第3話「不幸を呼ぶ女」
ショックを受ける間もなく私は次へ進む。
人が死ぬのには慣れている。
今回は。
まだましだ。
なにせレオは単独で私にいいところを見せようとして難易度の高い依頼に一人で勝手に挑み、勝手に死んだわけなので。
彼の死と私との間には因果関係がない。
ゆえに。
ショックもない。
いやまあ当然ながらものすごく嫌な気分になるしお祈りもしたけれど。
それはそれ。
次のパーティーメンバーを探すために私はギルドに向かった。
『あれは?』
『だめー』
『やくざがらみー』
『あれは?』
『びょうきもちー』
『せっくすふかー』
『あれは?』
『おんなのこ、いいとこのおじょうー』
『しゅらばると、きけん。かいひすいしょうー』
いい人がいない!
3日ほどソロでの活動を続けた後。
ようやく仲間を見つけた。
普通のパーティーだ。
男2人で女1人の。
中堅。
3人組。
うん。
ここにするか。
「カエデといいます。もしよければ」
私を加えたパーティーは大躍進を果たした。
数多くの魔物を倒し。
多くの依頼をこなし。
時には盗賊の巣窟やらを見つけ、活動していた10人ほどを討伐してお縄にもしてやった。
大活躍。
ギルドの顔。
それが私のパーティーに与えられた正当な評価である。
妖精さんサーチは倒すべき敵を効率よく見つけるがゆえに。
私たちは。
ベテランのパーティーなんてめじゃないほど、魔物や賊どもを狩りまくった。
2週間ほどが経った。
ある日のこと。
私が休みをもらってホームの宿屋に帰ると。
そこは修羅場になっていた。
出会いがしらに。
女の子からビンタをもらう。
バチン!
いきなりだ。
わけがわからない。
口もきけずにジンジンする頬を抑えて呆然とする。
うちに。
パーティーが解散になって。
女からは罵声をあびせられ、男からは泣きそうな目で見られて、しかし何も言われずに。
一人残った男が、私に告白をしてきた。
告白。
それは愛のものであると同時に。
状況説明もかねていた。
私のことを好きになってしまったパーティーの男2人。
うち、どちらか一方が。
私を。
手にできると。
そういう話になって。
男は争って。
片方が負けて。
ビンタ女はその話を聞いてブチ切れてさっさとイチ抜けし。
勝った方が今まさに告白していると。
そういう展開らしい。
……なんだそりゃ。
私は景品じゃねーよ。
と思ったが。
最近の私は自己評価がだいぶ低くなっている。
無敵の処女ではない。
とっくに汚れて男性遍歴も積んだ、どこに出しても恥ずかしくない立派なビッチ様だ。
もらってくれるなら。
むしろ。
ありがたいとさえ言うべきか。
そう思った。
思ってしまった。
後になって思い返してみると。
この選択はある種の自傷行為にも似た、ストレス解消法の一つということになるのだろうけれど。
ともかく。
私はオーケーした。
で。
付き合い始めて。
男が一方的に貢いでくれる金によってただれた生活を送りつつ、2人で冒険者稼業を楽しみ。
そのステッラリオと名乗った優秀な冒険者も、私と付き合って1週間後に死んだ。
5人目が死んだ段階で、私は街にいられなくなった。
魔女。
破壊王。
パーティークラッシャー。
そんな感じの噂が流れたために、いくら妖精の加護がある私でも危険すぎて引っ越しを余儀なくされたのだ。
『……私は悪くない』
『だよねー』
『どーかんー』
と。
思う。
のだが。
さすがに付き合った男を連続何人も死なせてしまうと、大きな声で断言はできないところである。
『妖精さん……もしかして私、呪われてるんじゃないのか?』
『さー』
『いつかいいひと、みつかるよー』
そうだな。
だといいけど。
なんだか格下の人とは付き合えない、みたいな目に見えない法則のようなものを感じている私。
うーん。
これ、気のせいとは思えないんだけどなあ。
私はなんとなく、人から運を吸い取って生き続ける魔性の女になってしまったような気配がするんだけど。
ま、いい。
仮に私が人を不幸にする運命にあるのだとしても。
だから自殺する。
わけない。
子供も産んでいない段階で死ぬなんて女として悲しすぎるではないか。
と、ゆーわけで。
私は歩いた。
移動した。
目指すは大陸北部中央最大のダンジョンがあるというエニウェア侯爵領だ。
そこには学校があり。
冒険者を優遇してくれる仕組みがあり。
優秀な探索者であれば貴族に混じり、学校で勉強するための資格さえ与えてもらえるらしい。
王立貴族学校。
王立魔法学校。
この世界にいる人間であれば、どちらかのルートをたどって出世の道を目指す。
らしい。
と、なれば。
いるかもしれない。
仲間が。
私と対等な形で付き合える冒険者だけではなく。
かつて私が同じ青春を過ごした、前世のクラスメートにだって出会えるかもしれないのだ。
私は意を決して一人、エニウェア侯爵領にある王立貴族学校へと向かった。




