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第1話「新パーティー結成」

 春である。


 身も心もボロボロになった私は、とりあえずリハビリがてらに冒険者稼業をやってみることにした。


 冒険者。


 仕事としては魔物退治。

 街道警備。

 ダンジョン探索。

 雑用各種。

 そんなところか。


 前世で言えば……清掃、交通整理、警備員みたいな感じの仕事だ。

 それを1000倍ぐらい危険にしたバージョン。

 加えて。

 給料は10分の1。

 この世界における肉体労働者は極めてありふれているため、買いたたかれるがゆえに月給2万円ぐらいという悲惨な感じらしい。


 そもそもこの世界。

 冒険者は単なる使用人であって個人営業者ではない。

 ギルドに行くと。

 そこで従うべき人と集合日時とを指示されて。

 1日働いて。

 銀貨1枚(2000円)を受け取って。

 じゃ、さようならと。

 それだけ。

 単なる日雇い労働者でしかないのが、冒険者という仕事の実態だ。


 銀貨1枚の仕事は過酷である。

 受ければ2日は動けなくなるらしい。

 1か月で10回。

 月給で銀貨10枚(2万円)。

 それがこの世界における冒険者という仕事の実態だ。


 ただ。

 それではあまりにも夢がないということで。

 冒険者にはそれとは別に、魔物退治という出来高制の超リスキーな仕事も与えられている。


 ギルドに行く。

 仕事のあっせん所だ。

 入る。

 装備と汗、古い建材、そして紙の匂い。

 顔を隠し、人ごみに紛れ、孤独を埋めてくれる仲間を探してみる。


 私は。

 一人が嫌いだ。

 心のどこかでは常にむなしさを満たすための友達を求めてやまない。

 そういう人間である。

 これは生まれ持った消しようのないサガだと言えるだろう。


 できれば女がいいけど。

 無理だな。

 荒事は男が圧倒的に多いため、冒険者ギルドの女性比率は3割弱といったところ。


 美人は……いない。

 まあな。

 顔がかわいければ冒険者をやる意味なんてないか。

 そこらの繁盛している酒場で一日働くだけで、かるく銀貨10枚は稼げる。


 もっとも。

 それはそれで、各種のセクハラに悩まされる日々だろうけれど。

 美人の宿命である。

 私がミイラ人間のように全身びっしり布で防御しているのは、主にそれが理由だ。


「あの!」


 声がかかった。

 のか?

 振り返る。

 視線がばっちり合った。

 きょろきょろしても周囲に人はいないため、間違いなく私に向けた呼びかけであるようだが。


「一緒にパーティー、組みませんか!?」


 かわいい男の子だった。

 真新しい、ぴかぴかの服を着ている。

 新人。

 年も同じぐらいか。

 ここは魔物を狩るときのパーティーメンバーを募集するための部屋だから、別におかしな行動というわけでもないのだが。


「……私とか?」

「はい! 僕の得意武器は短剣です! ゴブリンを狩ったことがあります! 足が速くて、体力もあるほうです!」


 さっそく自己アピールをはじめている少年。

 ふーむ。

 初心者としては正しい態度だし、夢いっぱいの若者という感じですごく好感はもてるけど。


 顔を隠している私に。

 いきなりとは。

 珍しいな。

 女として以外で求められたのは久しぶりな気がする。


『妖精さん……この子はどうだ?』

『びみょー』

『かもなくふかもなしー』


 ふむ。

 少なくとも外れではないのか。

 ならば。


「わかった。パーティーを組もう。とりあえず食事にしないか?」

「は、はい!」


 新鮮さを感じた私は快く了承し。

 店に入り。

 フードを取って。

 驚かれて。

 ほめられて。

 あれこれと打ち合わせをして。


 そして。

 次の日から。

 2人で仕事をはじめた。




「す、すごくきれいな人ですねっ!」

「ありがとう。嬉しいよ」


 魔物狩りの帰り道。

 レオと名乗った少年は手放しで私をほめている。


 低い身長。

 華奢な体つき。

 表情にはケンがなく、いかにも人がよさそうな感じがする。


「君も美少年だ。うらやましいな」

「あ、あはは。そんなこと言われたのははじめてです……そ、そのですね。狩りもうまくいきましたし、このパーティーは幸先がいいですね!」


 照れをごまかすように微笑む少年レオ。

 14歳。

 2歳年下か。

 私はこれ以上ないぐらい完全に年上好みなので、ストライクゾーンからは大幅に外れている。


 とはいえ。

 まあ。

 あれだ。

 美少年は七難を隠すという(いわない)。

 レオはありなしで言えば一応「あり」に属する程度には容姿が整っているため、そばにいて不愉快ではなかった。


 戦果は上々。

 ケガもなし。

 手に入れた魔石と素材と依頼料で、金貨5枚ぐらいの収入にはなりそうだが。


「カエデさんは……その、彼氏とかいらっしゃるのでしょうか!?」

「いないよ」

「そ、そうですか! もったいないですよね!」

「ああ。そうかもしれないね」


 私は適当なあいづちを打つ。

 そっけなく。

 興味がなさそうに。

 明らかにレオ少年からのアプローチを受けているので、それをかわすのが目的だ。


 別に。

 女として見られるのが嫌いというわけじゃなく。

 むしろ好きだけど。


 せっかく見知らぬ土地で冒険者活動なのだ。

 まずは。

 それを楽しみたい。

 どこまでも広がった世界の片隅で

 価値のある何かを狩って生活の糧を得ていたい。


 次の日も。

 その次の日も。

 私たちはパーティーを組んで魔物を狩りまくり、そこらの冒険者が一年がかりで手にするほどの報酬を手に入れた。


 人数割りにしても半年分。

 ううむ。

 当分は働かなくてもいいかな。

 そもそも私はロックフィード村から持ち出した金貨を大量に所有しているため、別に金に困るということもないのだが。

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