表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/122

第5話「楽しく冒険します」

 エリーとその仲間たちはフィールド狩りが中心のパーティーだ。

 島を当てもなくさまよう。

 わけではない。

 大抵の場合は目撃証言があり。

 なおかつ現地のハンターが監視対象にしている、所在の明らかな魔物を狩るという。


「冒険者のエリーだ。目標は?」

「動いていません。よろしくお願いします」


 大型の魔獣。

 大発生した害獣。

 森林に潜む悪辣な亜人種や、洞窟の浅層まで出てきた魔物の駆除活動など。


 私たちのパーティーはどんな仕事でも受けて勇敢に戦った。


 戦力としては、やはり勇者エリーが5割。

 あと、テッサと名乗った格闘術の使い手が2割。

 金髪シスターのメイス技と、チンピラジュリアンの槍で1割5分ずつぐらいと。

 

 そんな感じだな。


 私は。

 だいたい、エリー隊の総戦力と比べて7割ぐらい……だと思う。

 全力を出せば、おそらくエリーより私のほうが強い。


 しかし。

 新参がいきがるとろくなことがないし。

 エリーは調子の悪い時の私しか見たことがないはずなので。


 てきとうに手を抜いて。

 全力の50%ぐらいの力で。

 無理のない範囲でサポートに回りつつ、要所要所での索敵やら遊撃やらを担当することで、メンバーに貢献した。


「今日の成功に!」

「乾杯!」

「かんぱい!」

「かんぱーい!」


 酒場でわいわいとグラスを叩き合う。

 料理のにおい。

 喧騒。

 みんな笑顔でテーブルを囲んで成功体験を振り返る、まさに至福のひと時。


 格闘術使いのポニー美少女テッサは、特に私とウマが合うらしく。

 いつも隣に座って。

 なにかれと世話を焼いてくれる。


「いやー、新メンバーとか言われてすっごくびびってたけどさ。カエデちゃんってあれだよね! すごくいい子だよね!」

「ありがとうございます。テッサさんもすごい動きです」

「テッサでいいよ! おだてなくてもいいし! どこからどう見ても、カエデちゃんのほうが速いし強いし気も利くし!」

「それほどでも……まあ、多少はありますが」

「そこは謙遜しないかー!」


 こつん、と軽くあたまを叩かれる。

 楽しいな。

 こういう会話に飢えていた私にとって、テッサは心のオアシスのように染み渡る存在だった。


 年が近くて。

 実力的にも近くて。

 身分もほぼ同じで。

 顔もかわいい。


 それよりなにより。

 女であるにもかかわらず、テッサは私を嫌悪する様子がない。


 思わず泣きそうになる。

 

 それぐらい。

 私はうれしかった。


 金髪美女のクリスティアーヌなんかは、丁寧な物腰の中にも私への警戒と敵意、そして、押し殺した嫌悪感みたいなものがにじみ出ているのだが。


 テッサにはそれがない。

 ほんとうに。

 100%の好意で私になれなれしくしてくれるので、心の底からありがたい。


「私は……テッサと会えて、よかった。この島に来たのはテッサに会うためだけのものだったと言っても過言ではありません」

「いやいや! 過言! 過言すぎ! そこまで喜ばれる意味がわからない!」

「なんというか……私、実は女の人から嫌われるタイプなので」

「あー、それっぽいよね」


 テッサは納得したようにうなずいてごくごくと酒を飲んだ。


「てゆーか、クリスとか、意味わかんないぐらいカエデちゃん苦手みたいだけど。なんかしたの?」

「特に何も」

「ふうん」

「でも、クリスさんは優しい人ですよ。それはまちがいありません」


 なにせ。

 私は彼女から嫌がらせをされたことがない。


 事務的なことしか話してくれないが。

 世間話ぐらいはするし。

 質問してもちゃんと答えてくれる。

 私が困っている時に解決法があるなら、なんと助けてさえくれる。

 これは異常なことだ。


 ロックフィード村にいたメイドさんや山賊女、冒険者仲間の女、王立貴族学校の女子なんかを思い出してみるに。

 クリスの人の良さは絶賛に値する。

 テッサは別格としても。

 金髪シスターのクリスティアーヌは尋常ではなく心の清い、まさに聖女のような冒険者であると断言してまちがいない。


「類は友を呼ぶというか……エリーさんのパーティーメンバーは、いずれも優秀で性格も素晴らしいですね」

「ジュリアンを除いてだけどね」

「か、彼はたしかに、少々チンピラっぽくて軽薄なところもありますが……ちゃんと働くし、強いし、頭も悪くはないですよ」

「えー」


 テッサは嫌そうに顔をしかめた。


「だってあいつ、私とかクリスの下着盗んだことあるし。胸とか触られたことあるし。もう最悪。ちゃんと吊し上げてしつけたけど、性根は曲がったままだよ」

「そ、それはフォロー不能ですね」

「カエデちゃんってウルトラビッグバン級にかわいいから、特に気をつけてね。なんなら殴ってね。誰も勘違いとか冤罪とか言わないから」

「りょ、了解です」


 私は気圧されたようにうなずいた。


 しかし。

 なんとゆーか。

 うわー。


 ジュリアン。

 そんなガチ屑男だったのか。


 いや。

 でもなあ。

 恩人なのは確かだし。


 仮に山賊と通じてたとか隠れて快楽殺人とか麻薬密売とかやってるなら、心の底から嫌えるけど。

 それはないだろうし。


 ちょっとセクハラするぐらいなら。

 まあ。

 かろうじて困った仲間の一員として、認識できなくもない……かな?


 少なくともエリーがパーティーから放逐しない程度には、ごくごく常識的なチンピラなのだろう。

 そう思うことにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ