第4話「運命とは」
ところどころ、街道封鎖が行われているものの。
国境を抜けるのは。
わりと。
簡単にできるらしい。
戦争中でもない限り、徒歩による通行は制限されていない。
メインの道路については封鎖されていても、妖精さんであればローカルな山路を行くことで目的地にたどり着ける。
小国が乱立している大陸中部であればともかく。
大陸北部はいくらかの例外を除き、人や物資が自由に行き来することができる。
ひとつの王国なのだ。
紅眼族国家。
人口15億を擁する巨大経済圏。
そこではできるだけ、物資の運搬をスムーズにしましょうということで。
小口の商売については。
ほぼスルー。
さすがに馬車や船による運搬とかだとチェックも厳しいが、人ひとりがリュックに背負うぐらいであれば検査は行われない。
ちなみに、今回の大冒険について。
妖精さんはとても積極的に賛成してくれた。
なんでも。
今のエニウェア侯爵領一帯は四方八方から運命が押し寄せる歴史の分岐点、に当たっているらしく。
そーゆー場所では。
妖精はものすごく活動しやすいらしい。
何もしなくても妖精さんエネルギーなるものが勝手に補充されていく、不思議生物にとっての夢の国なのだそうだ。
『てぃるなのぐー』
『とこわかのまほろばー』
ふうん。
ハザマの国、というやつか。
妖精さんの理屈は私にはわからないが。
どうも最近。
運命を暴力的なほどに飲み込むある種のバケモノみたいな人間があらわれて。
歴史を変えまくり。
結果として運命の空白地帯が生まれ。
世界各国のあちこちから運命の波が押し寄せていると。
そういう状態のようだ。
『うんめいだくだくー』
『ちょうさいこー』
妖精さんは楽しそうに歌って踊っている。
運命。
とは何か?
端的に言うと正なる歴史からずれた状況と、それに伴う修正力のことらしい。
正なる歴史とは?
私たち転生者や「」や「」が一切何もしなかった場合に起こる固定された状況とのことで、そこでは各国の人口から国富からなにから、全て決まっているそうだ。
なにがなにやら。
さっぱりだが。
そもそも言葉自体聞き取れないし、頭からざるで水をすくうかのようにざーっと抜けてしまう。
ふむ。
神様からの手紙もこんな感じだったな。
これも修正力か。
どうやら私にはこの問題について深く考えることさえ許されていないらしい。
『修正力とはなんだ? 努力しても無駄だということか?』
『そうじゃなくてー』
『じんるいがじぶんでばらんすをとるちからー』
じんるい?
ばらんす?
神様は関係ないのか?
『たとえば、100にんのなかでいちばんがんばる20にんをころしても、すぐにもとどおりー』
『いままでやるきのなかったべつの20にんがふんぱつして、そしきをひっぱっていく。それがしゅうせいりょくー』
なるほど。
暗殺によって重要人物を殺したとしても、すぐに歴史の本筋に戻ると。
そんな感じか。
局地的には大事件であったとしても、世界全体で見れば大きなできごとなどほとんどないというレベルの話だな。
『かねがなくなればー』
『よりはたらく。ないとこまるから。これもしゅうせいりょくー』
ふーむ。
財布を盗まれた時に節約したり仕事を増やしたりするのも、ある意味では修正力ということか。
『そしてー』
『ますたーがよびだされたのは、そのへんをかいけつするためー』
ううん?
それはどういう意味だろう。
『ときとしてー。じんるいぜんたいのせいりょくずをかえるほどのこじんがうまれることがあるー』
『ふつうはぐうぜんだけどー。こうかくりつでそのげんしょうをおこすー。ばけものー。そのこうほしゃがふぁーすととりっぱー。3にん。ますたーはだみー。だけど、しゅやくとしてのはたらきがきたいされていないわけでもなくー』
……聞いてもさっぱりわからんな。
うーむ。
なにやら重要なことを話しているように思うのだが。
『結局、私はこれからどうするべきなのだ?』
『せかいをー』
『たのしめー』
雑なことを言う妖精さん。
まあいい。
考えてもむだだということだな。
私はそれっきり、この話題については忘却し。
もくもくとエニウェア侯爵領までの道のりを歩き続けた。




