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清純派でいることに疲れたので、これからはビッチで通そうと思います  作者: きえう
5章 浮き沈みの激しい季節になりました
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第9話「山賊にも慣れました」

 このごろ、私は山賊の構成員達となかよくなりはじめた。

 当初は嫌われていたが。

 料理を出し。

 会話を交わし。

 博打やらゲームやらに参加して一緒に遊んでいると、だんだん好感度が上がって組織の一員として認められるようになったのだ。


 今では「姐さん姐さん」と呼ばれてうっとうしいぐらいである。

 いやいや。

 私はこの山賊団で最年少組のはずだろうに。

 なぜ姐さん扱いを受けるのか。

 ちょっと意味がわからない。


 そりゃまあ。

 私は山賊頭目の妻であり。

 しかも一番お気に入りである。


 最近では、狩猟部隊にくっついて山に行こうとしたところ。

 普通に心配された。

 はじめのころはそんなこともなかったのに。

 目をぱちくりさせて聞いてみると、なんでも私が砦から逃げ出すのではないかと不安であるとのこと。


 私は柔らかくほほえんだ。


「逃げようと思えばいつでも逃げられます。ちゃんと帰ってきますよ。今までもずっと、逃げなかったではないですか」

「そ、そうだったな。いや、もちろんカエデのことは信頼しているが」

「もう。バカですね」


 くすりと笑ってから、私はボスの頬に手を当てて。

 背伸びをして。

 そっと口づけを交わした。


 山賊リーダーはでれでれとだらしなく笑った。


「はやく帰ってこい。またかわいがってやるから」

「はい……楽しみにしています」


 私はくるりと背を向ける。

 気持ち悪い。

 気持ち悪い。

 気持ち悪い。

 正直なところ、吐き気がしそうだが。


 しかたがない。

 生きるためにはなんでもするしかないのだ。

 確かに山賊リーダーは100人を超える無頼漢を力でまとめているだけあって、それなりの器量はある。

 男らしいし。

 優くて。

 私のことを、おそらくは愛している。


 しかし。

 それでも。

 彼を好きになれというのは、ゴキブリやらウジ虫やらを愛するのと同じぐらいには難しい。


 私はつらい現実を忘れるために狩りに熱中した。

 妖精さんサーチは強力だ。

 ほら穴に隠れ潜んでいる獲物さえ見つけることができる。


 残念ながら「オトコウン」と名乗った妖精さんは私を見限って消えてしまったようだが。

 一匹で十分。

 私が先導する狩猟部隊は常にたくさんの獲物を持ち帰るため。

 みんな大喜び。

 食料に困ることはなくなった。


 このあたりから、山賊親分は私以外の女を必要としなくなりはじめた。

 宝石。

 貴金属。

 毛皮のコートなど。

 部下や女に見せびらかしていた品々を、すべて私にプレゼントしてしまい。


 他の女に「いつかお前にやる」などと言っていた指輪さえ、私にひょいとくれた。


 当然。


 あの女はなんなんだ。


 と周囲の女からものすごく恨まれたが。

 もはや私の発言力は誰にも覆せないほどに大きくなっている。


 一度、食べ物に汚物を入れられたりもしたけれど。

 妖精さんが教えてくれたので。

 これ幸い。

 呼び出して実行者に食べさせて密告者の存在をにおわせて。

 疑心暗鬼をさそい。

 ついでに指を手にとってそっと優しく折ってあげた。


 ポキリ。


 女はみっともなく泣きわめき。

 以後、二度と私には逆らわなくなった。


 はあ。

 人を傷つけるのは心が痛むものだ。

 できればやりたくはないが。


 女たちは私のことを相当すさまじく恨んでいる。

 和解の余地はない。

 私のせいで山賊リーダーの女から格下げされて幹部の女となり、彼らからも私と頻繁に比べられるという地獄のような日々を送っているらしい。


 カエデなら。

 カエデがここにいれば。

 カエデのかわりとしてはしけてるが。


 そんな言葉を呪いのように日々言われていると。

 泣きつかれたこともある。

 気の毒に。

 私の名前を呼ばれながら男に抱かれるなんて、女としてのプライドが崩壊してもおかしくない屈辱中の屈辱だ。


 せめて。

 彼女たちに。

 何か一つでも私に勝てるものがあれば、まだましだったかもだが。


 山賊女というのは心の芯からこってりと卑しいため、どこにも尊敬のしようはない。


 私はしかたがなく。

 心を鬼にして。

 粗相をした年上のメスどもをバシバシと殴りつけて、女山賊界の覇者として君臨することになった。


 ああ。

 暴力だなんて。

 淑女として恥ずべきことだ。

 しくしく。

 山賊というのは思いやりとか優しさとかを弱者の媚態であると断じる心の貧しさがスタンダードであるから、他にやりようもないのだが。


 文化の違いか。

 つらい。

 山賊の流儀に染まるとどんどん自分の心が汚れていくのがわかるため、何かの機会があれば抜け出したいところである。


 機会。

 抜け出す機会。

 それは唐突にやってきた。


 その日。

 私はどういうわけか妖精さんがせがむので、体調が悪いと言って早めに寝た。

 ゆえに。

 深夜に目が覚めた。

 二度寝するほどの眠気さえなかったため、たまにはストレッチなどして体をよくほぐし、妖精倉庫からおやつを取り出してもぐもぐする。


 砦の外壁に出る。

 星空。

 とても寒い。

 私はボスからもらった毛皮のコートを着込み、幻想的なほどに美しい冬の夜空を観賞した。


 体が冷えたため、大広間に戻って火を起こす。

 ふう。

 暖かい。

 こんなことをしていると明日の昼以降がつらそうだが、眠れないものはしかたがない。


 で。

 それから間もなくのこと。


「敵襲! 敵襲だ!」


 ガンガンガン、と砦の鐘が打ち鳴らされている。


 マップを見る。

 妖精さんサーチの結果として砦の入り口に青い光点が4つ生まれている。

 青い。

 つまり、敵ではないのか。

 この侵入者たちはシルベストル山賊団の敵ではあっても。

 私の脅威ではないようだ。


 しかし。

 放置もできない。

 私は靴ひもを締めてから寝所に入って女どもを叩き起こし、ボスを呼びに行かせた。


 そのまま裏口へ。

 いったん砦の外へ出てから正面の門を抜ける。

 血の匂い。

 剣げきの音。

 気が付けばアジトの奥深くまで入り込まれている。


 私は迎撃に向かった。

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