第6話「期待してもいいですか」
収穫が終わって肥料をまくと、農作業は急に暇ができてくる。
村人のみなさんは村中でだらだらしている。
酒。
博打。
買春など。
歌を歌いながら散歩して花をめで、へとへとになるまで遊んで。
暗くなったら帰って寝る。
もしくは酒盛りをして夜通し遊びまわると。
そんな毎日のようだ。
とにかく仕事をしない。
暇なのだ。
生きるのに困らない層にとって自己実現や社会貢献などというのはバカのたわごとにすぎない。
金がなければ働くし。
あれば遊ぶ。
それだけ。
堅実な者であれば仕事を求めて都会へと出かけ。
放蕩癖のあるものは楽しいことをする。
絵札賭札。
食べ歩き。
ケンカと祭りとバカ騒ぎ。
秋とはそんなものだ。
この時期。
働いていると可哀想な人を見るような視線を受けてしまう。
私は働いていないと落ち着かないタイプなので。
開拓者に混じって。
ハンマーを振るったり。
まかないを作ったり。
監督したり。
こまごまと働いていたのだが。
そのうちファビオが嫌がるようになった。
失敗したわけではない。
逆だ。
私の部下になりたいという理由で争いがよく起こるため。
あまり現場に出ないで欲しいと。
そう言われてしまったのだ。
「カエデちゃん、すごい人気だよ」
「ど、どうも」
意味不明なほどモテている私。
正直、困惑だ。
なぜだろう。
そんなに媚びを売るようなことはしていないはずなのだが。
指揮が上手いとか仕事ができるとか。
そういう理由ではまったくない。
たぶん。
どういうわけか。
私は男から好かれる。
前世ではここまでじゃなかった。
モテたことはモテたが。
それは街で歩いてスカウトされるとかナンパされるとか視線を感じるとか、そういった程度のことで。
私を巡って争わないで、レベルの深刻な美貌ではない。
そういう話はなかった。
代わりのきく女。
ちょっと身持ちが固いと思わせればそれ以上は寄ってこないという程度の。
普通にかわいいだけの女の子だったのだ。
なんなのだろう。
今は違う。
私と会話する権利を賭けて男衆の間で殴り合いが発生しているのだ。
これは異世界だから、ということか。
そういう文化なのか。
いやしかし。
私以外の女に関して言えば、そういった話はとんと聞かないのに。
「だんな様。私は……なんでこんなにモテているのでしょうかね?」
「答えにくい質問だね」
ファビオが苦笑した。
むむ。
なんだか呆れられている気がするな。
たしかにうぬぼれが強い女みたいだが。
深刻な悩みなのだぞ。
「ばかみたいなことを聞いている自覚はあります」
「ばかみたいに答えるなら、単純にかわいいからじゃないの? カエデちゃんはこの村で一番かわいいよ」
「あ、ありがとうございます」
「実は……現場に出ないでって言ったのはトラブル防止のためもあるけど、嫉妬も少しはあるんだよね。カエデちゃんが他の男と話してるとハラハラするから。本当は僕の家から出したくないぐらい」
うわー。
不意打ちだ。
お前が好きだと言ったも同然のセリフを口にするファビオ。
やばい。
顔が赤くなる。
「そうなのですか?」
「うん」
「…………とてもうれしいです、だんな様」
やっとのことで私がそう答えると、ファビオはにっこりほほ笑んだ。
おおお。
これはもう、告白、のようなものなのでは?
うん。
そのはずだ。
お互いの気持ちは通じ合っていると思う。
あとは確認か。
いやいや。
しかしこの状態で振られてしまったら、期待しまくった分だけダメージも大きそうだぞ。
この世界では重婚が認められている。
前世でさえ愛人はあった。
私は。
どうだろう。
普通に考えれば難民出身だから、2号さん3号さんか。
……はあ。
急にテンションが下がったな。
まあいい。
持たざる難民女には金持ちの2号でさえ過ぎたる待遇だ。
そう思うとしよう。
なによりも2号3号だからといって、ファビオに恋するこの気持ち自体に偽りがあろうはずもない。
「そう待たせないようにするから、しばらく男の人からの告白は断ってね」
「かしこまりました、だんな様」
うむ。
いいさ。
いつまでも待とうじゃないか。
どの道この村において。
ファビオ以上に高めの男なんて一人もいないのだから。




