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清純派でいることに疲れたので、これからはビッチで通そうと思います  作者: きえう
3-3章 望外の子爵家当主になりました
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第1話「死神からのお手紙」

 周辺各地の貴族から戦勝を祝う手紙が届いている。


 その中に。

 ひとつ。

 異色と言うべきか、少し毛色の変わったものがあった。


 私が政務の合間にぼーっとお茶を飲んでくつろいでいると。

 突然。

 視界の端で急かすように、チカチカと何かが明滅したのである。


 ううん?

 何かいま……あの手紙が光らなかったか?


 私はそれを手に取った。


 差出人は……侯爵ウォレーン・エニウェアか。

 重要人物だな。

 人口5000万とも言えるエニウェア侯爵家の当主様だ。

 17歳。

 私の一つ下か。

 まあ、年初には彼も18になるそうだから、実質的には同い年だと言えるけど。


 そういえば。

 前世のクラスメートでは一番の金持ち男子だった高宮蓮とかも1月1日が誕生日だった気がする。

 おめでたいな。

 やはり人の上に立つような人は、その生まれからして主人公っぽいところを備えているのかもしれない。


 ……いや。

 まあ。

 それはもちろん冗談の類なのであって。


 1月1日生まれの人なんて、1000人に1人はいる程度のありふれた存在でしかないのだが。


 さて。

 ウォーレン侯爵。

 彼は人口5000万人という侯爵家のトップ様だ。


 前世の高宮蓮よりも、やばい。

 とゆーと、もはや異次元の領域だな。

 レア度で言えば1月1日生まれの人の万倍以上レアである。


 つーか。

 この手紙は送られてきた当日に私へと差し出すべきものだろうに。

 どうしてまぎれているのだ。


「テッサ、なぜこんな重要書類が放置されているのです?」

「あー……引継ぎに手間取ったから、かな。ほら。カエデちゃんが食料をストップさせてた女官の関係者を皆殺しにしちゃったから」


 ああ。

 そんなこともあったな。


 戦争当初。

 私への嫌がらせとして食料を手配しないなんて、ふざけた真似をしてくれた女官ども。


 彼女たちは。

 一族郎党皆殺し。

 最後の城攻めで総攻撃命令に従わなかった屑野郎どもと同じく、軍事裁判にかけて首切ってさらしてある。


 必要な。

 処置。

 らしいのだが。


 とゆーか、むしろ。

 社交によってしがらみの生まれない今のうちに、信賞必罰を徹底的に周知させるべきらしいのだが。


 結果として政務が滞り、最低限の書類整理さえできなくなってしまったのか。


 ううむ。

 元冒険者のテッサはそれほどデスクワーク優秀ではないし。

 書類整理を任せられる副官を探すのは急務だな。


 別に高望みをしなければ、すぐにでもロックフィード村出身の男どもから選ぶこともできるけど。


 ともあれ。


 封蝋を開けて便箋を取り出して。

 読む。


 うん。

 ふつう。

 他の貴族と同じ、ごくごくありふれた祝いの言葉がつづられているだけ、なのだが。


 はらりと。

 封筒の奥から、羽のようなものが舞い落ちて。

 床に落ちた。


 なんだろう。

 見覚えがある、ような。

 これは。


 ……妖精の羽?


 私はそれを拾った。

 とたん。

 部屋が光で満たされた。


「……カエデちゃん!?」


 護衛メイドのテッサが私に駆け寄ってくる。

 なんだろう。

 みょうに、だるい。


 私は目を閉じて、つかの間のまどろみに身を任せた。




 誰かの声が聞こえる。




『……どうだ?』

『やっぱり転生者だった。白河楓。カエデちゃん。スキルは男運2・さげまん2・えろもん』

『へえ……少し遅れたな。学校にいたときであれば』

『殺さないでよね。私の友達だったんだよ』

『昔はな』

『……今もだよ』

『それはお前がそう思っているだけだ。いま、お前の友達なのは僕だけだぞ』

『不本意!』




 それは、まるで白昼夢のような。

 一瞬の映像だった。

 こことよく似た執務室の中で、赤眼の男と妖精とが会話を交わしている。




『いちおう、カルラからの影響は取り除いておいたけど……いいよね?』

『かまわんぞ。あいつのせいで死んだら僕の得点にはならんのだろ?』

『まずはクラスメートの無事を喜ぶべき』

『無茶いうな』

『マークはしておいたから、いつでも場所は割り出せる。でも、しばらくはやらないでしょ? 仲間に引き込んでみる?』

『使えるのか?』

『うーん…………こう言っちゃうとカエデちゃんにとっては不利だろうけれど、この子のスキルって共闘向けじゃないかな。完全に王者向け。魅力だけ突出したおんぶだっこタイプ』

『まったく使えんな』

『う。まあ、そうなんだけど。そっとしておいてあげてよ。別に何か悪いことしたわけでもないんだし』




 なんだろう。

 私はこの2人を知っている。

 ような。

 気がする。

 誰だ?




『存在すること自体が悪いという人間もいるのだぞ?』

『たしかに……』

『なぜ僕を見るのだ』

『自覚ないの?』

『我が魂に一点の曇りなし』

『そのイタかわいい芸風のままでえーえんに通すつもり?』

『僕はキモくない』

『気持ち悪いひとはみんなそう言うんだよ』




 などと。

 そのまま、2人がコントのような会話を続けるうちに、輪郭がぼやけていき。


 そして。

 声は消えた。

 目の前には私を心配そうに見ている護衛メイドの顔がある。


「カエデちゃん! 大丈夫!?」

「テッサ……ええ、平気ですよ。問題ありません」

「いまの光は何だったの!? 暗殺とか攻撃とか!?」

「違います」

「体は無事なの!?」

「まったくの無傷です。ただ……なにか、懐かしい夢を見たような」


 夢の中で、誰かが誰かと話をしていたような。

 そんな感じがする。

 もはや。

 その話の内容どころか顔や姿さえ、私には思い出せないが。


「せっかくの機会です。手紙をざっと確認していきましょう。テッサは重要度別に書類を分類してください」

「う。私、そーゆーのすごく苦手」

「がんばって」

「早く人を雇ってよね! 私、護衛だから! こーゆーの、ほんとーに向いてないんだから!」


 ぼやくテッサと共に、私は残りの貴族からの手紙を読み始めた。




 コングラチュレーション!

 破滅の運命を回避しました!


 状態異常「衰弱」が解除されました

 妖精の秘薬を使用します

 →はい


 結縁妖精の妖精力が3割回復しました。

 吸運妖精の妖精力が3割回復しました。


 子爵級当主になったことにより、権力に30の補正がかかります。

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