第2話「新しい恋を探しましょう」
基本的には平民相手に、どんな犯罪を犯しても捕まったりはしない貴族たち。
なのだが。
常識は存在する。
例えば、剣を片手にして平民学生を片っ端から斬り殺したりした場合。
無罪は無罪として。
学校側の判断としては理事会の全会一致で退学になるだろうし、その領地の貴族は出入り禁止にもなる。
人として正しいこと。
王として正しいこと。
この二つは矛盾することも多いが。
しないこともある。
一般人の目から見て異常なことの何割かは、貴族の目から見てもやはり異常なのだ。
よーするに。
貴族というのは権力者ではあっても無法者ではないので。
人目のある場所で堂々と付き合う分においては、そうそうひどい目にあったりはしないらしい。
建前は。
学生みな平等。
前世でよく口にされていたスローガンとまったく同じである。
びょうどう。
平等か。
空しい言葉だな。
この世界に生きている人間で、自分をその座に置ける人間が果たしているのだろうか。
『妖精さんの世界は……平等ってあるのか?』
『ないよー』
『われわれはー、かみのげぼくー』
らしい。
『妖精どうしでは対等なのか?』
『のー』
『ぼくらー、れべる2ようせいー。れべる1ようせいならあごでつかえるけどー。れべる3ようせいにはきほん、ぜったいふくじゅうー。れべる2どうしでもじょれつはあるー』
そうなのか。
妖精の世界もけっこう複雑なのだな。
そもそも妖精さん以外の妖精さんを見たことがないのだが。
それはどうなんだろうか。
『……妖精って、どれぐらいいるの?』
『れべる1ようせいはそこらへんにいるー。たまにまものにつかまって、たねうまとかはらみぶくろになるー。えいようのかたまりー。れべる2ようせいはかみにちかいー。せかいぜんどでも20ほどー』
『れべる3ようせいはー。せかいに3たいだけー。てんせいしゃでぷらすわんー。ふぁーすととりっぱーのほじょをするために、よりしろをさがしているかー、もしくはすでにかつどうちゅうー』
なるほど。
レベル2以上の妖精は20体と少しか。
それでは平和京高校の学生400名のうちで、1人さえ見つけられていない私が出会えるはずもないな。
え。
てゆーか。
世界に20体しかいないレベル2妖精のうち2体を確保してる私って。
もしかして超すごいのでは?
『妖精さんは……どうして私と一緒に行動しているのだ?』
『ますたーはー』
『ようせいにすかれるー、たいしつー。これはすきるとはかんけいない、てんねんのものー』
へえ。
そんなのがあるのか。
『妖精さんは、私にこれからして欲しいこととかはあるか?』
『おとこさがしー』
『するといいよー』
それは。
妖精さんがして欲しいことじゃなくて。
私がしたいことのような?
まあいいか。
『どこに行けば出会えるかな?』
『うーんとー』
『それはねー』
迷う妖精さん。
『ううん? 何か困ることがあるのか?』
『このへん、ぶっちゃけー、よりどりみどりだけどー』
『あいてのうんめいがおおきすぎてー、ちょっときけんかもー。ますたーのうつわがー、まだー、じょうきゅうきぞくをろうらくできるほどにはー、せいちょうしてないってゆーかー』
器?
成長?
私の魅力には、何か発動条件があるのか?
『ええっと……つまり、誰と出会うべきなんだ?』
『このみをー』
『おしえてー』
難しい質問をする妖精さん。
『イケメン、金持ちで、権力は……下級貴族ぐらいでもいいかな。年下よりは年上で。あと、性格は、穏やかなタイプとか、知的な人とかが好きだ。嫌いなのは変に博愛主義的だったり、見栄っ張りだったり、行き過ぎたポエマーとか、オレ様とか不良とか。規則にうるさすぎる男とか。エリーぐらいの男がギリギリ合格、もしくはギリギリ不合格で。ファビオはぶっちぎりの合格。ジュリアンとかシルベストルとかは圏外』
『それならー』
『あっちー』
妖精さんが指をさした。
おお。
ここまで注文をつけてもまだ候補者がいるのか。
すごいな。
いくら私でも。
自分の身のほどは知っているし。
貴族関係者であればむしろ、私のほうが選んでもらう立場だとも思うけど。
この時の私は。
もちろん。
まだ見ぬ恋愛相手との出会いについて、胸を高鳴らせていたがために。
貴族の男とは恋愛関係になるべきではないというエリーからの忠告など。
すっかり忘れてしまっていた。




