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清純派でいることに疲れたので、これからはビッチで通そうと思います  作者: きえう
5章 浮き沈みの激しい季節になりました
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第4話「山賊にさらわれました」

 魔力をこねくりまわして内側から矢じりをおおい、えいっと一気に引き抜く。

 カランと。

 地面に矢が落ちた。

 包帯は。

 いらないか。

 気合いを入れて傷口に魔力を集中させると、ジュッと熱を持って、出血はすぐにおさまった。


 冷静さと狂熱とを同居させている私はそのまま一直線に村の広場へと向かう。

 地面には賊の死体。

 村人の死体。

 剣、ハンマー、斧、弓、フォークなど。

 武器になりそうなものもあったが。


 あれを使えば。

 殺してしまうだろう。

 ころす。

 拳でも人は殺せる。

 ころしたい。

 いや。

 でもそれは。

 矛盾した感情を抱えたまま、私は目的のボス猿を見つける。


 いた。

 敵だ。


 大斧を抱えたバカみたいな魔力を発する大男が、ギラギラとした瞳で私を見つめている。


『だめー!』

『にげてー!』


 聞こえない。

 なにも聞こえない。

 妖精さんの叫びを無視した私は勢いよく走り出した。


 つっこむ。

 一番数の多いところへと。

 八つ当たり気味に蹴飛ばし、殴りつけ、山賊頭目の取り巻きを次々とふきとばしていく。


 まるで紙の兵だ。

 よわい。

 なんだお前たちは。

 そんな雑魚のぶんざいで、よくもファビオを。


「うおうりゃああああああああああああっ!」

「でやあああああああああああああああっ!」


 山賊頭が吠えた。

 私も吠えた。

 接触。

 ガンッ、と。

 吹き飛ばされる私。


 おお。

 強いな。

 それに重い。

 囲まれた。

 分銅が空を飛び、私の体に網のようなものがからみつく。


 ぶちぶちとちぎれるが。

 取れない。

 ち。

 たしかこういう時は。

 魔障壁を円形にまとわせて、酸や炎の魔法を使えとティッキーが。


 それは。

 どうやるのだ。


 ガツン、と私に大斧が叩きつけられた。

 強い。

 さすが山賊ボス。

 体も大きいし筋肉もあるようだ。

 攻撃が重い。

 くそ。

 網が邪魔だ。

 よけられない。

 私はごろごろ転がって逃げた。


「…………っ!」

「…………っ!?」


 立ち上がる。

 体ごと網でひっぱられる。

 またこける。

 動けない。

 衝撃。

 斧が叩きつけられる。

 受けた右腕がしびれて、もはや動かせなくなった。


 動く。

 必死で動く。

 網の妨害を魔力の膜で防ぎながら。

 ところかまわず体当たりをしてまわる。


 骨が砕け、肉がちぎれ、山賊の多くは悲鳴をあげて逃げまどった。

 でも減らない。

 多すぎる。

 だんだんと私の動きも落ちてくる。

 筋肉の限界が来てスピードが出せなくなった。


 くらりと。

 めまいがする。

 この感覚は……魔力の使いすぎか。

 そうだったな。

 吐き気がこみ上げて頭痛が鳴り響き、立っていることさえ困難になりはじめた。


 山賊たちは雄たけびをあげて私をめった打ちにした。


 いたい。

 いたい。

 いたい。


 槍や錫杖で殴られた私は涙を流しながら「やめてください!」と叫んだ。

 しかし止まらない。

 助けて。

 いやだ。

 死にたくない。


 死にたくない!



 私は願ったが。

 そのかいもなく、ごくふつうに。

 しんだ。



 私は山賊に殴られて死亡した。




 カエデ・シラカワの死亡が確定しました


 残存初期ポイントが100を超えています

 コンティニューしますか?

 →はい



 時間を巻き戻しました

 シミュレーション発動中……失敗

 状況が詰んでいます……運命改ざん発動……山賊頭目の天運を奪い取りました。即死回避成功。このまま続行しますか?

 →はい




 死にたくない!


 その願いが天に通じたのか。

 結果として。

 私は死ななかった。


「やめろ!」


 山賊リーダーは思いのほか強固な統率力を発揮し。

 部下の凶行を押しとどめる。


 おそらく。

 この時。

 ほんの少しだけ、何かが違っていたとしたら。


 たとえば。


 仮に山賊リーダーがあそこで一喝するのが、少しでも遅れていれば。


 私は死んでいただろう。


 後になって思えば。

 そのほうが。

 まだしもよかったのかもしれないが。


 ともかく。


 私は動けなくなってしまい。

 息も絶え絶えで。

 全身のあちこちに打撲性のショックを受けて、意識がもうろうとしているところを。

 ひょいと抱えあげられて。


「ボス。被害が出すぎました。これ以上は」

「潮時か」

「はい。引くべきです……その女は?」

「おう。こいつは俺のだ。手を出すなよ」


 と。

 いうふうに。

 話がまとまって。


 私は山賊のアジトへとお持ち帰りされてしまった。

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