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第11話「破滅に向かって転落中」

 ……私は

 考えを改めた。

 これは絶好の機会だ。


 そう。

 あのペルセフォネとかいう女。

 格上の貴族娘。

 意地悪で気が強くて、汚れたところなんて何もないまっさらな美少女ちゃん。

 そして婚約者だったか。


 寝取ってやったら。

 さぞかし。

 悔しそうな顔で私を恨むのだろうな。


 暗い喜びが湧き上がる。

 それは空想だが。

 今の私が望めばすぐにでも、きっと現実にできるのだ。


 抵抗は。

 できると思う。

 そんなに強い誘惑ではないし。

 私に確固たる意志の力があれば間違いなく、この時に断ることができていたはずなのだ。


 しかし。


「や、やさしく、おねがいします……」

「……」


 と、私は言った。


 オーケー。

 してしまった。


 とゆーわけで。

 獣のようになったアルビンは、私をさんざんもてあそび。

 しかし。

 ぽいと捨てる、ということはなく。


 それからは同棲状態を続けて、デートやら夜の生活やら。


 ひたすらいちゃいちゃと過ごした。


 幸せで。

 うれしかったけど。

 超好みの男と結ばれて、私は最高にハッピーだったけど。


 私たちの未来には、なんとなく。

 明るいものが待ち受けていないということは。

 過去の体験に一切かかわらず、合理的な推測として導き出すことができた。


 私は。

 なんの力もない平民学生でしかない私は。

 婚約者のいる貴族を横から、寝取ってしまったのだ。


「カエデ」

「なんですか?」

「僕と結婚してくれないか?」

「それは……お受けしたいですけれど。でもアルビン様」

「なんだい?」

「それをすれば私はペルセフォネ様に殺されてしまいます」

「彼女とは縁を切る」


 アルビンはきっぱりと断言した。


「今度、学校で小規模な社交界がある……メサイヤ男爵家を含めた近場の貴族たちが集まるパーティーだ。そこで大々的に発表する」

「なにをですか?」

「ペルセフォネに対する婚約破棄についてだ」


 既成事実を作ってしまえばもはや路線変更もできまい。

 などと。

 アルビンが恐ろしいことを言っている。


「え……それは、だいじょうぶなのですか?」

「もちろん。問題はないよ」


 アルビンが、堂々とそう言ったので。

 それを信じた。

 私は。

 このとき、二つ目のミスを犯した。


 一つ目のミスは、ペルセフォネへの復讐心を満たすためにアルビンを利用するつもりで抱かれたこと。


 これは失敗だった。

 強く反省する。

 みにくい。

 いくら好みの男であっても。

 いや。

 好みの男だからこそ。

 他人を理由にして体を許すなんてことは、決してあってはならない。


 ペルセフォネへの復讐は私自らが行うべきことであって。

 その道具にアルビンを選ぶことなど。

 言語道断である。


 そして、二つ目のミスは。

 婚約破棄などといった妄言をほざくアルビンを、強く止めなかったこと。


 私は。

 セーラー服を燃やしてくれたペルセフォネへの復讐を満たすために。

 明らかに彼のためにならないとわかる愚行を止めなかった。


 いや。

 むしろ。

 それを望みさえした。


 そうすれば婚約者との破たんが明らかになるがゆえに、アルビンとの結婚という未来も実現できるかもしれないと。

 愚かな私はそのように考えた。


 もしも。

 あのとき。

 アルビンからの性的なアプローチを、ちゃんと断っていれば。


 あるいは。

 このとき。

 自身の信じる常識に従って、もっとしっかり彼を止めていれば。


 この後の展開も。

 また。

 少しは。

 違っていただろうに。


 そういうことを後になって思うぐらいには、この2つのミスは、大きな分岐点となった。


 さて。

 当たり前のことを話そう。


 もちろん。

 当たり前すぎる。

 話だけど。


 婚約破棄は、ぜんぜん大丈夫なんかじゃなかったのだ。

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