2章 -5-
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他でまったく紹介してないので、見つけて頂いて正直に嬉しいです。
今後も更新していきますので宜しくお願い致します。
途中休憩を挟みながらも人間の街の近くまでやってきた。
飛行魔法はこの世界でも珍しいらしいので、目立つのを避けるため、ひとまず地上に降りていた。
面倒だが森の中を進んでいる。
南雲も特に文句も言わずについてきている。
「アッツ~~。サイアク~~」
いや、文句は言っていた。
まあ、しんどいとか面倒だとかは言っていないので良しとする。
以前の大猪のことがあったので、南雲も大声で話すことはしない。
文句も小声のほうだ。
「歩くと意外と距離があるな」
空を飛んでいるうちはあっという間に進んでいたが、森の中を歩くとなかなか進まない。
視界も悪いので、どこまで進んだかもいまいちわからない。
やっぱりもう少し飛ぼうかな、と思い始めたころ、俺たちの足音ではない音が聞こえてきた。
「南雲、ストップだ」
「?」
小声の俺に合わせて、南雲は声も出さずに対応してくれた。
この世界に来て最初に森を歩いたときとは比べ物にならないその対応に若干安心する。
『来るわよ』
音が聞こえる前から気付いていたようで、ミズキが冷静に言った。
「ぐるるるるるる」
茂みを掻き分けて出てきたのは熊だった。
意外とでかくない。2mから3m程度だ。前の世界で見ていた熊よりちょっとでかいくらい。
だが、見ためは凶悪な感じだ。毛は針のように硬く尖り、鋭い牙は一般的にイメージする熊のそれではない。サーベルタイガーとかの牙みたいに長い。爪もえぐい。目つきもやばい。熊とは言ったが実際モンスターだ。
まあ、最初に見た大猪に比べたら迫力は数段落ちる。
「さて、どうするか……」
相手は警戒モードのようで、攻撃的な表情のままこちらを睨んできている。
何もなく通り過ぎる雰囲気ではなさそうだ。
サイズ的にはさほど大きくないが、戦闘能力は見るだけでは分からない。
ドラゴン戦以来、むやみに戦闘に突入するのは避けようと考えていた。
「がるるるるるる」
こちらも様子を伺っていると、怪物熊が一歩踏み出してきた。
「ねえ、大丈夫?」
南雲が俺の影に隠れながら聞いてきた。意外と余裕そうだ。
こっちの世界にもだいぶ慣れてきたのだろう。
「さあ……」
大丈夫だとは思うが、南雲も庇いながら闘わないといけないのだから楽観視は危険だ。
「こっちよデビルベアー!」
森の中から声が聞こえたと思ったら、怪物熊の前足に矢が突き立った。
「ぐあぅっ! がるるるるる!」
大きいダメージはなさそうだが、一瞬ひるんだ。
「君たち! 大丈夫か!?」
その隙を狙ってか、森の中を誰かが駆け寄ってきた。
人間だった。金髪碧眼の超イケメンな青年で、俺より少し年上か。
イケメンなんて爆発すればいいのに。
とりあえず顔は別として、俺はその格好・装備にテンションが上がっていた。
金属の鎧に革の衣類。そしてその手に携える両刃剣。そのどれもに華美な装飾が施されている。
ムカつく程のイケメンフェイスと相まって、どこからどう見ても勇者って表現がぴったりだった。
(勇者っているんだな!)
思わず脳内で叫んでいた。
『聞いたことないけどナ』
ミザリーが若干不審そうに言っていたが、いるものは仕方ないのだ。
「君たちは下がっていたまえ! あいつは僕が相手をしよう!」
勇者は俺たちを庇うように怪物熊の前に立ちはだかった。
イケメンは何をやっても様になるな! ちくしょう!
しかし、この状況は助かった。俺たちは闘わなくても良さそうだ。
本物の勇者の力ってヤツを拝見させて頂こう。
「デビルベアーめ、腹が減ったならゴブリンでも襲っていればいいものを!」
あの怪物熊はデビルベアーと言うらしい。もうちょっといい名前無いのかと思ったが、こっちの言葉で言っているのでそんなものだろう。
「ぐるるるるるる!」
両手で剣を構える勇者に対し明らかに敵対の意思ありと判断したのか、デビルベアーが攻撃態勢に入った。
「はああああああ!」
それにあわせて勇者も駆け出した。
そしてあっさり弾き飛ばされた。
え? マジで?
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