表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
清純派でいることに疲れたので、これからはビッチで通そうと思います  作者: きえう
3-3章 望外の子爵家当主になりました
97/122

第7話「モテまくる私」

 さて。

 社交界である。

 大陸北部におけるスタンダードである、料理を片手にした立ち食いビュッフェ形式のパーティーだ。


 毛先の長い真っ赤な絨毯を踏みつけつつ。

 タキシードやらドレスやらを来た偉い人たちが楽し気に会話している。


 なんだか

 美男美女が多い。

 ような。

 この世界、どうも支配者階級である紅眼族とかいう種族の遺伝子が、やたらと造形美の点では優れているようで。


 魔物でも。

 獣でも。

 魔族でも。


 とにかく紅眼族の遺伝子が混じると、やたらめったらに見栄えのいい生き物として育つようなのだ。


 もちろん。

 着ているものもいい。

 彼らが身に着けている服やらアクセサリーやらは、庶民が1年働いても買えないものばかりである。


 彼らには。

 そうする必要がある。

 ここで優秀な相手を見つけるということは、お家の運命を決めかねないほどの重大な決断へとつながる。


 社交界は出会い茶屋やら娼館やらとは違う、真の意味での恋愛専門家たちが集う合コン会場だともいえるだろう。


 ちなみに。

 私が来ているドレスは……もろアイドル仕様というか。

 娼婦仕様というか。

 いや、娼婦が着ている服よりは、もちろん、はるかに上質で上品で、清楚なデザインではあるけれど。


 へそ出し。

 背中も丸出し。

 太ももむき出し。

 二の腕とかもところどころ露出して。


 見せるためのレオタードを着用したその上から、シースルーのレースをあちこちにあしらった……見ようによってはパンツ丸出しに見えてしまう感じの、やたらとエロい造形をした社交用ドレスなのだ。


 しかも。

 着やすくて

 脱がせやすく。

 これを着たまま速攻でベッドインしても、全然不自由はないらしい。


 誰だよ。

 これ設計したやつ。

 腹は空ける必要ないだろ、腹は。


 なんでも、スタイリストの人いわく、


「この服を着こなせるのはカエデ様だけです! 体型がみっともなくなければ、誰だってこういうドレスを着たいと思うんです!」


 とのことで。


 いちおう複数の人にも意見を聞いてみたのだが、全員から絶賛された。

 ほんとかよ。

 やりすぎじゃないの?

 この世界、ちょっとセクシャルな方面での寛容さが過ぎるように思われるのだけれど。


 いや、まあ。

 もちろん、ビキニ鎧とかよりははるかにマシだけど。

 むしろ。

 ある意味ではビキニ鎧なんかより、よっぽどエロいというか。


 ともかく。


 私はそーゆー服を着て、貴族関係者がうようよいる会場の中を歩いている。


 ううう。

 視線を感じる。

 露骨だなあ。


 新参である私に声をかけてくる人はまだいないけど、視線で私を犯そうと試みてくる脂ぎった男は山ほどいる。


 と。

 その時。

 ようやく知った顔を見かけたので、私は精神衛生の目的で声をかけることにした。


「まあ、ズリエル様!」

「カエデ! 久しぶりだな!」


 出会ったのは。

 ズリエル男爵だ。

 メサイヤ男爵領の当主にして私の夫だったアルビンの父親であり、今回の戦争では大活躍をしまくって私を勝たせてくれた。


 じろじろと私を見るズリエル。

 胸。

 太もも。

 腹まわりや股間など。


 ごくりと。

 その欲望からか、ズリエルは生唾を飲み込んだ。

 あれはもー、今からすぐにでも一戦やらかしたいという感じの捕食者目線そのものだな。


「……あ、あの。そんな風に見られると、恥ずかしいのですが」

「ははは! カエデはいつまでたっても奥ゆかしい人だなあ! 私はそんなところも大好きだぞ!」


 呼び捨てかよ。

 私、子爵やぞ、子爵。

 ズリエルより偉いんだぜ?


 いやまあ、この世界、身分が近くてある程度親しい間柄であれば呼び捨てが許されるようなので……これが私とズリエルの個人的な会話である以上、社交界においても別に不自然なものではない。

 みたい。

 私とズリエルは肉体関係が何回もあるレベルで親しいので、むしろこの対応でなければ逆に不自然なのかも。


「カエデは、一段と美しくなったな!」

「……もう、ご冗談を。ズリエル様はさすがに、こういう場での会話を心得ていらっしゃいますね」

「おいおい。確かに私は他の女にも似たようなことは言うがな。カエデに言う時は完全に真実だ! 私は君よりも美しい人を知らない!」

「そこまで持ち上げられると……つっこみより先に、くすぐったさが来ますね。奥様に言いつけますよ、などと怒るべきなのでしょうけれど」


 けらけらと。

 冗談に対して笑ったりしていると。


 周囲の男たちがうらやましそうにズリエルを見つめている。


「どうだ、カエデ! これから、一緒に食事でも!」

「まあ……お誘いはたいへんありがたいですけれど、ここは子爵領ではありませんし。お互いに身軽に動くというわけにも」

「そ、それはそうだな」

「こんど領地にお呼びしますので、その時にでも、ゆっくりと」

「……ああ! 楽しみにしているぞ!」


 ズリエルはさっと私の手を取り、甲に軽く口づけた。


「では、またな!」

「はい」


 笑顔で手をふる私。

 なのだが。

 なんだろう。

 会話が終わったとたん、周囲から一斉に男が押し寄せて来た。


「か、カエデ様! 私は、男爵領の」

「おい! 無礼だぞ! 先に並んでいたのは僕だ!」

「伯爵の息子だぞ! 僕は! おいお前ら、道をあけ……お、おい! 押すな!」


 うわあ。


 いや、気づいてたけどね。

 ズリエル男爵と話してる最中から、もうね。

 新婚旅行時のジローみたいな、好き好き光線を向けられまくってる感じ。


 ううう。

 救えない。

 私はどうしようもないほどに、この種のまっすぐな好意というものに弱いのだ。


 前提として。

 それまでの人生で何一つ積み上げていない貧民からのものであれば、単に不愉快なだけだが。


 ここにいるのは。

 貴族だ。

 彼らは生まれた時から、女を幸せにできる男としての器量を備えている。

 

 彼らは。

 私を誠実に愛することができる。

 そういう人間だ。


 貧乏人が私を守ると言っても、それは単に嘘で騙しているだけだが。

 金持ちが。

 言えば。

 それは本当のこと。

 胸がバクバクとして体が熱くなって、どうにかして相手の気持ちに答えてあげたくてたまらない。


 ファビオや。

 アルビンや。

 ジロー。

 彼らと同じ種類の人間が、ここには、こんなにたくさん。


 私は情欲の海に溺れて、あっぷあっぷとなった。


 ……いや。

 特定の恋人さえいれば。

 私も。

 ちゃんと理性を働かして、冷たくあしらうことだってできるのだが。


 ううう。

 今の私のだんな様。

 8歳。

 だからなあ。

 しかも愛情なんてまったくない政略結婚なわけで。


 彼には今生き延びているスティング子爵家の家臣どもが反乱を企てた時に、その正当性をぼやけさせるというだけの存在価値しかない。

 そーゆー置物なのだ。

 貞操観念が強い私といえども、あの8歳児シリルに対して貞淑さを守ろうという気には一切なれない。

 つーか。

 妻だけどそもそも顔を見たことさえねーよべらんめえ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ