公園で遊べなくなったのって、

こんな理由だったんだ、 人間の都合… だったんだな…。



「あっ、これ 弟くんたちの幼稚園の映像かな?」

「興味があるなら止めていいよ」

「えっ いいよ、制服を着てるだけみたいだし…」

「あぁ… あの服を着てから 弟たちが昼間に居なくなることが多くなったんだ、

 そうか そういうことか、幼稚園か」


画面の中の俺は ヒマそうにしてることが多くなってるようだ、

それから5歳の誕生日の画面になり、また映像は自動的に止まった。



「なんだか いろいろあったんだね… ひなたの周りは」

「振り返って いや しっかり理解すれば…だよな、…ちょっと歩いてくる」

「ひなた、あんまり…」

「わかってる、自分で戻ってくるから 映像は止めておいてくれ…」


俺は天空から離れて歩き出した、といっても何もないんだけど、

とにかく いろいろ多すぎだ、俺の いや 犬たちの知らないところで、

こんなに…、そう思うと いろいろと考えてしまう、犬って、人間って…。


…少し落ち着いた。


戻ろうとソファーの方を見たら 天空が立ち上がった、

そのまま俺…じゃなくて 何もないところに向かった、何をしてるんだろう、

声は届きそうだったが 声をかけず、なるべくゆっくり ソファーに戻った。


「お帰り~、もう用は済んだ?」

「よう? オシッコはしてきてないぞ」

「えっ 違うの…って 冗談だよ、ここでは必要がないからね」

「必要ない? 知ってて 聞いたのか?」

「ご用って 別の意味もあるからね そっちの方で聞いたつもりだったんだ」

「そうか…、そうだよな ゴメン よく考えてなかった」


本当に 何で こんな映像を見なきゃいけないんだろう…、

スクリーンを見るとそう思ってしまう、けど、見れてよかった とも思う…。

この映像を全部みたら、見終わったらどうなるんだろう、俺 どうなるんだろう、

ここから帰ったら どう思うんだろう、人間を見て 俺 どう思うんだろう…。


「でもさぁ…、そっちの用があったら 遠慮なく言ってね… 片付けるから」

「しない~って しなくていいって言ったのに わざとだろ~!」

「もう、わかったから~ 冗談だってば~ 引っ張らないでよ~」


コイツ~ 絶対にからかってる、絶対に 俺をからかって遊んでる、

また服を引っ張ったのに、なんだよ こっちが怒ってるのに また楽しそうして、

何でそんなに楽しそうなんだよ 俺 怒ってるんだぞ!

なんだかいろいろ考えているのがバカらしくなった、天空といると …楽しい。


「じゃ 続きを見よう 早く帰りたいんでしょ」 

「べっ… 別に急がなくても… いいぞ…」

「あっ~ もしかして 僕と一緒にいたくなっちゃった~」

「わっ、 顔スリスリは禁止って言ったろ! 早く 始めるぞ」

「もうっ ひなたは~ ホンと ツンデレなんだから~」


本当に コイツはいったい何が楽しんだ? こんなことがスゴく楽しそうで、

俺は映像を早送りさせた、5歳の誕生会はあっという間に終わっていった…。


予想通りだ、予想通り俺はヒマそうにしている…、

弟たちが幼稚園 パパさんは仕事…、そしてママさんも居ないことが多くなって、

この頃の俺は 家に独りで留守番をすることが多くなったんだ、

散歩は夕方にちょっとだけ連れていってもらって、後は家で遊んでもらってた。


「なんだか ひなた 独りが多いね、ヒマそう」

「この頃はみんないなかったんだよ…、でも、ママさんは何でいないんだろう…」

「再生にして 理由を探してみる?」

「いいよ別に…」


理由を探すんじゃなくて、知りたい人物の行動を見れれば、すぐに判るのにな…、

例えばさ この映像の中で、俺がヒマしてる時のママさんの行動を見る とか、

それが出来ればな、やっぱ まだ不便だなこの映像って ちょっと思った。


「あっ、久しぶりにドックランに来てる、見ようっと」


再生に変わる、どうやら久しぶりに家族全員でドックランに遊びに行ったようだ。





「ねぇ ママ、僕たち ここのワンちゃんたちと遊んでいいの?」

「ダメ、ここはワンちゃんがたちが自由に遊ぶところなの、

二人が遊ぶところじゃないの」

「えっ~ いっぱい いるのに、ほらっ みんな遊びたがってるよ」


弟たちが何かを言ってる ワガママを言ってるのかな? 

ご主人様 ちょっと怒った顔をしてる。


「僕がひなたをみてるよ、子供たちを頼む…、いや たまにはひなたと遊ばせて…」

「ほら パパ最近ひなたと遊べなくて寂しかったんだって だからママといこう」

「やだ~、じゃ パパとワンちゃんたちと みんなで一緒に遊ぶ~」

「いいよ~、なら… ママ ひとりでアイス食べちゃおかなぁ…」

「アイス!? そっちがいい そっちに行く、一緒に行こう弥月」

「えっ~でも、…わかったよ…奏星」

「じゃ 1時間ぐらいでいい? 連絡するね パパ」


弟たちは別のところに行くのかな、ご主人様 早く遊びたいよ 早く行こう。


「じゃ 最近 俺 運動不足だから、一緒にたくさん遊ぼう ひなた」

「もう 遊んでいいの? えっ 一緒に遊んでくれるの 遊ぼ 遊ぼ」


久しぶりにここに来た、どうやらご主人様が遊んでくれるらしい、嬉しいな、

たくさん遊んで貰おうって…、思ってたのに…。


「ねぇ、もっと遊ぼうよ~ ご主人様ってば!」

「はぁ~ ひなた~ お前 元気すぎだよ…、ほらっ お水、

俺 ギブアップだ、ちょっとお友達と遊んできてよ ここで見てるから…」

「もう遊んでくれないの? じゃ 遊んでくるね~」

「はぁ~、あぁ… そうそう楽には休ませてはもらえないようだな、

ここはユズちゃんのために、嫌われないように お相手をしておかないと」


ご主人様たちが集まっている、僕のご主人様はここでは人気者なんだよな…、

いつも僕のご主人様に群がるように 人間たちが集まってくるもんな…。


「もしかして、ひなたくんの飼い主さんですか?」

「はいっ、よろしくお願いします」

「今日は奥様はいらっしゃらないの? ひなたくんも 久しぶりだし」

「ええっ、妻は子供たちと遊んでて 僕がここで待機なんです」

「なら ぜひ家族でドックランにいらして~、ご主人様がここで待機になったら、

私たちも もっとお話できるじゃないですか ねぇ 皆さんもそう思うでしょ」

「えぇ… 交代で! 来たいと思いますので、妻とも仲よくしてあげて下さい」


あれっ…、ご主人様 困ってる? しょうがないなぁ 行ってやるか。


「あらっ、ひなたくんの… お久しぶりです」

「あっ これは、デュークくんの ご無沙汰してます…」


あっ、デュークくんだ すごい久しぶりだな、

ご主人様は 何だか もう大丈夫そうだし、なら デュークくんと遊ぼう。


「デュークくん 久しぶり~、向こうで遊ぼう」

「あっ ひなたくんだ~、久しぶり~」

「デューク、ほらっ ひなたくんと遊んでおいで」

「行こうよ デュークくん」

「ちょっと待って~、もう少しだけ ご主人様が どこに行くかみたいんだ…」


ミーナさんが言ってたけど、まだ飼い主さんから離れることは注意してるんだ、

そんなに あのことが怖かったんだなぁ。


「今日は 奥様はご自宅?」

「いいえ、子供と近くで遊んでます、どちらかと言えば僕がひなたと留守番です」

「そうなんですか、久しぶりにお話したかったのに、奥様はおかわりない?」

「えぇ、元気にしてますよ、最近パートに出て 体力が有り余るぐらいです」

「えっ じゃぁ、家計の助けに…、とかですか?」

「いえ、妻には何かやりたいことがあるようでして、それにしても…

いや… まいったなぁ… 僕は 〈甲斐性が無い〉ように見えますかね…」

「いえ そんな、あらっ、まだいたの デューク遊んでおいで、待ってるから」

「待ってる って言った~ わかったよ、ご主人様 行ってくるね~」


ようやく デュークくんがご主人様から離れた…。


「デュークくん、以前と違ってご主人様から 離れたくないって感じですね」

「あっ…、えぇ、まぁ…、甘えん坊で…」

「何か 甘えたくなるようなことがあったんですかね デュークくん」

「あぁ… その 奥様から聞いていらっしゃいません? …迷子の話…を」

「迷子? …ああ あれ以来 なんですか? じゃ すごく 不安だったのかな、

でも 見つかってよかったですね、捨て犬 と間違われなくて」

「えぇっ、ホントに…」

「おっと 失礼 妻との待ち合わせが、ここで失礼します、また今度」

「えぇ、また…」


「はぁ… せっかく迷子の話が下火になってきたのに…、失敗したわ…、

また間を開けないとダメかなぁ…、あぁ ひなたくんの家族は気をつけないと…」



せっかくデュークくんと遊び始めたのにな…。

やっとデュークくんがご主人様から離れて こっちに来たのに、

ご主人様たちの話すぐにが終わっちゃったみたいだ、

僕のところにご主人が向かってくる、それに…デュークくんも…。


「あっ ご主人様が! ご主人様が僕を置いて移動しちゃった 待って~、

僕 行くね ひなたくん またね~」

「あっ、デュークくん…」





こういうのが、歯切れの悪いって言うのかなぁ…、映像を見ながら思った、

デュークくんのご主人様は笑ってるんだけど、なんかぎこちないんだよな。

独りになったら またなんか言ってるし…。


「これって何月ぐらいかなぁ…、デュークくんの迷子からかなり経ってるよね」

「あぁ どのぐらいかは知らないけど、そうだよ ずっとあの調子だったよ」

「ふ~ん。そうだ ママさんのいない理由すぐ判ったね 〈パート〉だって」

「それって パパさんみたいに働くってことだったよな…」


映像の中は ドックランを出て合流したご主人様たちの映像に変わっていた、

みんなで集まったあと 買い物をして帰るようだ、

家に帰ると また弟たちを寝かしつけて、二人でごはんをしながら 

ご主人様たちが また話をしている、どうやらデュークくんママのことのようだ。


“捨てたことは彼女の黒歴史だ” ってなんのことだ? よくわからないけど、

“デュークくんはもう捨てられない、ママさんにも近寄って来ない”って話してる。


「なぁ、天空、何で もうデュークくんは捨てられない ってわかるんだ?」

「えっ、だって 今も あの飼い主さんのところ にいるんでしょ」

「あぁ、たまに遊ぶよ けど、ご主人様同士は… 仲良くないかもな…」

「僕には 大人のやる事は ちょっとよく分からないけど…、

〈見栄?〉 とか 〈マウント?〉とかそういうのかなぁ 聞いたことがあるよ」

「なんだそれ? 全然 分からない」

「んっ~、例えば…ねぇ…」


「なるほどなぁ…、生き物… いや俺たちはなら ただ 〈力比べ〉するだけなのに、

大人の人間だと 笑いながら あんなふうになるんだ、人間は難しいなぁ」


要するに…だ、自分が強い、えらいって思って 相手を見下してたけど、

ご主人様たちに、デュークくんを捨ててないって 嘘 をついてしまったから、

嘘がバレたらとか、いじめられるとか…、勝手に思って逃げてる…って感じか。


「これって、まさに 〈負け犬〉だなって、俺が言うのも変だな」

「ははっ、そうだね…」

「別に 笑わそうって思っている訳じゃないぞ」

「でも、なんだかんだ デュークくんはご主人様と仲良く暮らせてるんだから…、

あれっ、そういえば…ひなた、カイザーくんが大変だった…とか言ってたね」

「あぁ、それはな…」

「待って やっぱり言わないで、カイザーくんを 探して答えを探すから」

「はぁ~ 天空…、俺の過去で楽しむなよ…」


ずっとそのまま再生されていた映像が 天空の操作で早送りになる、

最初は、早送りでいい とか言ってたけど、結構 俺も見てしまっているな、

早く帰る…、いや 今は 人間の事を もっと 知りたいかも…。


「本当に ひなた ヒマそうだね、つまんなそう」

「遊んだり、散歩したり はしてくれたけど…、どんどん短くなるんだ」

「大人になると、みんな忙しいん…、あっ カイザーくん見つけたよ」


今なら分かる、前のようにたくさん遊んでもらえなくなって寂しかったけど、

それでも こんなに 俺は大事にされているんだって、

ご主人様たちは 空いた時間を見つけては 遊んでくれていたんだ。

でも、デュークくんは あんなにご主人様のことが大好きなのに…。


映像は、カイザーがドックランでデュークくんと何かを話をしているところだ。





「デュークさん、言ってましたよね」

「だから~ 違うよ~、言ったのは~ 僕が前に~迷子になったって…」


ドックラン久しぶり~って中に入って走り出したら、カイザーが見えて、

こいつも久しぶりだなって~って 側によってみたんだけど…。


「だから~ 違うんだって…」

「もうっ! それが ご主人様に捨てられた ってことでしょう!」



なぜか カイザーがスゴく興奮している、ケンカってわけではないようだけど、

なんだか 声をかけれないぐらい話をしていて、どうしたんだろう…。


「俺、本気でマズいかも知れないんです、いろいろ教えてください」

「何? マズいってどう言うこと?」


思わず話しかけてしまった。

でもこんなに興奮しているのになぁ、ご主人様たちは僕たちに近寄って来ない、

ケンカってわけではないようだからなのか、まったく気にもしていないようだ。


「あっ ひなたか お前も知ってたら教えてくれ、俺 ご主人に捨てられたんだ」

「えっ、捨てられた?」


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