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清純派でいることに疲れたので、これからはビッチで通そうと思います  作者: きえう
5章 浮き沈みの激しい季節になりました
33/122

第3話「だんな様が死にました」

「…………」


 5人。

 あと2人は。

 私は周囲を見る。

 広場へと走っていく2つの背中が見える。

 ふん。

 とっくに逃げていたか。


 周囲を見渡せば死屍累々、助けたはずの村人までが恐ろしいものを見るように私を見つめている。


「……あちらへ」


 腕を上げるのを見てびくりとした村人たちに向けて、私は指示を出した。


「逃げれば、賊はいません。裏道をたどって歩けば盗賊とは出会わないはずです。大通りはさけなさい。小さな裏路地や農道をつたって避難するのです」

「わ、わかりました。カエデ様は?」

「ファビオを探します」


 居場所を知っているか、と聞いたが、誰も知らないようだ。

 当然か。

 この混乱の中で尋ね人を的確に見つけられるのは、妖精ぐらいのもの。


『…………妖精さん。教えてほしい。ファビオは?』

『もうー』

『まにあわないよー』

『たのむ。私は行かなくてはならないんだ。お願いだ。教えてくれ』

『……あっちー』

『……そっちー』


 ものすごく乗り気じゃなさそうな声で妖精さんが答える。

 ああ。

 ありがとう。

 教えてくれてうれしい。

 妖精さんはやっぱり私の味方だ。


 ファビオは村の中心にいた。


 村の中心で死んでいた。

 遺体だ。

 すがりつく気にもならない。

 一目みただけでわかるぐらい完全に死んでいる。


 ぐったりと。

 血だまりを作って。

 片腕をなくして腹のあたりを真っ赤にして、とてもくるしそうな顔をして死んでいる。


 盗賊と戦ったらしい。

 無謀にも。

 弱いのにな。

 傍には10を超える自警団の死体や、彼らが持っていたらしいハンマーや剣やフォークなどが落ちている。


 逃げれば。

 よかったのに。


 みじめに村人を捨てて自分だけ我先に逃げても、誰も卑怯者だなんていわないのに。


 彼は何を思って戦うことを決め、そして死んだのだろうか。

 わからない。

 もはや答えを聞くことさえできない。


 おわかれさえ。

 できな。

 かったか。



 ゆるさない。



 私は駆けだした。


 どこへ向かっているのか。

 自分でも。

 よくわからない。


 赤だ。

 ファビオの周りを色づかせていた赤い色。

 まずはそれを探そう。

 村のマップを表示させて赤と青がそろっている場所を探し。

 そこに駆けつけて。

 蹴った。


 山賊が吹き飛んだ。


「てめえええええええっ!」

「ごあああああああっ!」


 叫ぶ。

 腹の底から。


 殴る。

 蹴る。

 首の骨を折る。


 出会いがしらに賊を攻撃して一人ずつ仕留めていく。


 反撃もあった。

 殴られた。

 いたい。

 多くの賊と無我夢中で殴り合う私。

 気持ち悪い。

 はきそう。

 でもやめない。

 大立ち回りを繰り返して襲われている村人をできるだけ助けていく。


「いたぞ! あそこだ!」

「一人だ! 近づくな! 遠巻きに仕留めるんだ!」


 山賊どもがわらわらと集まって来て私を取り囲む。

 弓だ。

 矢の雨が降り注ぐ。

 見えている。

 でも。

 つかめない。

 避けられない。

 体と心が一致しない。


 いたい!


 ざくりと。

 異物を差し込まれる痛みが私の体を走る。


 肩に矢が刺さった。

 太ももにも。

 血がどくどくと流れる。


 いたい。

 いたい。

 いたい。


 体にまとわせている魔力をとっさに分厚くする。


 血は止まった。

 痛みも。

 かなり和らいだ。


 ガツンガツンと衝撃が体に伝わる。

 矢が弾かれて飛んだ。

 刺さらない。

 でも。

 当たればいたい。

 けっこうなダメージだ。

 しかし。

 この程度なら。


 当たっても、耐えられる!


 私は足にものをいわせて囲みを抜け、賊どもの裏を取った。


「ひっ」

「う、うわあああああっ!?」

「や、やめろ!」

「野郎ども! 逃げるな! 戦え……お、おい、来るな! くるなよ! ひいいいいいいいっ!?」


 殴る。

 骨をくだく。

 悲鳴。

 絶叫。

 逃げまどう山賊たち。


 10を超えていた賊どもがあっさりと散り散りになる。


 束の間の休息。

 しかし。

 まだまだいるようだ。

 村に侵入している山賊どもは軽く100を超える。

 そのうちの50ほどは……村の広場に陣取って、特に動こうともしていない。


 おそらく。

 そこに。

 ファビオの仇も。


 このふざけた襲撃を企画してくれた、そもそもの元凶もいるはずだ。

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