第10話「仇は打ちました」
広場で暴れている侵入者をこっそりと観察する。
4人組。
男が2人で、女が2人か。
むちゃくちゃ強いな。
魔力も大きいし。
動きもはやい。
そのうちの一人、とりわけ強力な魔力を帯びている精悍な青年に、かつて一緒だった妖精がついている。
オトコウン。
いなくなっていた妖精。
彼は男の肩から離れて私の肩におりたち、ささやくように言った。
『つれてきたー』
つれてきた。
だれを。
こいつらを。
こんな冬場に、山の奥地まで、これほどの人材を。
そんなことができるのか。
いや。
いまそれはどうでもいい。
私の後ろからから山賊親分が現れた。
迎撃するつもりのようだ。
当然か。
私は。
どうする?
勢いよく私の肩から飛び出した妖精さんが、山賊頭目の体から大きな光の塊をちぎり取った。
受け取る。
私は。
それと一つになる。
すごい。
力があふれてくる。
勇気が無限に湧いてくる。
山賊親分は大声で部下を叱咤した。
侵入者が驚いている。
入り口を抑えられたので退路を断たれた形になるからだ。
なるほど。
彼らは妖精さんからこの砦の構造を聞いてはいないらしい。
では。
少しまずいな。
山賊が侵入者用の陣形を組んで、網や熊手を構えてじりじりと包囲を縮めた。
「カエデ……お前は遊撃だ! 正面を俺が受け持つ。雑魚を始末してくれ!」
指示が出てしまった。
が。
これは。
そう。
チャンスだ。
私は一歩下がり、山賊親分の背後から猛然とおそいかかった。
ガツンと。
勢いよく後頭部を殴りつける。
山賊親分のシルベストルはとっさに体ごと前方に転がして衝撃を逃がした。
不意打ちではあったが。
目標の位置が高く。
体重がうまく乗らなかったために一撃必殺とはいかない。
しかし。
手ごたえはあったぞ。
普通の人間であれば頭が破裂しているぐらいの威力はあったはずだ。
「か、カエデ。なぜ」
「……っ!」
私は踏み込んだ。
ダメージは。
ある。
はずだ。
たたみかけるなら今しかない。
私たちの内輪もめを見た侵入者たちも時を同じくして動いた。
戦闘がはじまった。
「……………………っ!」
「……………………っ!」
山賊親分が何かを叫んでいる。
私と戦うつもりだ。
こわい。
でも。
もう負けない。
斧を持っている右手を蹴りつける。
指の折れる音。
左腕が私をつかむために迫る。
払う。
後退し、勢いよく前に出る。
体重を乗せた拳がシルベストルの腹に突き刺さった。
「ぐっ!?」
腕をつかまれた。
ドカッと。
腹を殴られる。
衝撃。
吐き気。
しかし。
熱だ。
今の私には熱がある。
私はシルベストルの上顎を拳で跳ね上げ、そのままラッシュをはじめた。
殴る。
殴る。
殴る。
体格で勝るシルベストルが木偶人形のように翻弄されている。
足に蹴り。
腰が砕けた。
私は体当たりでシルベストルを地面に引き倒し、そのまま馬乗りになった。
顔を殴りつける。
何度も。
シルベストルの抵抗が弱くなってきた。
体を激しく揺らすシルベストルを腰で押さえつけ、私は殴り続ける。
抵抗がなくなった。
どうする。
続けるか。
拳が痛む気がする。
私は立ち上がり、無防備に寝ているシルベストルの顔を全身全霊で踏みつけた。
バキィ!
石床に頭がぶつかる。
すさまじいほどの手ごたえ。
床は砕けた。
シルベストルの方は……ぴくぴく生きている。
魔力で防御したらしい。
私の蹴撃は鉄兜だって砕けるのに。
タフだな。
でも。
これはどうだ。
私はふたたび足を振り上げた。
バキィ!
踵を叩きつけた。
もう一度。
二度。
三度目。
三度目で頭がはじけ飛んだ。
トマトのように。
割れて。
ぐしゃぐしゃになった頭蓋骨が脳みそをつきやぶって、首から上が完全に破壊された。
しんだ。
ころした。
うん。
ふぁびお。
かたきは、とったよ。
山賊団に居座る目的がなくなったため、このまま逃げてもよかったが。
しかし。
侵入者が私に危害を加える可能性はそれほど多くない。
ボスを倒して見せたし。
私は目立つ。
敵だとは思われないはずだ。
それに。
なにより。
仲間だ。
全ての元凶であった山賊ボスのシルベストル以外、私はファビオの仇だとは認識していない。
彼らとは、一緒に暮らした仲だ。
できるなら。
助けたい。
私は戦場を見渡した。




