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第4話「パーティーに入りました」

「え……私を、パーティーに?」

「ああ。メンバーが足りなくてな。協力してほしい」


 学校の冒険者ギルド。

 そこは島中で発生している魔物の被害をまとめ、その退治を依頼するための仕事の斡旋所だ。


 ダンジョンとは地下世界と地上とをつなぐ出入り口である。

 王立貴族学校。

 そこは大陸北部中央最大級のダンジョンの上にある。


 入り口は10ほどもあり。

 そのすべてが地下で連結されていて深さは途方もない。

 魔物もいる。

 地上にもひんぱんに出てくる。

 これによる被害は決してバカにしたものではなく、優れた冒険者には学生資格を与えようというほどに切実なものであるらしい。


「なにか……明白なターゲットがあるんですか? 例えば倒すべき魔物がはっきりしているのに、戦力が足りないとか」

「いや。そういうわけではないが……」


 煮え切らないことを言うエリー。

 よくわからないな。

 切実な理由がないのであれば、私を仲間に引き入れる意味なんてないだろう。


「ともかく、俺のパーティーは仲間不足なのだ。入ってくれ」

「そんなことを言われても」

「現実問題として、俺は仲間が足りなくて困っている。お前にはそれを助けられる戦力がある」

「ありますかね?」

「山賊リーダーのシルベストルは王立魔法学校に籍を置いたこともあるほどの凄腕だ。それを1対1で制したお前を弱者という者はいない。それに……お前は俺に対して恩があるはずだろう?」

「……そうですね」


 たしかに。

 それについては異論を持たない。

 勇者エリーがいなければ私は今も山賊にとらわれて、自由の身になんてなれなかったかもしれないのだ。


「それを返せ。俺のパーティーに入って貢献しろ。それがお前のするべき恩返しだ」

「……」


 そんなわけがない。

 エリーは嘘をついている。

 気心の知れた仲間ならばともかく、部外者の私を入れる?

 まるで意味がない。

 しかし。

 理屈の上では、確かに、私は彼に対して借りがある。


「わかりました」


 私は決断した。

 そして。

 言うべきかどうか迷ったが。

 結局口にすることにした。


「……あの」

「なんだ」

「気を使わせてしまって、すみません。そんなに無様でしたか?」

「何のことだかさっぱりだが。無様なのは間違いないな」

「やはり」

「はやくましになることだ。不幸になれば救われるなんてのはまやかしだぞ」


 そのような。

 次第によって。

 私は。


 エリーの冒険者仲間として活動することになった。



「カエデといいます。以後よろしく」

「ジュリアンだ」

「クリスティアーヌです。クリスでどうぞ」

「テッサよ」

「俺はエリー……まあ、知ってるよな。よくしてやってくれ」


 自己紹介を終えた私たち。

 向こうは。

 4人組。

 私を山賊団から助けてくれたメンバーであるようだ。

 特に解散もせずに活動を続けていたらしい。


 いいな。

 うらやましい。

 仲間といっしょに仕事をして同じ時間を過ごせるだなんて、なんて贅沢なのかしら。


 エリーのパーティー4人組。

 私を入れて5人。

 さばさばとした健康そうなポニー美少女のテッサ。

 淑女然としたシスター出身だというメイス使いの金髪美女クリスティアーヌ。

 そして勇者エリー。

 あとは。

 同い年ぐらいの少年ジュリアンもいたが。

 彼はまあ。

 普通。

 別に魅力的でもない、ちょっと魔力が強いだけの普通の冒険者のようだ。


 このパーティーの中ではちょっと浮いた、チンピラっぽい外見のジュリアン。

 耳にピアス。

 へらへら笑い。

 性的な視線を隠そうともせずに、やたらと私をじろじろ見る。


 なんというか。

 パーティーに参加してからこっち。

 少年ジュリアンから露骨にアプローチを受けるのだが。

 私は受け流した。

 迷惑だ。

 未亡人の私に何を期待しているのだろう。

 まだ勇者様ならばそういうものかもと理解できるにせよ、年が近いというだけで親近感を持たれては迷惑である。


 いやまあ。

 前世ではクラスメートに恋をする女子も多くいたわけだし。

 金持ちであるかどうかに関わらず、自分の年齢の前後三歳ぐらいしかストライクゾーンにならない女性というのも何割かはいるらしい。

 それは知っている。


 しかし。

 私はまったくそういうタイプではない。

 上方婚主義で。

 年上大好きである。

 同い年でかつ私よりも格上ならばドストライクだが。

 冒険者の少年なんてのは私より格下かつ未熟であるため、全然興味がない。


「カエデって、恋愛に興味とかねーの? エリーさんすっげーモテるけど」

「ないです」

「へー」

「人としては尊敬していますし恩人なので義理もありますが。彼はぜんぜん私の好みではないので。恋愛対象ではないですね」

「ははっ! たまにはそうでないとな! いやー、他の女2人はエリーさんにべたぼれだから、俺はやたらと居心地が悪くてさあ!」


 大はしゃぎになるジュリアン。

 おいおい。

 確かに私はエリーを恋愛対象として見ていないが。

 だからといって、ジュリアンがそうだというわけではないのだぞ。


 私にとって、私を呼び捨てにする下郎は恋愛対象外である。

 友人としてさえ拒否だ。

 不愉快だし。

 調子に乗りすぎている。

 やんちゃで不良っぽい外見も気に入らない。

 目上の人間を批判して偉くなったと勘違いするようなカス男は、痛々しすぎて目に入れるのも嫌だというのが正直なところだった。


 だから、なれなれしくしないでほしいのだが。


 以後、私は頻繁にジュリアンからデートに誘われるようになった。

 迷惑だ。

 きっちり断るべきか。

 でもなあ。

 告白もされていないうちから「あなたに興味がありません」だなんて、自意識過剰の女すぎて私にはとてもできない。


 それに。

 助けてもらった恩もあるし。

 私を山賊から助けてくれたのは8割がた凄腕冒険者エリーの力だが、彼も一種のにぎやかしとしての意味ぐらいはあった。

 であれば。

 多少性格的に嫌いなタイプであっても、敬意と友愛を持って接するべきなのだろう。

 恩人に対して邪険にするのは無礼というものだ。

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