1章 -3- うるさいのでキレてみた
ちょっと区切りが悪い気が……
とにかくアップします。
楽しんで頂けると幸いです。
「あ、待ちなさいよ! アタシも連れてって!」
この期に及んで態度のでかいギャルだな。
風靭斬(仮)で開けた森を歩き始めると、背後から南雲が追ってきた。
置いていくつもりは無いが、相変わらず声はでかいし気の強いこと。
このまま高圧的に来られるもの面倒だし、どこかでしつけは必要か。
「それが人にものを頼む態度か? 置いていってもいいんだぞ?」
ああん? とヤンキー風にすごんで見た。
「ご、ごめん。……お願いします。アタシを連れてってください」
「俺がお前を連れて行くメリットってあるのかよ。ああ?」
「うう、何かあんた、キャラ変わってない?」
キャラで言ったらお前もだいぶ変わっているけどな!
どこに行ったんだよ女王様は。
もはや借りてきた猫だ。
「今キャラは関係ないだろ!?」
「ご、ごめん! アタシにできることなら何でもしますから!」
お?
今このギャルなんて言った?
「リピートプリーズ」
「え? あ、アタシにできることなら何でもします……」
なんだろうこれ。
気の強い女子に言わせると一番破壊力あるやつじゃないか?
「何でもとは……?」
俺の心は酷く揺らいでいる。
冗談で畳み掛けたが、思いのほか魅惑的な話になってしまった。
『すけべ』
『スケベですね』
脳内で何か聞こえるが気のせいだろう。
「うう……、な、何でもよ」
南雲は一瞬ためらったが、少し考えて言い直した。
その表情はあまり明るくない。
まあ、考えれば冗談を言うような状況でもない。
彼女にしてみれば、先ほどの大猪といい、この見知らぬ森といい、命のかかった話なのだ。
俺のように謎に攻撃手段を得て安心できるわけでもない。
マジメに命を天秤にかけたらそうなるだろう。
なんとなくかわいそうになってきた。
「ま、まあ、そこまで言うのなら仕方ない」
こいつのことは守ってやろう。出来る限り。
内心そう思った。
南雲のペースに合わせながら森を進み続けた。
当初の思惑とは裏腹に、なかなか森は抜けられない。
日も傾いてきて空は茜色に染まり始めた。
「まずいな……」
時間的にはかなりの時間を経過していた。
食べ物も持たず、森の中を進み続けたため疲労もすごい。
何より南雲がそろそろ限界だった。
「はぁ……はぁ……」
思いのほか文句も言わず、がんばってついてきているが、さっきから苦しそうな表情だ。
最悪どこかで野営をするしかないかも知れない。
赤く染まる空を睨みながら考えた。
「お?」
その茜色の空に向かって伸びる雲。
というより煙?
進行方向正面に煙が上がっていた。
「南雲、もう少しがんばれ」
煙の下に何があるかは分からないが、火を使う脳のある何かはいるのだろう。
希望を持って歩を進めた。
森の中を進むことさらにほぼ1時間。
腕時計はしたままだったので時間は正確にわかっている。この世界が1日24時間かは不明だが。
幸いにもモンスター的なものにはあの大猪以外遭遇しなかった。
休憩を挟みながらもついに煙の足元に到着することが出来た。
まだまだ「ろくでもない」感が出てきません。
もうちょっとで出てくる予定です。
ご感想やご評価など頂けると幸いです。
宜しくお願いします。