第4話「女は捨てました」
報復はすみやかに行われた。
今回の件を後ろで指揮していた、ということになっている、旧男爵ジローの親戚連中が一掃され監禁され。
呼び出しに応じなかった者には軍隊を派遣して、やはり軒並み監禁し。
首謀者と判明した、もしくは口裏を合わせて生贄に捧げられたジローの叔父であるロマンは、ギロチンで首をぽんと飛ばされた。
ついでに。
なんかむかつく、と妖精さんが言ってくれた有力者3名ほども、私たっての希望ということで強引にぽんとなった。
これにより。
反対勢力は急速に勢いをなくしていき。
名実ともに、私は子爵領における当主様になった。
で。
その代償として。
私の友人でありかつ夜のパートナーでもあった、元冒険者メイドのテッサちゃんを失った。
かなしい。
こうかいする。
色々な思い出があふれてくる。
もっとちゃんと奉仕してあげればよかった。
の。
だろうか。
もはやよくわからない。
それはそれとして。
私はこの時、ようやく完全に自覚した。
なるほど。
どうやら。
私とセックスした人は死ぬらしい。
『妖精さん……この問題を防ぐ方法はないか?』
『あいてのー』
『うんめいがおおきければー、へいきー』
妖精さんは端的に答えてくれた。
……なるほど
そういえば、ファビオなんかは付き合ってからしばらく死ななかったわけだし。
山賊リーダーのシルベストルも、私を襲ってから何か月か生きていた。
男爵嫡男のアルビンは、平民になってからも数か月生存していた。
運が強い人間であれば死なずに済むということか。
『どの程度大きければいいのだ?』
『はくしゃくきゅう、いじょうならー』
『しょうがいかかっても、すいきれない、けれどー。そのぶんあぶなくてー。ますたーがしんじゃうかもー』
伯爵級……貴族か。
それはもう天上人の領域だな。
私ごときが手の届く世界の話ではない。
いや。
地位としては釣り合うが。
私の立場は大きくなりすぎたのだ。
彼らは基本、格下もしくは縁を結びたい家の次女や三女以下の女と結婚するのであって。
貴族家当主同士の結婚というものは、普通行われない。
『具体的には、一日でどれぐらいの運を吸い取るのだ?』
『きんかでー』
『じゅうまい、ぐらいー。ねんかんすうせんまいー。100ねんだとすうじゅうまんまいー。せっくすいっかいで100まいほどー』
ふうむ。
えらく具体的だな。
なら。
純資産で金貨数十万枚を誇るファビオが半年足らずで死ぬはずがないのだが。
『あのときはー』
『ますたーはしょじょでー、われわれもばんぜんだったー。でも、いまはー』
……万全ではない、ということか。
『妖精さんの力が弱っている?』
『うんー』
『ほとんどなくなったー。だからー、もうー、ますたーのことはまもれない、かもー。ごめんー』
謝ることはないさ。
しかし。
そうか。
まいったな。
やはり、私は。
セックスをすると、人から何かを吸い取って殺してしまうようだ。
『相手が金持ちなら問題ないのか?』
『きほんそうだけどー。でもー』
『いまのますたー、ししゃくきぞくだからー』
何か条件が?
『きんか100まんまい、いかの、かちしかないあいてだとー』
『せっくすしたしゅんかん、あぼーん、かもー』
『……マジか』
えええ。
それはちょっとひどくない?
金貨100万枚って、それはもうファビオでさえ及ばないレベルじゃないか。
『さげまん2はー』
『めーはくにー、かくしたのおとことは、つきあえないー。そーゆーせいやくー。やぶるとさいやくがふりそそぐー』
さいやく。
災厄ね。
はあ。
なるほどなあ。
もはや私は、残りの一生をセックスレスで過ごすしか選択肢がなさそうだった。
ううう。
それ。
つまり子供が産めないってことじゃないか。
なんてことだ。
いや。
これは、しょうがない。
私がこれまでの人生でどれだけの男を破滅させたことか。
それを思えば。
もう。
あきらめる、べきなのだ。
全てを。
私のような性質を持った女がのうのうと恋愛に興じるなんて、なにをどう考えたとしても許されることではない。
この日から。
私は女であることを、やめた。
新たな男を得ることを諦めて僧侶や世捨て人のように、屋敷の中の完結した世界だけで生きていくことを決意したのである。
そのむくいはすぐにやってきた。
スキル さげまん2
詳細説明
その男性が本来持っている天運を奪い取ることができます
格上の相手としか付き合えなくなります
恋人もしくは伴侶のいない期間が一年経過すると死亡します
恋人もしくは伴侶のいない状態において、精神の均衡が少しずつ失われます




