1章 -4- 言葉が通じないorz
昨晩寝落ちして更新できなかった……
宜しくお願いします。
「”#”’”%””#28$」”#)’U!!」
「)#&$#$”(#)!!」
「*+$2+“{‘!!」
こちらに向けて放たれる怒声。
「マジかよ……」
こういうのって謎のご都合主義手で言葉が通じるモンじゃないのか!
この世界で始めて遭遇した人型の存在は言葉が通じなかった。
「」:@+5=)#$2$”!!」
しかもその表情は憤怒。
皆武器を持って俺たちを歓迎してくれている。歓迎とはなんぞや?
槍や弓を構え、こちらを狙っている。
俺は南雲を背中に隠し、両手を挙げて降参のポーズだ。
世界が違うので、このジェスチャーが通じるのかも謎だが。
「俺たちただの通りすがりなんですけどぉ……」
通じない。
どうしたものかと考えていると、彼らの背後に目がいった。
その村のど真ん中には、何かの塔のようなものがあった。
その塔はさぞかし立派なものだったのだろうが、今はその形を残念な感じで捻じ曲げている。
しかも何かが引火したのか一部焼け焦げている。さっきの煙はこれが原因のようだ。
焼け焦げ、捻じ曲がっているのは中腹くらいから。
そこにはズタボロの大猪が引っかかっていた。
(あれって、さっきのやつかな?)
『たぶん』
つまり塔が壊されお怒りということか?
『それだけじゃないみたいだヨ』
お?
普段会話に出てこない精霊が話しかけてきた。
土の精霊ミザリーだ。外国人みたいな話し方で、イントネーションがちょっと違う。
『人間が村に近づくなだっテ』
(なんでわかるんだよ?)
『ワタシは元々この世界の精霊だったからネ』
どうやら俺に憑いている精霊にはこちらの世界から飛ばされたものもいるらしい。
悪戯をして退治されたりした際、世界を押し出されるのだそうだ。
なるほど。
目の前の人たちを良く見ると、みんな耳が尖っている。
普通の人間ではないようだ。
(もしかしてエルフってやつか?)
『そうだネ。エルフはこの世界でも希少な種族。見目麗しいけどその分プライドも高いヨ』
ゲームなどでおなじみのエルフ。
生で見られるとは思わなかった。
しかも定評どおり皆さん美男美女。
ただそれゆえに憤怒の表情には怖いものがある。
(どうにかして対話できないものか……)
そう考えていると、エルフの皆さんの興奮はどんどんエスカレートしていっていたようで、放たれた一本の矢が俺の足元に刺さった。
「ひっ」
俺の後ろの南雲がびくっとなっている。
「おおう……」
皆さん目がマジだ。
しかし、俺たちもこの村を素通りするのは避けたい。
食も寝床もない森で夜を越すのは怖いものだ。
可能なら対話をし、ここで泊めてもらいたい。
こんなことならワールドワイドなコミュ力を習得しておくんだった!
「#$%$(#!!」
考えるのが長すぎたらしい。
リーダーっぽいやつの掛け声と供に、弓矢が一斉に放たれた。
(やばい!?)
『大丈夫』
カグラの声が聞こえたと思ったら、突風が俺たちを包み込んだ。
球状に風が吹き荒れ、矢を弾き飛ばしていく。
いわゆるウィングシールドみたいなやつ。
(これ俺かなり余裕じゃね?)
『まちがいなく』
やっぱり?
それはさておき、エルフの皆様の驚きよう。
もうそれは目をかっぴらいて……さっきより表情険しくなった。
「#$&#!!」
今度は何人かの手元が淡く光り始めた。
魔法ってやつかな?
『魔法ね。あれやって』
(今度はどれ)
『周囲の魔力を集める、寝る前によくやってるやつです』
あの瞑想みたいなやつね。大気中の気を集め腹の底に集めていくイメージのやつ。
俺が集めていたのが気じゃなくて魔力だったとしたら……
阻害できるってことか!?
迷わず実行。
周囲に漂う自然の力を体内に取り込むイメージ。
全身の皮膚を通して力を取り込み、飲み込む。
自分には特別な力があると信じていた中二病時代から続けている俺の謎行動。
ただの中二病じゃなかったと分かった今なら確信が持てる。
この吸い込んでいたのが魔力だったんだな。
一息に吸い込んで気がついた。
「尋常じゃねぇ!?」
五感とは違うセンサーが訴えかけている。とてつもない量の何かが身体の中に入ってきた。
『やっぱり世界に溢れる魔力量が違うわね』
ミズキいわく、元々魔力なんてほとんど存在しない世界で繰り返しやっていたので、収集能力がすごくなっていたらしい。高山トレーニングのようなものだ。
周囲一帯の魔力を一息で吸い尽くしたようで、エルフ達が実行しようとしていた魔法は不発に終わっていた。
「………………&##$#!?」
今度はさすがに困惑の表情をしている。
表情は前の世界と共通するようだ。ちょっと安心。
『ワタシが話をしよウ』
ミザリーが言い出した。
(話なんてできるのか?)
『今の魔力があれば実体化できそウ』
精霊の実体化には魔力がいるらしい。
だからパワースポットと言われるエリアでは精霊とかの類が見えるのだとか。
普段は見えない存在として隣にいるらしい。
(じゃあ、任せる)
『了解ヨ』
言うが早いか、俺の目の前に半透明の美女が現れた。
褐色の肌にエメラルドの瞳。ウェーブする金髪がさらさらと流れ、その髪の間から透明な羽が2対伸びてはばたいている。身長が20cmくらいしかないのが残念。
「$%”&() #$%”!」
ミザナの説明が始まった。
エルフたちは最初、ミザナの姿を見て驚いていたが、すぐに話しに聞き入っていた。
『エルフは精霊を信仰してるみたいね』
他の精霊から聞いたとの事。
そもそもこの世界では精霊は特別な存在なのだとか。
自然の力そのものだったりもするし、信仰の対象に宿ったりするらしい。
力を司る存在として、魔法を使う際に手助けもすると。精霊魔法ってやつかな。
ただ、精霊は人を選ぶことも多く、精霊と供にいられる存在は稀有なのだとか。
ということは、エルフの信頼を得られるのでは?
思惑通り、ミザリーの説得はあっさりと済み、エルフたちに歓迎してもらえることとなった。
「#“#%#%&#」
相変わらず何を言っているのかわからない。
「精霊が信頼する人間なら我々も信頼するだっテ」
ミザリーが翻訳してくれる。
やはり精霊様様だな。
本来エルフは人間を里には入れないそうだが、精霊つきとして特別扱いをしてくれるらしい。
早速村の長っぽい人に案内され、村の中へ進んでいく。
森での野営を免れるどころか、しっかりご飯まで用意してくれるらしい。
南雲も俺の付き人としてかしぶしぶ歓迎されていた。
その日の晩ご飯は飛んできた大猪のバーベキューだった。
物語によってはベジタリアンだったりするエルフだが、ここのエルフは普通に肉も食っていた。
みんな塔を壊され怒っていたわりに、おいしそうに食べている。
「どうぞ食べてっテ」
エルフのお姉さんが焼きたての猪肉を持ってきてくれた。
木のプレートみたいな皿にのせ、肉には胡椒のようなものがかかっている。良いにおい。
「んまっ!」
塩気が無いのが残念だが、筋張った肉から旨みがたっぷり溢れてくる。野生の味だ。
臭みは胡椒のようなものとハーブのようなもので上手いこと消してある。
何よりその肉厚だ。元々が大きいこともあり、贅沢に分厚く切ってある。
このかぶりつくような感じがたまらない。
「ありがとう!美味しいよ!って伝えて!」
ミザリーに翻訳してもらうと、お姉さんはにっこりして下がっていった。
俺はゆったりと椅子に腰掛けたまま肉を味わう。マジ旨い。
あまりの美味しさにどんどん食べていると、さっきのお姉さんがにっこりしながらおかわりを持ってきてくれた。しかも食いきれるかというほど山盛りの肉。これはうれしい限り。
新しいお皿の肉を手に取り、口に運んでいく。やっぱり旨い。
「ねえ、アタシのは?」
ここに来て我慢の限界を迎えたのか、南雲がキレ気味に言った。
彼女の前には何も置かれていない。
というか、そもそも椅子もなく、テーブルもない。
俺を案内してくれたエルフのお嬢さんは、一人用の席に俺だけ座らせて案内を終えている。
なんとなく状況を察した俺は、流れに身を任せ、南雲のリアクションを待っていた。
「なにが?」
状況は分かっているが、あえてとぼけてみた。
「なにって、何でアタシには席もないの!?」
怒っていらっしゃる。
まあ、目の前で旨うま食われているとイライラもするだろう。
そう思っていると、さっきのお姉さんがまた来てくれた。
俺の前に木の皿にのった果物っぽいものを置いてくれる。
そして南雲の足元に、葉っぱにのせた焼け残りのような肉を置いていった。
「………………」
ギャルのボルテージが上がっていく。
「ここでクエッション。ミザリーは南雲のことをなんて説明したのかな?」
イライラしながらも俺の会話に付き合う南雲。
「さっきのせ、精霊ってやつ?」
ミザリーの登場に驚いていた南雲には一応簡単に説明しておいた。
ざっくりだけだが、一応理解はしていたように見える。納得したかは別だが。
マンガに疎い南雲だが、ファンタジー映画などで多少は知識があったのも助かった。
「なんて説明したのよ」
「答えは本人から」
俺のフリに答えるべく、ミザリーが再度姿を現した。
「んー確か、この女は罪人でクズのドレイだけど所有者である悠太が優しいから更正させるため同行させてるって言ったかナ」
「なによそれ!?」
「この世界には奴隷制度があるからネー」
「そこじゃないわよ! なんでそんな説明するのよ!」
憤慨する南雲。俺の横にふわふわ浮いているミザリーに向かって怒鳴ってる。
結果的に俺が怒鳴られているようでうるさい。
「だってアタシあんた嫌いだシ」
憤慨する南雲を意に介さず、あっさり言ってのけるミザリー。
「なっ!?」
どうやら精霊たちは南雲が嫌いらしい。ミザリーに限らず。
ミザリーと南雲が言い合いしているうちにミヅキたちに確認を取った。
精霊たちは日本にいたときから俺の中にいたのだ。当然南雲が俺にしていたことも知っている。
もともと気分屋でサバサバした性格が多い精霊たちにとって、回りくどいいじめみたいなやり方は受け入れられないようだ。精霊は人を選ぶとも言うし。
「まあまあ、南雲はこれ食えよ」
不毛な喧嘩を止めるべく、俺は自分の皿を差し出した。
そんなこんなで夕食をとっていると、エルフの皆さんが騒がしくなってきた。
「どうしたんだ?」
もうちょっとで騒々しくなってきます。
まだまだ続きます(予定)。
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