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清純派でいることに疲れたので、これからはビッチで通そうと思います  作者: きえう
3-2章 不本意ながら軍人になりました
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第2話「麦を刈れ」

「ひゃっほー!」


 賊軍が麦野を食って行く。


 剣で。

 鎌で。

 ナイフや包丁で。


 鍬を持って襲い掛かってくる本当に気合いの入った農民さんも数人だけいたが。

 げしっと。

 蹴られて。

 後は動かなくなったので、特に問題なく作業は続けられた。


 実のところ。

 もと農民の部下たちが不満を抱かないかどうか気になっていたのだが。

 意外と平気であるらしく。


「いやー、労働なしで収穫できるなんてすばらしいなあ!」

「頭は使うものだ!」

「カエデ様の采配は、まさに天才そのものとしか言いようがない!」


 などなど。

 まったく気にしてない感じである。

 強いな。

 敵であれば最高にうざったくて殺したくもなるけれど。

 味方のうちは頼もしい。


 小麦はパンの原料だ。

 脱穀して石臼やら風車やらで粉にして使うのが本来の手順だが。

 原料のままでも。

 使える。

 粥にして食べるとか、そーゆー話でもなくて。


 ぶつぶつ。

 こーかんだ。

 農民から奪った小麦を使って村長と交渉することで、私たちは大量の小麦粉を手に入れた。


 うむ。

 これこそ軍隊式の小麦粉の作り方か。

 常識では考えられないほど乱暴なやりかただが、軍とはそういうものらしい。




 私たちは快進撃を続けた。


 麦を村から奪う。

 簡単だ。

 麦は隠せない。

 財産を隠匿できない。

 畑から麦を避難させることが不可能である以上、その徴税率はほぼ100%なのである。


 でも。

 足りない。

 人は麦だけで生きるにあらず、なのだ。


 奪った麦と物々交換で、畜産品やら野菜やらも手に入れたが。

 3000は。

 やはり100や200とは違う。

 私がどれだけ狩りに長けていても、この人数を独力で養うのには無理がある。


「カエデ様。麦はともかく、物資や他の食料が」

「足りませんか」

「はい。残念ながら」


 交換では。

 必要量にはとうてい届かない。

 ゆえに。


 これからは交渉で。

 なんとか商人の協力を得て、その流通網の一部にのっかかることで軍を維持しなければならない。


 私たちは。

 さっそく各地の商人に向けて交渉の使いを出した。

 の。

 だが。


 あまり来てくれない。

 当然か。

 村々で略奪を重ねている私たちのことを、まともな取引相手だと認識してくれる商人は一人もいないのだろう。


 ただし。

 唯一。

 ファルコーン男爵領でも顔を合わせたことのある、大金持ちの商人リシャールが面会に来てくれた。

 わけだが。


「援助をお願いしたいのです」

「ふむ」


 リシャールは思慮深く首をかしげてからこう言った。


「条件しだいですが……まずは、お人払いをお願いできれば」

「下りなさい」


 私は部下を部屋から追い出し、村にある屋敷の一室でリシャールと二人きりになった。


「それで、条件は?」

「からだで」

「は?」

「カエデ様のみずみずしい肉体を私に差し出すことで、お支払いいただければと」

「……っ!?」


 私は思わず一歩後ずさり、叫び出したくなる気持ちをこらえながら必死で身をかばった。


「実はわたくし、ジロー殿の隣にいるカエデ様を一目見た時からずっと……このような機会があればと、常々夢想しておりましてな」


 いやいや。

 お恥ずかしい、などと。

 リシャールはおためごかしを言いつつも、私の体をなぶるように視線を這わせている。


 気持ち悪い。

 気持ち悪い。

 気持ち悪い。


 私は叫びたくなった。


 足元をみやがって!


 最高に悔しくて屈辱的で、思わず殴りつけてやりたい衝動にかられるが。

 ううう。

 で、でもなあ。

 この戦いに負ければ私の命はない。

 ジローも。

 おそらくないだろう。


 私も。

 できることは、なんでもやる。

 そう決めた。

 ならば後々これが原因でジローの愛を失ったとしても、取るべき選択肢は一つだけか。


「わかり……ました。そのかわり」

「おうおう。しょうちしておりますとも」


 リシャールはいやらしく笑い、なれなれしく私の肩を抱いて服に手を入れてきた。

 ぷつぷつと。

 嫌悪感から鳥肌が立っていく。


「……ま、待ちなさい。ここでは」

「ははは。それはまあ、カエデ様にも立場はおありでしょうからなあ」


 そのまま。

 私は商人との交渉を進めるという名目で、彼の取っている宿に入って。

 そこで。


 好きなように楽しまれた。


 泣ける。

 けど。

 これで食料は解決だ。


 もしも約束を破って踏み倒しやがったら、その時は兵を差し向けて家屋敷に火をつけてやるんだから!


 とりあえず。

 そういうこともなく。

 リシャールは約束を守り、私たちの部隊に大量の食糧援助をしてくれた。


 めでたしめでたし。




 と。

 ゆーだけでは。

 その後が続かない。


 私はジローに手紙を書いて現状を説明し、進軍のための指示を求めたところ。


「すぐに戻ってこい」


 と。

 言われることもなく。


 このまま。

 別動隊として。

 適当に動けとのこと。

 私がそのようにしたいと申し出た意見が、そのまま通ったようだ。


 まあ、戻れと言われても確実に命令無視して独断行動するに決まっているから、結果は同じ事だが。

 許可。

 してもらえた。

 ラッキー。

 このままガンガンと進軍を続けるとしよう。




 私たちは正規軍ではないがゆえに。

 正面の敵と戦って撃破することはあまり期待されていない。


 行動は水の流れに沿って。

 村を支配。

 脅迫。

 物資の確保に、休息。

 イキのいい奴隷や若く美しい女を提供させるなど。


 直接スティング子爵家に攻め込んだわけではないが、その同盟国であるサンロット男爵家にたびたびの嫌がらせを加えた。


 そのうち、討伐軍もやってきたが。


 大規模な部隊は避けて。

 小規模な部隊については、うまく誘導して待ち構え。


 柵を作って泥地で迎え撃ったり。

 崖から弓を浴びせたり。

 雨の日や夜などに奇襲してやったりと。


 私は妖精さんサーチの力を縦横に使いまくり、とにかく有利な戦場を作り上げて徹底的に相手をいじめ倒した。


 そのうち。

 敵軍は疲れ果て。

 私たちを捕捉することを諦めて、主都へと帰っていった。


 私たちは村々に火をつけてまわり、サンロット男爵領をさんざんに蹂躙した。

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