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清純派でいることに疲れたので、これからはビッチで通そうと思います  作者: きえう
5章 浮き沈みの激しい季節になりました
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第12話「わたしたちの冒険はこれからだ」

 村に帰ると、ファビオの遺産が横領されていた。


 ファビオの兄嫁であるところの。

 聖女ロロット様。

 彼女が開拓地区のいっさいを取りしきり。

 しかもなぜか。

 山賊の大多数を倒した英雄ということになっていた。


 あの日の襲撃については、ロロット姉さまが主導して敵を追い払い。

 私は逃げ出した、というか。

 実は元山賊でありながらファビオに取り入って、しかも夫を殺して財産を丸々手に入れようと企画した稀代の悪党であると。


 そのような荒唐無稽な噂が流れていたのである。


 しかし。

 この設定はさすがに無茶であった。


 私が山賊と戦っていたのを見ている証言者は山ほどいる上に。

 山賊団が壊滅し。

 その捕虜がそろって私の潔白を個別に証言している。


 聖女ロロットについても。

 どういうわけか村へと山賊を引き入れ。

 襲わせる手引きをした内通者であるという証言が、続々と出ているようだ。


 いやまあ。

 それはちょっと、意味不明すぎて理解が及ばないのだが。


 ともかく。

 山賊捕虜の皆さんはみんな私の援護をしてくれたし。

 さらに加えて、私を村まで送ってくれた冒険者のエリーはどういうわけか発言力が極めて高いらしく。

 彼が私の擁護に回った時点で、趨勢は決定した。


「エリー!? な、なんであなたが!?」

「なりゆきだ。ロロット。変わったな。昔はこんな無様な真似をする女じゃなかった」

「あなたに、何がわかる!」


 顔見知りなのか。

 なにやらいわくもありそうだが。

 どうでもいい。

 私にとっての仇討ちはすでに終わっている。


 仮に聖女様のせいでファビオが死んだのだとしても。

 それがどうしたというのだ。


 私は。

 殺しすぎた。

 頭目も子分も半死半生の怪我人も、みんな私が殺した。


 この上に。

 さらに聖女ロロットという生贄を追加でくべるほどの気概を、私は持てなかった。


「そもそも、私はエリーのために……エリーにもう一度会う、それだけのために」

「意味の分からない言い訳をするな。自分のためだろう。かつて俺を捨てた女がいまさら何を言っている」

「それは!」


 なにやら言い争いが起こっているが。

 興味がない。

 早く終わらないかな。

 人があんなにたくさん死んだことに比べれば、心の底からどうでもいいことだと思う。


 とりあえず。

 勇者エリーにつっかかった聖女ロロットは衛兵に引きはがされて拘束され。

 そのまま牢屋にぶちこまれた。


 これから。

 尋問らしい。

 けど。


 どうでもいい。

 心の底からどうでもいい。

 私は今回の一件の後始末をつけるため、さっさと本家に向かうことにした。




 しばらく後。

 村での私は英雄になっていた。

 いや。

 もとからそのような意見もあったようだ。

 聖女ロロットは山賊襲来にかけつけてファビオの遺産を乗っ取った悪女であり。

 カエデこそがこの村を守った真の英雄であると。

 そのように主張する人もいた。


 不思議なもので、かつて私がふった男衆はのきなみ私の味方をし。

 料理教室などで世話を焼いていた女のほとんどは私の悪評を流していた。


 誤解が解けた今。

 女性のみなさんからは謝罪してもらったが。

 そんなことを今更言われてもな。

 私がいない間に悪口を言われていたとしても、そもそも聞いてさえいないのだ。

 恨みようもないか。


 彼女たちが急に寛容になったのは。

 おそらく。

 私が傷物になってしまったせいもあるだろう。


 まあな。

 誰が見ても哀れに見える私だ。

 英雄というのは一種の生贄であるため。

 この村にいる限り、私はずっと、彼女たちから憐憫のまなざしで見られ続けることになるのだろう。


 私はこころよく許し。

 忘れて。

 ファビオから受け継いでいるらしい財産の整理をはじめた。




 ファビオの遺産とは。


 食料の備蓄。

 金銀財宝。

 掛売。

 土地。

 家。

 倉庫。

 各種利権。

 奴隷。

 貸付金、などなど。


 リストアップすれば、やはり金貨数十万枚ぐらいにはなるようだが。

 特に未練はない。

 私はそれを、みんな譲るつもりだった。

 

 しかし。

 それは断られた。

 ファビオの本家の人は受け取りを拒否したし。

 かといって、ファビオ直属の部下だった人もがんとして受け取ってくれない。


 なんでも私は命をかけて山賊と戦った英雄になっているらしく。

 そんな人から財産まで受け取れば。

 村にいられなくなる。

 そういった話のようだ。


 本来の筋としては。

 ファビオの本家の人が受け取るのが道理というものだが。

 聖女の件で多少の負い目がある上に。

 母親も違うそうで。

 ファビオの所有財産は早世したかれの実母から受け継いだものであるがゆえに、もらう筋合いがないのだと言われてしまったのだ。


 では。

 寄付か。

 あれはやめておけと父は言っていた。

 ボランティアなんてのは一番末端の超絶変人や職業善人を含めてただの人間であるため。

 横領。

 使い込み。

 予算分配にまつわる各種ハラスメントなど。

 なんでもありだそうだ。

 財産を寄付するぐらいなら自分で全て使うほうが圧倒的に正しいと。

 父はそのように言っていた。

 海外でボランティア団体がたくさんあるのは、単に税制上の優遇を受けるため、そして身内を管理職につけるためという、それだけの話だそうだ。


 私は。

 単なる善人もいると思うけど。

 とゆーか、そう言いながらも父が多額の寄付をしているのも知っているけれど。

 せっかくの思い出だ。

 寄付はやめて。


 とりあえず。

 形だけ私が所有しておくということで。

 村の発展の妨げにならないように、権限だけ移譲するという話に落ち着いた。


 権限移譲。


 ようするに、開拓地区の運営に関わる一切をお任せしますという話である。


 政治。

 財務。

 軍事。

 みんなお任せだ。

 借金だけはしないという方向で。

 担当者にすべての権限を与えて、私は身軽になった。


 私がいなくても回るように。


 そして。

 私が死んだら。

 村の財産は働いてくれたみんなに直接分け与えるように。


 有力者の人に向けて遺産の割合を決めて、遺言状までをしたためて私は後始末を終えた。


 たまには顔を出してほしいと言われたが。

 別に必要もないな。

 横領とか。

 ぜんぜんこわくない。

 元からないものなのだ。

 村で顔なじみの彼らが自分のために使い込むという話なら、ボランティアに預けてしまうよりは救いがある。


 荷物を整理する。

 家を出る。

 最後にもう一度、思い出深いロックフィードの村を一望する。


 たぶん。

 もう二度と、ここに帰ってくることはないだろう。


『あるこー』

『あっちへいこー』


 私は2匹の妖精さんとともに、他のクラスメートを探すために旅立った。

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