1章 -6- 精霊さん、出撃
ちょっと文章とかストーリーとかまとまってないですが、勢いで突き進んでみます。
もしかしたら後で修正するかもしれません。
お付き合い頂けると幸いです。
「悠太に喧嘩を売るとはいい度胸ね。アタシが遊んであげるわよ」
そう言い放ったミズキは男たちに向かって片手を振った。
本当にそれだけだった。
「なっ!?」
「何だこれ!?」
「身体がうごかねえ!」
男たちが口々に言い出した。
エルフの女を捕まえていた男も、手を離し両手を挙げていた。
「伏せ!」
そういいながら地面を指差すと、男たちは全員顔面から地面に倒れ付した。
それは伏せではない。
「ふふふ。いいザマね」
完全に主導権を握っているようだ。
体内の水分を操るって、もはや生物相手には無敵なのでは?
「あんたは悠太に手を出したわね。身体の水分抜いてミイラにしてあげるわ」
調子に乗ったミズキはそんなことを言い出した。
「ちょっ、待てお前!」
「ん?」
慌てて止める俺に不思議そうに振り返るミズキ。
「殺すなよ。寝覚めが悪くなるだろ!」
マジでやめて欲しい。
というか、こいつはヤンデレの気でもあるのか?
『ミズキは少し、そういうところがありますね』
脳内でこっそりカグラが教えてくれた。
「さっすが悠太。優しいわね」
俺に対してにっこり笑った後、倒れふす男に冷たい目で言い放った。
「悠太が許してくれるってさ。感謝しなさいよ」
こくこくこくこくと必死でうなずく男。もはや震えのようだ。
こうして転世人たちの襲撃は幕を閉じたのだった。
その後が大変だった。
何故かエルフたちに取り囲まれ、崇められているのかと思うような好待遇をされた。
男たちを縄で縛り上げた後、村に戻ったが、戦いに参加していたメンバーが口々に何かを言っていた。
一度男たちに捕まっていたエルフの女性も俺の手をとり熱心に何かを言っていた。
どうやら精霊を2体も宿しているということと、村を救った救世主として俺を認識したらしい。
特に、ミズキの顕現はインパクトがあったようだ。この世界の精霊よりはるかに大きく力強かったと。
実際精霊ももっといるのだが、面倒なので黙っておこう。
とりあえず夜も更けていたので寝ることになった。
捉えた男たちは手足を縛り上げた上で牢屋に閉じ込めた。
縛った縄にはエルフが魔法を付与し鉄の強度になっているとか。
牢屋も木製だったが、それも強化されているらしい。
放置しても大丈夫だろう。
全ては明日の朝考えよう。
そう思い、案内された部屋で寝床に就いた。
眠りに入る前、俺は脳内会議を開いた。
(ミズキ)
『ん?』
(なんでお前あんなにデカイの?)
『ああ、そのこと』
ミズキが言うには、発生がそもそも違うから、サイズが違っても当然とのこと。
『そもそもアタシ達は、精霊っていうより、八百万の神々って言った方が正確だからね』
古い時代に元の世界にも存在した精霊たち。特に日本にいたそれらは八百万の神々と崇め奉られた。ただそこに存在するだけの精霊より、信仰の力を得た分強い力を持つらしい。
現代社会においては世の中の魔力が薄くなり、なおかつその信仰も極度に薄くなっていたので、俺に拾われなければ消えていたそうだ。
つまり、日本組(そう呼ぶことにした)はみんなそんな感じ。
だからエルフ達は驚いていたのだ。
なるほど納得。
ひとつの疑問が解消され、眠気もやってきたので寝ることにした。
翌朝。
部屋に差し込む朝日で目を覚ました。
部屋といってもざっくりしたもので、テントというかプレハブというか。
エルフたちの生活水準はあまり高くなく、遊牧民族のような生活のイメージに近い。
農作物を育てながらも狩をして肉を食し、木の実を集めたりもしている。
当然家のレベルもいわずもがなだ。
クーラーもないため若干寝苦しかったが、ミズキとカグラで冷風を作り、クーラーのようにしてもらった。
そのおかげで寝覚めはすっきりだった。
部屋を出ると、外では朝食の準備が始まっていた。
昨晩の猪肉の残りと、木の実などのサラダが用意されていた。
俺に気付いたエルフ達が駆け寄ってきて、丁寧に席へと案内される。
席につくと、すでに南雲が案内されていた。
相変わらず椅子はない。
朝は弱いのか、ぼーっとつっ立っている。
「お、おはよう」
クラスメイトの女子に朝一番どう挨拶すればいいのか一瞬躊躇した。
「おはよ……」
こっちも見ずにぼそりと答えた。
大丈夫かこいつ。
とりあえず、エルフの方々にお願いして南雲の席も用意してもらう。
朝食が始まった。
「南雲、お前大丈夫か?」
ぼーっとしたまま手を動かして食事をしている南雲に問いかけた。
「別に。ちょっと寝つけなかっただけ……」
確かに夜も暑かった。ミズキたちのクーラーがなければ俺も寝れなかったかもしれない。
「あんたはすっきりしてるわね……」
ギロリと睨まれた。
「あ、はは。まあ、アウトドアとかも好きだったからね」
やったこと無いけど。
「ふーん」
興味なさそうな返事だな。
食事が終わり、村の長に呼ばれた。
昨晩の件で話があるようだ。
「俺たちに何する気だこの原住民ども」
「さっさとこの縄をほどけぇ!」
檻を見に行くと、昨晩の男たちが騒いでいた。
『反省してないわね……』
ミズキのイラっとした声が聞こえた。
お前ら、痛い目見たくなかったら大人しくしとけよ……。
「おい」
近づいて話しかけた。
「ひいっ!?」
一人悲鳴を上げたやつがいる。失礼な。そんなに俺が怖いか。
「こ、これは悠太さん! おはようございます!」
さっきまでの怒声はどこへやら。急にかしこまった態度で話し始めた。
一番屈強そうな男だ。一番最初に飛び出してきたやつ。そして俺を殴ろうとしたやつ。
明るいところで改めてみると、やっぱり筋肉ごつすぎる。何とか神拳とか使いそう。
「お前ら結局何者なんだよ」
とりあえず状況整理から始めようと思う。
村長も俺の隣で成り行きを確認しているようだし。
話しが通じないから、俺に判断を仰ぐって事なのだろう。
「あっしは北野拳士郎といいやす。日本から来やした」
名前も世紀末っぽいな!
「日本からって事は、転世か?」
「そうでやす。死んで女神様に力をもらってここへ来やした」
てことはやっぱり悪人か。
「お前は何の悪事を働いて地獄送りになったんだよ」
「へ、へい。あっしはヤクザの下っ端してたんですが、JKが好き過ぎてよく女子高に忍び込んでパンツとか着替えを盗んでやした」
女神にはそれが原因で転世が決定したと言われたそうだ。いろいろ残念なやつだ。
だから南雲に反応していたのか。
「で? どんな力をもらったんだ。正直に言えよ」
「へい。あっしは強靭な肉体と付随して屈強な力を頂やした」
単純なパワータイプか。
『嘘じゃなさそうですね』
脳内会議でそう結論付けられた。なら事実なのだろう。
「他の4人もそれぞれ答えろ」
そういって全員から話をさせた。
「俺はアイドルの追っかけで自宅やら学校やら撮影場所やらを付回しすぎてここへきました。能力は強靭な肉体と付随して屈強な力を頂きました」
「俺は覗きがやめられず近隣の銭湯全てで出禁になるくらい覗きすぎでここへ来ました。能力は強靭な肉体と付随して屈強な力を頂きました」
「俺は女子の臭いをかぐのが好き過ぎて電車で女のにおいをかぎすぎてここへ来ました。能力は強靭な肉体と付随して屈強な力を頂きました」
「オレは盗撮がやめられなくて撮影枚数が100万枚突破記念にここへ送られました。能力は強靭な肉体と付随して屈強な力を頂きました」
能力レパートリー少なっ!? 全員同じかよ。
てか盗撮100万枚突破記念ってなんだよ!
そしてろくなヤツいねぇな!
話しを聞いていると状況が分かってきた。
世界を変えろと言われ力を授かってここへ転世されたようだが、何をすればいいのか分からず力に任せて暴れていたそうだ。そのうち同じ境遇のやつと出会い今に至ると。
そして力こそ正義な感じのこの世界なら自分たちけっこうやっていけるんじゃねと結論づけ、まずは美女で有名のエルフを狙っていたそうだ。
マジで駄目なやつらだ。
「あんたたち……」
気付くと俺の横にミズキが顕現していた。
「あ、姉さん!?」
なんだ姉さんって。
「あんたたちはこれから悠太のドレイよ」
「こんなムサい奴隷いらん」
こんなヤツら連れて歩くと思うと吐き気がする。想像すらしたくない。
「……とにかく絶対服従。まずはこの村のために献身しなさい。出なければ殺すわよ」
「は、はいいい!!」
拳士郎たちはビビリ上がり、分かりました分かりましたと元気良くうなづいている。
まあ、これ以上悪さはしないようだし、大丈夫そうだ。
言うこと言ってすっきりしたミズキが俺に頬ずりしてくる。
「$“%#$%#」
その横ではエルフ達がひざをついて頭を下げていた。
「おおう?」
「聖なる精霊様にお会いできて光栄ですだっテ」
ミザリーも横に出てきていた。自由だな。
「%#%$$#、“”%#“」
ミザリーが跪くエルフたちに何かを言っている。
それを聞いたエルフ達が俺を見て、ことさら深く頭を下げた。
「なんて伝えたんだ?」
「その聖なる精霊をも従える精霊王・悠太様に献身せよト」
何言ってんだよ。
「%##$“”$“」
エルフたちにどよめきが走る。
今度はなんて伝えたんだ?
「悠太様に憑いている精霊は私たちだけではないト」
面倒そうだったから言わなかったのに!
「$%“%#”#」
エルフの長が何かを言っている。
「この村の全てを捧げてお接待をするっテ」
無期限でこの村に滞在できるようになったらしい。
まあ、悪い話ではないが。
優遇されすぎて逆に居心地が悪くなりそうだ……。
ちょっと自分でも展開が分からないですが、まだまだ続きます。
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