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人間になりたかった犬  作者: 仁咲友希
10/20

ー アイツさ… いないんだ… ー (改)

久しぶりの投稿です、なんとかチェックしたんですが、どうでしょうか?

…では 改めて、初めての家族旅行に行った ひなた、

この辺りから より 人間のことに興味を持っていくことになります…。

人間を知って ひなたの 思うことは、そして 3つの選択は…、

楽しんでもらえたら嬉しいです。

ー アイツさ… いないんだ… ー 



「見て見て ひなた、弟くんたち また海で大騒ぎしてる、

パパさんたち大変そう…、ねぇ ひなた 弟くんと 次はいつ 旅行にいったの?」

「それが…、散歩は行くけど 弟たちとの旅行は この旅行だけなんだ…」

「えっ、そうなの?」


俺 ちょっと考え込んでたけど、その間 天空は映像をずっと見ていたらしい、

確かに あの弟たちの様子は…、 こうして 改めて見ると やっぱ笑えるな。


「どうしたの ひなた、何かあったの?」

「いや…さぁ…、みんながこんなに楽しそうなの 久しぶりに見たなって…」

「えっ なんで? 何かあったの ケンカしてるとか?」

「イヤ、そんなことはないよ、今も みんなと仲良くしてるよ ただ…」

「ただ どうしたの?」

「この旅行のあとさ しばらくして 弟がどこかに行ったまま帰ってこないんだ」

「えっ 帰ってこない?」


今も俺は ご主人様たちと一緒にいて 毎日はとても楽しい 本当に幸せだ。

でも… 最近 ちょっとした違和感があった、なんでそう感じていたのか、

それが 分からなかったけど、この映像を見ていて 気がついてしまったんだ、

その違和感の原因は ご主人様たちの 笑顔 だ。

最近のご主人様たち 笑ってるんだけどなんだか楽しそうじゃないっていうか…、

1人になると とたんに何かを 考え込んだりしてて… 何だか変な感じで…、

この映像を見て気がついた ご主人様たち 本当に楽しそうに笑ってないんだ。


「ねぇ それってどういうこと? それって すぐに出てくる?」

「イヤ かなり先だ えっと… そうだ サクラ だ その後ぐらいだったな…」


映像のご主人様たちは もう1日そこに泊まる予定だったようだ、

どうやら 昨日の夜の話していたことはやめて もともと決めていた通りに、

あちこち遠くに遊びに行くことはせずに、近くの海とかで のんびりとしている、

あれは何をしてるんだろう、とにかくのんびり、ゆったり…穏やかな感じだ、

今も もちろんご主人様たちは 変わらず暮らしているのに…、そうか…、

なんだかずっと気になってたのって こんな感じじゃなかったせいなんだ。


「なぁ あれっ、あれは 何をしてるんだ?」

「あれ? あれは 釣り だね 魚を捕まえようとしてるんだよ」

「捕まえてどうするんだ 食べるのか?」 

「どうだろう…、食べる為に釣るのと、釣ることを楽しむのと 両方あるからね、

夕飯にする~って パパさんは言ってるみたい 食べるのかな?」

「食べるのはわかる、でも 楽しむ為に釣る ってどういうことだ?」

「それはね、〈スポーツフィッシング〉 って言われてる、まぁ 遊びかな」

「あっ 遊び? 遊びで魚を…」


言いかけて声に出すのをやめた、また天空が悲しい顔になりそうだから。


《 遊びで魚を釣るのか? 人間は遊びで生き物を おもちゃ にするのか? 》


パパさんと弟たちは 相変わらず釣りをしている そばの俺はヒマそうだが、

いつの間にか どこかに行っていたママさんは戻ってきて声をかけたようだ…、

映像の中では まだ魚が釣れていないようだ、釣れたらどうするのだろう…。





「みんな~、 あらっ 全然 釣れてないね…、そろそろ お昼にしようか」

「そうだね パパもお腹すいたよ… 釣りはお昼のあとにしようか」

「え~、まだ 大丈夫だよパパ」

「僕はお腹すいたよ 奏星、 お昼ごはん 食べようよ」

「あっ ご主人様たちが動き出した、もう帰ろうよ、仲間もいないしヒマなんだ」


「パパ… ねぇ パパっ なんか動いてるよ」

「えっ? ホンとだ、 おいで弥月 弥月の竿だぞ」

「えっ 僕の? パパっ パパ これ どうすればいいの?」

「あわてるな…、ゆっくり… ゆっくりだ、ゆっくり糸を巻くんだ…」


「やった~! 釣れた 釣れたよ! パパ」

「スゴい、スゴいや弥月」

「やったな 弥月 はじめて釣れた魚だ!」

「ママ~、見て見て 釣れたよ」

「スゴいね 弥月 頑張ったね」


なんだろう…、帰るのかなぁって思ったら なんだか大騒ぎして集まってる、

ここからじゃ よく見えないや…、何を言ってるのか わかればいいのにな…。


「ねぇ、見てみて ひなた 僕が釣ったんだよ」

「何? あっ 池とかにいるヤツみたいだ 何でこんな狭いところにいるの?」

「ねぇ ママ このお魚 どうやって家につれていったらいい 家で飼うんだ」 

「さっきも言ったろ 弥月 このお魚ならおいしく…」

「えっ パパ 本当に食べちゃうの 僕がはじめて釣ったのに…」

「だって みんな釣って食べてるよ ほらっ 弥月だってお魚 好きだろう」

「お魚は好きだけど このお魚は食べないよ、釣れたら飼うつもりだったんだ」

「えっと…弥月、このお魚は… 家では… 無理かなぁ…」


水がいっぱい入ったのの中を 弟が見せてくれた、池とかで見るヤツがいる、

でも…、あんなに楽しそうにしていたのに 弟たちの様子がなんだか変だ…。


「……えっ どうしたの? 僕 何か悪いことした? 泣かないで…」


なんだろう… どうしたんだろう…、あんなに楽しそうだったのに 急に何で?

兄ちゃんが悪かったの? なら 遊んであげるから泣かないで…。



「ちょっと残念だけどなぁ… いいのか弥月」

「パパったら…、写真 撮ったからいいんだよね 弥月」

「うんっ、それがいい、飼えないなら 絶対それがいい」

「僕も一緒に行っていい 弥月」

「うんっ、一緒にやろう 奏星、ひなたも一緒に来て」

「ここから離れるの?」


なんだか泣きそうに大騒ぎしてた弟たちが移動をするようだ、ご主人様たちも?

何をするんだろう 散歩かな? えっ、でも そっちは…、


「そこはダメだよ~、また 濡れちゃうよ~」


弟たちが あのびしょ濡れになったところに 引っ張って連れていこうとしている、

ダメだよ また水がいっぱい来たら濡れちゃうよ。


「大丈夫だよ ひなた 今日は 準備もしたし、パパたちがついてるから」

「ひなた 海を嫌がってるのかな… ならリードは パパが持っててあげるよ」

「ありがとう パパ、ねぇ 弥月 僕もコレ持っていい?」

「うんっ、奏星 次に ここまで波が来たら離そう…」


この間 海で僕も弟たちもおもいっきり濡れちゃったし、行かない方がいいのに。


「行っちゃった…、せっかくとったのにな 飼えないのが残念だね 弥月」

「しょうがないよ これでいいんだよ奏星、このままじゃ 可哀想だもん…」


でも 今度は大丈夫なようだ、足だけは濡れたけど、すぐにこっちに戻ってきた、

何をやってたんだろう… なんか池にいたヤツが逃げていったけど…大丈夫かな?





「弟くんたち 捕まえたお魚を 逃がしてあげたんだね…」


弟たちが波が来たのにあわせてバケツに入っていた魚を海に戻している映像が映る。


「そうか… あの時 何をやっていたかと思っていたけど、そういうことか…」

「飼うために釣った…か、弟くんたちなりに考えてたんだね…」


はじめての釣り…、 弟たちは 魚を捕まえたら 家で飼えると思ってたようだ、

そのつもりで釣りをしていた、でも 飼うことは出来ないって釣れてから知った。


じゃ パパが言ったように食べる? もちろんいつかは食べる釣りもするだろう、

でも 今は お腹がいっぱいになるぐらいたくさんのごはんをママが作ってくれた、

だから 食べる必要がない、どうしよう このままだと弱っていくだけだ…、

ならどうしたらいい? 弟たちなりにじっくり…、いや すぐに答えを出してた、

弟は ご主人様たちに向かって はっきり どうしたいかを伝えていた…。


“今日は食べる為に釣ったんじゃないから 海に返したい パパ 返していい?”



あぁ…、俺はこの人間たちに飼われてよかった…。家族になれて 本当によかった。



釣りは早々に切り上げてしまったようだ、靴を脱いだついでに浜辺で遊んでいる、

それから ママさんの作ったお弁当 美味しいごはんを 砂浜でみんなで食べて、

違うところに向かった。

車に乗るご主人様たちは …なんだか嬉しそうだった、

買い物かな…、あまり遠くに行かず 近くに遊びに行って 弟たちをいっぱいほめて、

いっぱい抱きしめている… とても幸せそうに。

きっと、弟たちが寝ついたら 嬉しそうに… また二人でお酒を飲むんだろうな。



「なぁ 天空、弟がどこに行ったか知りたいんだろ、俺もそれ知りたいんだ」

「あっ そうだったね、ちょっと見てたら…、見いっちゃって 早送りしよう」


映像が早送りに変わる、ご主人様たちは… 思った通りだ、

弟たちと俺を また同じところに寝かしつけてから、お酒を二人で飲んでいる…、

二人はやっぱりとても楽しそうだ、きっと弟たちが優しい人間に育っているのを、

喜んでるんだろう…。

俺は子供を持つことが出来なかったからな…、母さんもこんなだったのかなぁ…。

それから あっという間に旅行から帰り、また ヒマな日常に戻っていった。



「なぁ 天空、俺って大きさが変わらないだろ 弟たちは大きくなってるのに」

「そうだね だいぶ弟くんたち大きくなったね」

「人間は いや 犬は いつから大人なんだ?」

「えっ いつからだろう…、年は弟くんたちと同じだけど、犬と人間は違うから、

成長が違うし、それに 人間はこの年になったらって決まってるんだけど…」

「ん~ じゃ 今の俺は 人間の年齢だと どのぐらいなんだ」

「えっと… あっ ちようどいい みんな集まって来たね これ お正月かな?」

「お正月?」


1年… 誕生日と同じで年が変わるところらしい、人間にはいろいろあるんだな、

おめでたい とされてみんな集まるそうだ… ん~分かったような…なんとも、

確かに映像には いろんな人間が集まってきている、映像を再生に切り替えた。


「ちょっと待ってて 一応 確認してくるから」


そう言うと 天空は立ち上がってまた何もないところに行って何かを始めた。


「ちょっと解らなかったから 教わってきたんだ、えっ…と…それでね…」


「マジか! 俺 そんなに おっさん なのか!!」

「おっさんって… ちょっと話し方が変わってきたなぁ…って思ってたけど、

人間と知識の共有してるから 案外その影響かもね、実際の年齢に近づいた感じ」


犬の年齢を人間のように考えると…、俺は パパさんより上 になるんだそうだ、

しかも、ご主人様のパパさんたち おじいちゃんたちの年齢に近いらしい、

あれか? あれなのか? ごちそうのあるテーブルの近くで弟たちと遊んでる、

あの人間と俺が 同じぐらいになるのか…、

何だか映像の俺が話している言葉が子供っぽくて、また恥ずかしくなってきた。


「何で? 何で 人間とそんなに違うんだ? 映像の俺 子供みたいだ」

「う~ん よくはわからないけど、 知識? は弟くんたちに近いんだって」

「ずっとか? ずっとそうなのか?」

「そうだね、知識も体の大きさも いつか弟くんたちに 追い抜かれるね」


マジか… 俺… 兄ちゃんなのに、兄ちゃんなのに 弟に抜かれるのか?

おじいちゃんに近い体で、弟と同じように考えて、大きくならない…、…あぁ…。


「確かに人間と比べると…だけど、犬はみんな一緒だから 大丈夫だよ」

「俺…、帰ったらさ…、…はぁ… 映像 進めておいてくれ 散歩してくる」

「えっ でも ひなた 映像 見なくてもいいの?」

「いいよ別に…、でもそうだなぁ… 天空が気になったとこで適当に止めておいて」

「気になったって…、そういえば、サクラの頃だっけ? 弟くんがいなくなるの」

「確か…、その辺だよ」

「じゃ その前で止めておくね、止めたら 僕も追いかけようか?」


とりあえず 俺は首を振って断った。

俺の過去のこと、人間の家族のこと、俺の仲間のこと、いろんな人間のこと、

ただ座って 映画みたいのを見てるだけなのに、いろいろありすぎだ。

あぁ… 俺 疲れてるのかなぁ… そういえば ここで 何回も眠くなったもんな。


俺 人間に憧れてた、人間みたいになれば、ご主人様たちといっぱい話せる、

ご主人様たちが泣きそうなときに抱きしめてあげれる…って、

でも、人間は生き物にあんな…、俺あんなふうになれ… いや…なりたくないよ。


ご主人様と話せなくても、抱きしめてあげれなくても、顔を舐めてあげれば、

人間に大好きだって思いは伝えられるんだ…、だったら 犬 だって…。


でも、犬も 他の生き物も 人間に逆らえないのかも…な、

どんなにそれがイヤなことであっても… ガマンしないといけないのか…。


それって…、あ~ もう 訳がわからない、なんか… なんかモヤっとする!


俺 こんな感じで ご主人様たちのところに帰って 元通りでいられるのか?

こんなところに来なければ、あんな映像なんか見なければ…、そうすれば…、

あ~ホンと俺 何 考えてるんだろう、

なんだか 記憶だって いまだに曖昧で、さっきまでのことが思い出せないし、

疲れてる… 本当に 俺 疲れてるんだ、

…それに あれのせいで 余計に疲れた…、あんな おっさん と同じって…。


…でも、でも…さ…、 ここに来て 天空に会えたことは よかった…かもな…。



「ひなた…、ご用は終わった? 映像は言われた辺りで止めて来たんだけど…」


少し離れた 上の方から声がした、そっちに顔を向けると天空が側に来ていた、

どうやら映像は 見たかったところの手前ぐらいになったらしい。


「わかったよ 今 そっちに行く、そうだ また運んでくれよ」

「もう そっち行ってもいいの? じゃ 行くね」


天空は羽を羽ばたかせて飛んでいたんだが、なんだろう 手に何が持っている…。

天空がゆっくりと俺の方に近づいてきて、目の前に降りた…。


「…それでさ、その… どこかなぁ…って…」

「なんのことだよ」


「だから しないって言ったろ」

「なんだ てっきりそうだと思って 用意してきちゃった」

「用意したって 天空が言ったんだろ 大丈夫だって」


天空が手に持っていたのはいわゆる お掃除グッズ だった、…排泄用の。

ここでは必要ない って自分で言ったのに、言われるまで忘れてたぐらいだよ。


前言撤回! 天空に会えてよかったなんて…、なんて…、…全く…コイツは…、

ホンとしょうがないヤツだな…、天空といると… ホンと… 楽しいな。


「どうしたのひなた、しっぽが なんなだかとっても 楽しそうなんだけど」

「なっ、何でもないよ」

「あっ~、もしかして 僕と空を飛ぶの気に入っちゃたとか」 

「そんなの どうってことない、いいから 早く連れていけよ」

「もう、ホンとひなたは いつもツンデレだな…」


天空は俺を抱き抱えて飛びはじめた、手に荷物があるせいか たぶん低く…、

天空とこうしているのも もうすぐ終わりだよなぁ…。

映像は俺が ここにくるまでって言ってたな、なら もう終わりに近づいている、

今の映像は弟がいなくなった頃だろ… 間違いなく現在っていうのに近くなってる、

映像が終わったら 選択…だったよな、どんなことを言われるんだろう…。


「はいっ 到着、さっきより近かったから 楽だったよ」

「大丈夫だって言ったろ」

「そうだね、それでね 映像 たぶん春休み前っていうところで止めたから、

ちょっと見て欲しいんだ、その間に 僕 コレを片付けてくるから」


天空がまた何もないところにに向かってる、ちょっと水でも飲んでから…と、

俺はソファーに乗る前に水を飲もうとしたんだが…。


「テーブルの上か…」


天空は気が付いていない、戻ってきてからでもいいんだけど…。



「ひなた、水が飲みたいなら言ってくれればいいのに 冷たいの入れようか?」

「あっ、うん… そうだな 入れてくれるか?」


届かなかった。

手を伸ばして入れ物に手がかかったんだけど、逆に遠くなった…、

それどころか テーブルに少しこぼれたようだ、

やっば人間のようにいかない…、

人間がいないと 俺は 何も…出来ない…。


「はいっ どうぞ それで 見てくれた?」

「いや、まだだ、でも 大丈夫だ そんなに気にしなくて」

「でも、もう一度は見れないから…」


俺は水を飲んでからソファーに飛び乗った…、

そんな俺の様子を見ながら 天空は心配そうな顔を見せる、

俺は そんな天空に向かって ソファーに座れと 手で合図をした 

今度は俺がソファーを叩いてって さっきと逆だな、天空がそれを見て隣に座った。


「じゃ 早送りを始めるぞ、この映像も あと少しだからな」

「えっ あと少し?」

「そのぐらいはわかるよ、そうしたら 選択っていうヤツをして 帰るんだ 俺は」

「そう…だったね…」


どんな顔をしてるんだろう…、天空を見られなかった、見るのが 怖いんだ。


「そうだぞ 撫でるなら今のうちだぞ 帰ったら…」

「うん…、そうだね…」


だから俺はスクリーンを見続けた、スクリーンに向かって独り言のように話続けた、

だんだん小さくなる 天空の声を聞きながら…、

映像はどうやら サクラ を見に行くところのようだった、

もう少し先かな… アイツが 弟がどこかにいってしまうのは…。



「あっ いないかも…、弟くんたち いつもなら寝る時 一緒に部屋に行くのに…」

「きっとそれだ、じゃ 再生にしよう…」


あの頃…、弟が… 弟の一人 弥月 が いなくなった。

その異変に気がついてから、何回かは ご主人様たちと一緒に会ったんだけど、

今は全くその気配が、ご主人様たちが行動をおこす様子がないんだ、

ご主人様たちが会いに行くことも 弥月が帰ってくることもないんだ…。

だから ずっとアイツに会えてない、最後に会ったのは いつだったかなぁ…。


「このまま見てて大丈夫だよな パパさんたちを追えるよな」

「何も変えてないから 大丈夫だと思うよ、ダメだったら停止させればいいよ」


せっかく再生にしたのだが、どうやら弟を寝かしつけたご主人様たちは、

酒を飲むことなくそのまま寝ることにしたようだ…、家は静まり返ってしまった、

いったい何があったんだろう…、この映像でわかるかなぁ、映像は続いていく。





「じゃ 弥月のことよろしく頼むね、柚希 必ずメールしてよ、絶対だよ」

「わかってるよ だから心配しないで仕事に行って 太樹くん」

「じゃ… 行ってくる、早く帰るからね」

「いってらっしゃい 太樹くん 気をつけてね」


大きい方のご主人様が パパさんが出掛けていった、

このあと みんな順番に出掛けるんだ、また お留守番だな 何をしようか…、

でも…、さっきも見たけど やっぱ弟たちの片方がいないな… みづき が。


「あっ もう出掛けるの? ねぇ そうせい、みづき はどこに…、

ねぇ… どうしたの 具合が悪いの?」

「行ってくるね… ひなた」


見送る僕の頭をなでると 住みかにいる弟 そうせい が出掛けていった、

もうすぐ ママさんも出掛けるんだろう…、 でも…。


「どうしたの まだ出掛けないの? ここにいるの? なら…」

「ひなた ごめんね 今日は…。…ありがとう ママ 頑張ってくるよ」


同じだ…、さっきの弟と同じだ、いつも通りバタバタしてたと思ってたけど、

いつもと違って何だか大きなものを持っている、どこに行くんだろう…、

僕を寝床にいれることなく ドアに向かったご主人さまは、見送る僕をなでると、 

弟と同じような顔をしてドアから出ていった。


「具合が悪そうだから みんな早く帰ってくるといいな、みづきも…な、

もう一眠りしよう、起きてしばらくしたら きっと みんながそろっているさ」


具合が悪いなら… みんな休んでいればいいのに…、ママさんの声が遠ざかっていく。


「さぁ 急がないと きっと弥月 寂しがってるわ」





映像はの中には、玄関のドアの向こうに過去の俺の姿があった。

映像に俺が映らなくなって、ドアを閉めてご主人様は足早にどこかに向かっている、

手には何だかたくさんの荷物を持っている、ホンと どうしたんだろう。


「なんだか… みんな元気がなかったね どうしたんだろう…」

「細かいところは ちょっと おぼえてないんだけど…、やっぱり 変だろ」

「とりあえず ママさんのあとを追ってみようか…」


どうやら車には乗らないようだ、そのまま 自転車っていうのに乗った、

いつもの散歩の道を通って なんだかすごく急いでいるようだ、

でも… あんなに荷物を持って、いったいどこに向かっているんだ?

映像は お昼のごはんの頃を過ぎた辺りだろうか…、

到着したのかな ママさんが自転車をおいて 大きな荷物を持って歩き出した、

たどり着いたその場所は…。


「なぁ… 天空 ここって…」

「ここは 病院…、人間の病院だね」

「病院…、病院ってあの…?」


ママさんは 俺が行っている病院よりも 大きな病院にやって来て、

目の前にある 大きな入り口ではなく 横の入口から入っていった…。


何かを話している…、 〈みまいうけつけ〉 って書いてあるのか?

そこにいる人間と何かを話して、それから首に何かをかけると そこを離れた、

目的の場所はわかっているようだ、迷うことなく向かっているように見えた。


向かったその先…、ある部屋に入っていく、人間の寝床がいくつかあって、

ヒラヒラ…じゃない、カーテンで寝床が囲えるようになっているようだ、

そのカーテンの向こうに、そこに 弥月が眠っていた。


「弟くん眠っているね…、そうか 入院してたのか… ケガ? 骨折…かな?」

「入院? 骨折? それってなんだ?」


病院…っていうのはなんとなくわかる、体の調子が悪いのを治すところだろ、

でも 聞いたことがない言葉が出てきたから、聞いてみた、

入院はすごく体調が悪いとき、病院に泊まって治したりするんだそうだ、

どうやら弟は小学校に行っていて 大きなキズができてしまったらしい。


「そうか 入院っていうのをしていたから 帰って来なかったんだ」

「そうだね、そうかもしれないね でも、 今も でしょ 長い入院なのかな」

「そうなのか?」

「どうなのかなぁ…、病気もいろいろで 長くなることもあるから…」

「あっ 誰か入ってきた」


弟が眠っているところに 白い服、白衣ってヤツかそれを着た人間がやって来た、

ママさんと何かを話ている、そのまま ママさんはその人間に付いて行くようだ、


「どうする? 弟くんと ママさん、どっちの方を追いかける?」

「このままで、ママさんがここに帰ってくるまで…、いや 早送りにしよう、

この話を 家でパパさんとするはずだ」



とりあえず どうしていなくなったのかは分かった、病院にいるってことだ、

それが分かればいいよ、病院なんだ 弟の痛そうな姿を見てるのも…だから、

パパさんたちの話を聞けば理由も出てくるだろうし、映像を早送りに変えた、

思った通りというか…、ママさんは、弥月のところに戻ってきて、

すぐに 家に帰ってくる弟 奏星の為に、病院から帰った。


「ママさん 弥月くんと話して すぐに帰っちゃったね」

「よくは分からないが、いつも弟たちが帰る頃には 家に戻っていたからな」

「そうか…、じゃ 突然 入院したって感じだったし、大変だったんだ」



映像を見ながら 天空が 早送りの 速度 を選べるようにした と言ってきた、

さっき一人で見ていたとき 上手く止めれるか心配で 少し調整したそうだ、

早送りでも、 早く とか ゆっくり とか 選べるようになったそうだ、

別に過ぎてしまってもいいけど とりあえずゆっくりを試してみた。 


「ゆっくりだと さっきよりも ママさんのことがわかるな」

「さっき 病室では笑ってたのに…、独りになったら どうしたんだろうね」


俺 この頃 どうしてたっけ…、いなくなったのはおぼえたいたけど…、

映像のママさんの姿は…、元気がないというか…、心がここにないっていうか…、

あぁ こういうのが 呆然っていうんだろうな、そういうふうに見えた…。


それから 首を左右に振ったママさんは自転車に乗って病院を離れた、

しばらくして家に着いたママさんは、自転車をおいてドアに向かった、

でも ドアを開けようとして なぜか 一度 立ち止まった、

頬を叩いてるの? 軽く頬の辺りに触れると、大きく息を吸ってドアを開けた、

ママさんのことを 過去の俺が出迎えている、すごく嬉しそうに…、

ママさんの異変に気付くのが遅れている感じだ、何やってんだ 過去の俺は…。


ママさんは 学校から帰ってきた弟に いつものように振る舞ってるようだ…。

パパさんもあわてて帰ってきて、弟は安心した顔を見せて、少し元気になった、

弥月がいないこと以外は 変わらないように見える…、いや… 見えるだけだ…、

こうして見ていると ご主人様たちは たまに ぼっ~ っとしてる、

さすがに 過去の俺も二人が気になっているようで、足元をよく歩いている…。


いよいよだ…、弟を寝かしつけて二人で話すようだ、映像を再生に切り替えた。

ママさんが先に テーブルについて いつもの椅子に座っていた、

そこにパパさんがやってきた、ママさんの向かい側になるよう 椅子に座った、

でも ママさんは下を向いたままだった、

一応 お酒が用意してあるが…、二人とも入れ物に入れようとしない…、

楽しそうに飲むような感じが まったくしない、

何かを察したように、パパさんはママさんの横の椅子に座り直した…、

そして映像は 真剣な顔をしてママさんに話しかけるパパさんを映し出した。





「改めて、柚希 このメール 〈今晩 詳しく話す 気をつけて帰って〉 って」

「うんっ… 話す…、話すよ…」

「帰ってからもだし、食事もあまり食べてなかったけど…、大丈夫?」

「…うんっ 大丈…夫… 大丈夫…だよ…」


どうしたんだろう、ご主人様たち さっきからなんか元気ないって思ってたけど、

ママさん泣いてるの? パパさんがいじめたわけではないようだけど…。


「学校で怪我をしたのが そんなにひどかったの 長引くの?」

「それも… だけど…」

「…他に 何か見つかったとか? …僕が直接 病院の先生に聞こうか?」

「太樹くん あのね…」

「ようやく顔を上げた、 …そうか 奏星のために 頑張ってたんだね、

いいよ、一回スッキリしなよ 柚希…」



泣いてるママさんを抱きしめながら頭をなでて パパさんがなぐさめている。


「大丈夫だよ、僕がそばにいるよ、元気出して…」

「おっ ひなたもママが心配か じゃ 代わりに慰めてやってくれ」


足元に近寄った僕を、立ち上がった パパさんが抱き上げた、

それから 座っているママさんの足辺りに置くように パパさんは僕を渡たした、

そのおかげで ママさんの顔が近くなったから ママさんの頬を舐めてあげた、

どうしたの? 元気だして ママさん…。


「ほらっ 僕の代わりをひなたがしてくれるって、ひなたとソファーに行ってて」

「…でも、太樹くん」

「ここだと 奏星が起きるかもだし、これを片付けないとね…」

「…だぁい…くん」

「今はお酒より…、そう…コレでしょ」

「…ありがっ…と…」

「ほら ほらっ…、ひなた 片付け終わるまで ママのお相手 頼むぞ」

「…おいで ひなた、 ソファーに行こう」


ママさんは僕を膝からおろすと 立ち上がって パパさんに抱きついた、

大きな体でパパさんはママさんを受け止めた、しばらくしてから離れると、

パパさんは、 カジったら怒られるヤツ  をママさんに渡してから僕をなでた、

受け取ったママさんは僕を呼ぶとソファーに向かった。


「ちょっと ママに付き合って ひなた」

「まだ 悲しいの? 大丈夫だよ そばにいるよ」


ソファーに座ったママさんは 僕にそばに来て…と合図をすると、

かじったら怒られるヤツから ヒラヒラするヤツをいっぱい出して、泣いてる…、

僕はソファーに飛び乗って ママさんの足に頭を乗せた、大丈夫だよママさん。


「どう、落ち着いた? 喉が渇いたでしょ はいっ スポーツドリンク」

「あっ…りが…とう… だいくん、…あぁ 後で 目を 冷やさないと…」

「はいっ どうぞ、泣くといつもコレやってるもんね… ユズは」

「ごめんね だいくん」


パパさんが持ってきたのは飲み物だったようだ、ママさんはそれを飲んでいた。


「…それでさぁ、その… 話せそう?」

「ごめん…ね、私 自分のことばっかりで だいくんも 弥月が心配だよね…、

落ち着いて…聞いてね…」

「もう元気になったの ママさん?」


涙も止まったみたいだ、パパさんと話し始めた 何を言ってるかわからないけど、

いつものように話している、なんか布みたいので顔も拭いたようだ、

もう大丈夫だね。


パパさんはソファーに座らず 床に座った、ママさんの顔を見上げてる、

ソファーの上の僕をなでながら、ママさんと話してるんだけど、

なんだろう…、泣き止んだのに… なんだか まだ元気ない 楽しそうじゃないな。


「……そう…なんだ…」

「まだ 精密検査が必要だけど、一応 話しておいてくださいって 先生が…」

「学校でケガしたって聞いてたから、ちょっとキズが残るのかなって思ってた」

「ケガの方は そんなに心配はいらないんだけど ちょっと…」

「ちょっと なに?」

「まだ わからない…けど…、もし そうだとしたら 治りが遅くなるかもって

でも このケガのお陰で 病気が早く見つかったかも ってそうも…言ってた…」

「早く見つかった なら…」

「それでも…ね…、もしそうなら… 治療はスゴくつらい治療になるって、

大人でもつらい治療だから、本人はスゴく大変だから だから…

…ご家族も一緒に頑張りましょう って、そう言われたの…」

「でも 精密検査は まだだろ やっぱ間違いとかじゃないの…かなぁ…」

「…たぶん 間違いないって、だからご主人と一緒に病院に来て下さいって」


「…そうか まさか 弥月が 〈小児白血病〉 なんて…」



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