第6話「山賊嫁になりました」
それからの生活は苦痛に満ちてはいたものの平穏に過ぎていった。
少なくとも食料事情については難民のときより充実していたし、長時間長距離を歩かなくても済むという点は非常にありがたい。
未来のあてはないが。
その点については難民生活とあまり変わらないため、特に問題はなかった。
山賊も悪くはない。
そう思う。
働きもせずに毎日遊んでいるヤクザ稼業というのは、そこに溶け込んでしまえばわりと気楽なものではあるのだ。
この集団はシルベストル山賊団という。
団長の名前もシルベストル。
ロックフィード村から徒歩3日ぐらいの山奥にある砦を拠点としている。
もとはリーフ子爵領とケイワイ男爵領との領地争いが絶えなかった時に作られた運搬用の拠点だったそうだが。
あまりにも不便であり。
国境が消えてからは軍を駐屯させる意味がないために放置されたらしい。
で。
無人の状態が続き。
今は空白地点に山賊が居座って活用していると。
そういう話のようだ。
私の仕事は。
料理。
掃除。
洗濯。
そして夜のお供。
美人で頭がよくて気立てもいい。
常に男を立てるし教養があって気配りもきっちりできる。
総じて言えば女としてのランクが高い私はすぐにボスのお気に入りになった。
私は自慢じゃないが、美少女である。
ほんとうに自慢ではない。
こんな目に合うぐらいなら不細工に生まれたかった。
いや。
それはさすがに無いものねだりかもしれないが。
ともあれ。
私は美少女なのだ。
ぽろぽろ涙を流して謝罪して服従を誓うと、山賊頭はゲラゲラと笑ってから急に寛容になった。
山賊リーダーは私を妻の地位に指定して、その下に端女をつけた。
私はこの世界に来てはじめて。
女の部下。
それを得ることになった。
彼女たちとは一応面識がある。
嫌な思い出だが。
初日、身も心もボロボロにされていたときに、山賊頭のサポートとしてそれを手伝っていたのが彼女たちなわけだ。
私が泣き叫んで乱れる様を愉快そうに観察していた彼女たちには大いに思うところがあったため。
部下になったのをこれ幸い。
せいぜいいびってやることにした。
「そ、掃除、終わりました!」
報告を聞く。
さっと窓のさんを指でふき取ってみる。
埃がこびりついた。
「やりなおし」
「そ、そんな!?」
「さっさとやりなさい」
「もう3回目です! いい加減終わりにしてくださいよ!」
「だめ」
「だ、だって……」
「やりなおせ」
泣く泣く掃除に戻る女たち。
うむ。
とても気分がいい。
部屋がきれいになるので倍増しに爽快である。
彼女たちは私よりもはるかに地位と腕力で劣る上。
女衆の監督役として山賊頭の寵愛を受けている美少年娼婦ちゃんが見張っているので反抗は不可能なのだ。
はっ。
ざまあ。
私を笑ったことのむくいを受けるがいい。
「ほどほどにしてあげてくださいね」
「わかっています」
はかなげに微笑む美少年娼婦ちゃん。
名前はアラン。
山賊幹部の愛妾の連れ子らしい。
アランちゃんはいい人だ。
優しくて気立てがいい。
12歳。
性格美少女。
これで男でさえなければさぞかしモテただろうが……男であってもモテるのだから正直意味不明だな。
衆道か。
現実でホモとかありえないと思っていたのだが。
アランちゃんは下手な女よりも可愛いし線が細くて庇護欲をそそるタイプのため。
性別を超えた需要があるというのもうなずける話である。
さて。
彼だけは例外的にいい人だが。
他の男はクズ。
真正の屑。
どうもこの砦に来てから男運が悪くなったような気がする。
村ではそんなこともなかったのに。
ここで出会う男は私の胸を触ったり。
言葉でなじったり。
場合によっては性的暴行を加えようとすることもある。
腕力では上なのでさせない。
が。
こわいし。
身がふるえる。
それをおもしろがって彼らはそうするのだ。
男という生き物は真正の屑だと思う。
そういえば、いつも私についていた妖精さん。
そのうちの一匹は最近見なくなった。
おとこうん、と出会ったとき名乗っていた気がするが。
関係があるのだろうか。
あの妖精がいなくなってからこっち。
ろくな男が寄ってこないのだが。
山賊だし。
それが普通なのかも。
カタギの人間と比べれば、性根が腐ったクズがそろっているのはやむをえまい。




