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清純派でいることに疲れたので、これからはビッチで通そうと思います  作者: きえう
2-4章 失敗だらけの楽しい日々でした
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第1話「婚約破棄をやらかしました」

 ドレス姿の私。

 プレゼントされた清楚で気品のあるやつを着て。

 社交界の真ん中を、アルビンに手を引かれて堂々と歩いていく。


 部屋いっぱいに敷き詰められた豪奢な刺繍のじゅうたん。

 きらびやかなシャンデリア。

 真っ白なシーツで覆われた無数のテーブルと、飾り付けられた無数の花。

 高級料理。

 給仕。

 美人ぞろいのメイドたち。

 宝石をちりばめた服を着こなした、紳士淑女のみなさまがた。


 まさに。

 ザ・社交界。

 そんな感じである。


 来場者の何割かは貴族関係者なので。

 ここにいる人の機嫌を損ねれば将来はまっくらだろう。


「みなさん、お聞きください! 私はメサイヤ男爵家の長男である、アルビン・メサイヤと申します!」


 みんな目を丸くしているが。

 ううう。

 めちゃくちゃ怖いなあ。

 婚約者のペルセフォネが恐怖で真っ青になっているのだけが、せめてもの救いといえるけど。


「このたび、私は婚約者であるペルセフォネとの関係が破局にいたりましたことを、ここに宣言いたします!」


 信じられない、といった表情で目をむくペルセフォネ。

 うん。

 わたしもびっくりだよ。

 ここまでアルビン様が小細工ゼロの真っ向勝負をやらかすとは思ってなかったから。


「私は婚約者ペルセフォネの非道を目にしました! その内容についてはここでは申し上げられませんが、もはや彼女を将来の妻として考えることはできません! このこと、どうかご承知おきくださいませ!」


 言い切った、という顔でシリアスにうなずくアルビン。

 う。

 うわああああ。

 こ、これはまずい。

 私はもっと誰かへの根回しとか演出とか建前上の理由とか、そういうのをでっちあげて話すと思っていたのに!


 た、例えば、病気とかで静養を余儀なくされたとか!

 領地紛争があっての不可避的な婚約破棄だとか!

 そーゆー!

 どっちも傷つかないやつだと!

 思ってたのに!


 それなら後ろめたいところのあるペルセフォネも、表立っての反論はしにくいだろうという。

 そーゆー感じのざまぁだとばかり!


 う。

 ううう。

 あの理由だと、まるでペルセフォネ様は道化だ。

 一方的に悪者にされたあげくに、アルビンの側に何の非もないという。

 純然たる攻撃的婚約破棄。


 ど、どうなる。


 私は。

 私たちは。

 そろって子爵令嬢のペルセフォネのほうを見た。


 ある者は面白そうに。

 ある者は痛ましそうに。


 そして。

 ペルセフォネは。


 屈辱のあまり、拳をにぎりしめてぶるぶる震え。

 ぶわっ、と、涙にぬれて。

 ペルセフォネは膝から崩れ落ちて、会場の女子達から支えられていた。


「わかり、ました…………父には私から今日のこと、確かに伝えておきます」


 なんとか。

 絞り出すような声で。

 ペルセフォネはそう言った。


 ざまぁ。


 と、言っていいのだろうか。

 これはやりすぎだ。

 ペルセフォネは婚約者につく悪い虫(私)を払おうとしただけで、そう突き抜けた悪人というわけでもなかったのに。


 座り込んで泣き濡れるペルセフォネ。

 肩を抱く女たち。


 アルビンと。

 私は。

 貴族令嬢からはみんなして冷たい目を向けられた。

 そりゃそうだ。

 会場の空気は完全に凍っている。


 いかに世慣れていないアルビンといえども、さすがにこの反応には思うところがあったらしく。


 逃げるように会場を立ち去って。

 私の手を引いて。

 そのまま。

 荷物をまとめて学校を出て、領地へと帰ってしまった。




『ごめんー』

『こんかい、ちょうせい、みすったー』


 妖精さんがめずらしく。

 沈んだような声で私に謝罪している。

 けれど。


『いいさ。妖精さんのせいじゃない』


 なんでもかんでも妖精さんのせいにするのはな。

 さすがに違うだろう。

 人生というのはもともと、自分の運と能力とを頼りに切り開いていくものだから。


『でもおかしいー』

『あんなじけん、ほんらいおこらないはずー。ほかのようせいのかいにゅうがあったのかもー』


 ううん?

 それはどういうことだ?


『あのがっこう、もしかすると、れべる3ようせいかれべる2じょういようせいのえいきょうかにあるのかもー。だとするとー』

『ぼくらのちからー、うまくはたらかないー あいてのそうさにまきこまれるー』


 へえ。

 そういうものなのか。

 なにができてなにができないのか、私にはまったくわからないが。


 ともかく。


 私とアルビンは手を取り合って、二人で学校を去って実家へと逃げ込んだ。


 わけだが。


 数週間ほどの旅を経て。

 メサイヤ男爵領について。

 アルビンの実家で。


 男爵家の当主であるアルビンの父親と会った。


 アルビンは事情を説明した。


 父親は。

 もちろん。

 勝手なことをした長男に怒っていたものの。


 私を見た途端に糾弾を弱め、こころよく歓迎してくれた。


『ますたー』

『にげてー。こんかい、ちょうせい、すごくみすったみたいー』


 などと。

 妖精さんが不吉なことばかり言ってくる。


 しかし。


『死ぬほどではないのだろう?』

『それはー』

『そうかもだけどー、でもー、つらいよー?』


 その忠告を聞いた私は考える。

 つらいだけか。

 なら。

 いいさ。

 この状態でアルビンを見捨てるわけにもいくまい。


 イケメンとか関係なく。

 彼がこうなったのは、私がその原因の一端であるのは間違いないのだから。

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