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第5話「すごく恨まれています」

 ファルコーン男爵家の隣にスティング子爵領があってペルセフォネという名前の子爵令嬢がいる。


 18歳。

 私の一つ上。

 かなり美少女で聡明で気品があり、領民の人気も高い。


 あえて説明する必要があるだろうけれど、アルビンのもと婚約者だ。


 1年ほど前の夏。

 ちょうど今ぐらいの季節に、私は王立貴族学校でアルビンといい仲になって彼女から嫉妬を買った。


 で、恋のさや当てをして。

 勝って。

 アルビンは婚約破棄までやらかして、ペルセフォネを大々的に捨てた。


 その後は。

 ご存知の通り。

 私とアルビンは駆け落ちまでして互いに愛を示しあい、カルラ様に保護されつつ楽しく暮らしていたわけだが。


 不幸にも。

 アルビンは死んでしまい。

 残された私はカルラ様に命じられて、ファルコーン男爵家当主のジローと結婚することになった。


 ……別に。

 今の結婚生活に不満があるわけではないし。

 アルビンとジローとを比べてどちらが上、というようなこともない。


 強いて言えば。

 選べるなら先に知り合ったアルビンと添い遂げたかったけれど。

 

 順序が逆なら。

 意見も変わる。

 そういう程度の差だ。

 ジローもアルビンも私の目から見て完全に「あり」の男なので、この2人に優劣をつけることにはあまり意味を感じない。

 

 ……話を戻そう。


 ペルセフォネ。

 彼女は上のような次第によって、私にアルビンを寝取られた関係上。

 ものすごく。

 私を恨んでいる。

 らしい。

 カルラ様の領地にいた時にも、再三にわたっての引き渡し要求があったという。


 そして。

 そのペルセフォネが属している家こそが、まさにスティング子爵家で。

 

 もっか、侵略準備中。

 というか。

 侵略真っ最中。


 ファルコーン男爵家の辺境にある村々のうちで防御の弱いところを一気に制圧し、そのまんま自国領へと組み込むという宣言をしたのだそうだ。


 


 ファルコーン男爵領と。


 スティング子爵領との戦い。


 因縁の対決……というか、アルビンの件で確執がある私が、勝手にそう思っているだけかもしれないけど。


 もちろん。

 私が原因で両家が争っている。

 わけではなく。


 単純に貴族当主が早世した家の混乱につけこんで、属国化をしてやろうと。

 そーゆー話であり。

 すでに兵を送って村を制圧した以上、遠からず本格的な争いになることは避けようがないという状況であるらしい。



 事情を知るために、カルラ様が属しているブロッコリー公爵家から出向中の部下に話を聞いてみた。



「ブロッコリー公爵領からの援助は……期待できないのですか?」

「表立っては」

「なぜ?」

「この周囲一帯は」


 アルテピア内海の南端に接しているエーデン平野。

 ここは街道の集結地点。

 日本で言えば。

 東京。

 大阪。

 名古屋。

 に、当たるらしく。


 もう。

 地図を見ただけで重要な場所だとわかる、超絶危険な土地なのだ。


 大陸北西部から中央部へ陸路で出るためには必ずこの周囲一帯を通らねばならないし。

 アルテピア内海では地中海もかくやという海運が行われ、そこに大陸中央部からの物資を流すためにもここを経由する。


 それほどに重要な。

 重要すぎるほどに重要な。

 エーデン平野一帯。


 そこをおのおの治めている数十ほどの貴族に対しては。

 どうも。

 侯爵級以上の貴族は表立っての介入をしない、という提携があるらしい。


 やるべきなのは。

 この世界の道すべてが集まる場所を監督する義務がある、アクアタス侯爵家。

 なのだが。


 今の時代。

 当主がすごくバカ……というか、現実にいっさい興味ないタイプらしく。

 屋敷で放蕩三昧。

 連日のパーティーと宴会で借金だらけ。

 近隣の小貴族たちが小競り合いを続けている現状においても、調停をしようという気概がまったく見られないそうだ。


「かといって」


 と、カルラ様の部下は続けた。


 他の大貴族が介入してしまえば、それはもうアクアタス侯爵家に対する宣戦布告である。

 できなくは。

 ないが。

 カルラ個人にはそれを実行するための権限がないらしく。

 当主であるタイシャク公爵も最近体調が思わしくないということで、重大な決断については避けているという話だった。


「結論としては?」

「カルラ様からの水面下での援助は可能ですが、時間がかかります。ここと公爵領は船と陸路とで1か月ほど。しかも兵団は派遣できません」

「実質なにもなし……ということですね?」

「ありていに言えば」


 そうなります、とカルラ様の部下は答えた。


 頼りにならない!


 私はなげいた。

 悲嘆にくれた。

 こんな危険な土地に輿入れさせるなんて、カルラ様ってばちょー鬼畜!


 …………いや。

 べつに。

 この結婚自体に不満があるわけではないけれど。


 どうも。

 この戦争のゆくすえについては、ジロー男爵個人の自助努力によって決めなければならないらしい。


 ちなみに。

 私とジローとの縁談については。

 そもそもの話として、公爵家との同盟の証、というわけでもないそうで。


 むしろ。

 当主のジローが熱望したことと。

 あとはなんと、敵側であるはずのスティング子爵領の方からも推薦があったことで特別に成立したらしい。


 正直。

 意味が分からないのだが。


 詳しく聞くと。

 子爵令嬢ペルセフォネ。

 あのアルビンを取られて私に恨みをもった女が、醜いデブ貴族であるところのジローと私とをくっつけて悔しい思いをさせてやろうと。


 ついでに。

 戦争で勝った後には、私を捕らえていじめ倒してやろうと。

 そんなことを考えて。

 ほうぼうでロビー活動をして回り、それに乗ったカルラ様が縁談をすぱっとまとめてしまったという話である。


「え、ペルセフォネって、そんな権限あるんですか?」

「仲のいい家同士を争わせるほどの力はありませんが……もともと不仲な家の戦争を加速させる、ぐらいの力はあるはずです。スティング子爵家の当主は娘を溺愛しているそうなので」

「なるほど」


 そりゃーまた少女漫画チックな話だが。

 しかし。


 うーん。


 いじめ、はともかく。

 ジロー。

 そんなに悪い物件じゃないと思うんだけどなあ。


 とゆーか。

 むしろすごくいい。

 ペルセフォネの立場から言えばむしろ、嫁にしてくれと頭を下げるべき側の人だと思うけど。


 まあ、あれだ。

 外見至上主義の女というのもたまにはいるからな。

 アルビンなんかは貴族以前に超絶イケメンであったため、それと比べれば容姿が見劣りするのはやむをえない。

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