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第1話「勇者エリーと再会」

 行商に向かうらしい商人さんと仲良くなって丁稚と言うことにしてもらい、私は入島をはたした。


 季節は夏。


 学校の気配はあわただしい。

 なんでもこの夏、領地のトップであるバイロン侯爵が暗殺されたらしく。

 今は戦争の真っ最中。

 息子のウォーレン侯爵子息は父の仇を討つために、兵を集めて報復戦をしかけているとのこと。


 正直なところ、へー、としか思わないが。


 ふむ。

 あてが外れたな。

 超一級の美少女たる私の魅力なら、貴族のボンボンをたらしこめる可能性もあるかもと思っていたが。

 一番おいしそうな人材が抜けてしまったか。


 いや。

 侯爵子息は高すぎて私と釣り合わないのでそれ自体はいいのだが。

 問題は他にある。

 戦争で優秀な冒険者たちがごっそり徴兵されたため、現在の王立貴族学校は超がつくほどの女余り状態になってしまったのだ。


 これはよろしくない。


 男には好かれるが。

 女には嫌われる私だ。

 やっぱり別の国へ行こうかなー、と思わなくもなかったが。


 今は人不足。

 優秀な冒険者であれば多少身元が怪しくても雇ってもらえるということで。

 私は学校お抱えの冒険者かつ学生ということになった。

 ラッキー。


 どうも最近になって学校の運営方針が変わっているらしく、優秀な人材ならどんどん使おうという雰囲気があるらしい。


 一応試験は受けた。

 数学とかはいまいちの成績だったが。

 語学はトップ。

 学校はじまって以来の天才であると大絶賛された。


 さて。


『あるこー』

『あっちへいこー』


 妖精さんと一緒に、冒険者としての登録をするために学校にある冒険者ギルドへと足を運んだところ。


「あ」

「カエデじゃないか。偶然だな」


 めずらしい人物と会った。


 金髪。

 赤眼。

 高身長。

 ほりの深いイケメン。

 健康そうな筋肉とバカみたいに強い魔力を持った、意志の強そうな好青年。


 見覚えがある人だ。

 あれはそう。

 ロックフィードの村で、囚われていた私の潔白を証言するためにいろいろと奔走していた時のこと。


 かつて山賊退治の時に私を助けてくれた勇者エリーがなぜかここにいた。


「君は……あの開拓地区の責任者ではなかったのか?」

「そうですけど」

「なぜここに? 冒険者は危険な仕事だ。君にはふさわしくないぞ」

「いやあ」


 へらへらと笑ってごまかす。

 説明してもいいが。

 めんどう。

 私はこの種の質問をされた場合、別に整合性のある言い訳なんてしなくても笑えばそれで済むのだと経験で理解していた。


「どうだ? よければ一緒に食事でも」

「いいですよ」


 私は快く快諾し、冒険者エリーと一緒に食堂へと足を運んだ。




「……珍しい服装だな」

「でしょうね」

「それはこの学校の独自なものなのか?」

「いえ。私の故郷の民族衣装です。見たことがありますか?」

「ないな」

「それは残念」


 私はがっかりした。

 

 この学校。

 どうやら転生者は一人もいないらしい。


 わざわざ平和京高校の制服を着用し、クラスメートを探してまわりもしたが。

 結果はというと。

 空振り。

 まあ、そりゃそうだよな。

 いくら世界最大クラスの学府であったとしても、だから前世のクラスメートがいるという理由はない。


 むしろ最近は。

 本当にこの世界に400人もの平和京高校生が転移しているのか。

 疑っているぐらいなのだが。


「この学校には貴族の子息子女が相当多くいる。カエデはかなり礼儀ができているほうだが……それでも発言には気をつけたほうがいいぞ」

「そうでしょうね」

「いちおう、注意点について解説しておこうか?」

「ぜひともお願いします」


 エリーは次のように語った。


 まずは大前提として、貴族の男とは仲良くならないこと。

 特に恋愛は避けること。

 毎年、貴族女性と一般人女性との間で血で血を洗うようなトラブルが発生し。

 そのたびに。

 一般人女性の側が一方的に退学処分になって、場合によってはその後暗殺とかもされるそうだ。


「……気を付けます」

「ああ。カエデは、その……とびきり気をつけたほうがいい。おそらく自分でもある程度自覚があると思うが」

「そうですね」


 ああ。

 あるさ。

 あるともさ。


 私がこの世界に来てからの1年でどれほどの経験をしたか。


 きっと誰にもわかるまい。


「あとは……警戒するべき人物をおぼえておくことだ。この学校で操船教室を運営しているフリードリーンと、社交界作法の教室を開いているテレンティア。この2人は極めて危険であるがゆえに、その活動には興味があっても近づかないことをすすめる」

「なるほど」


 貴族には庶民をいじめて楽しむ性格の腐った者がいる。

 特にやばいのは、そのフリードリーン。

 そしてテレンティア。

 彼と彼女は貴族特権を盾にして一般学生を何人も殺している危険人物らしい。


 他にもウォーレンとカルラ、という超一等の危険人物がいたそうだが。

 その2人は今現在学校にいないので。

 問題はないとのこと。


「その人たち、何かやったんですか?」

「……ここだけの話だが」


 公爵令嬢カルラというのは各国に出向いては陰謀と暗殺と粛清劇によって国をがたがたにする悪魔のような女であり。

 アークデーモンことウォーレン侯爵……現在戦争の真っ最中……は女とみるや見境なく手を出すクズ男で、その上に権力を振りかざして無辜の民をいたずらに殺してまわるひどい貴族とのこと。


 ふーん。


 私は前世で金持ちだったので。

 この種の話がほぼ100%庶民の空想でしかないと知っている。

 しかし。

 火のないところに煙は立たないとも言うからな。

 その2人には近づかないほうが賢明か。

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