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第4話「異世界肥料はチートです」

 恐怖の麦狩りと悪夢の稲刈りが終わり、みんなに余裕ができてきた。

 この時期。

 一年の仕事納めの証として、村中総出で肥料をまくらしい。


 肥料。

 肥料ふりか。

 ついに来たか。

 あの不衛生でげろりんなぶつをぴちゃぴちゃとぶちまける悪魔の作業がなあ!


 ……テンションがおかしくなった。

 ううう。

 でもなあ。

 わたしはうんこにさわるのがいやなのだ。


 くさいし。

 不衛生だし。

 精神的に耐えられない。


 いや、別に全然我慢はできるしやれと言われればやるが。

 これはそういう話じゃなくて。

 単なる好き嫌いの話だ。

 うんこが好き。

 うんこが大好き。

 そんな性癖を持った女なんて滅多にいないということはご理解いただきたい。


 で、当日。


 現場に着いた私は、手渡されたブツを見てぽかんとした。


「じゃ、これを適当にふってー」


 バケツ一杯の粉。

 無味無臭。

 ちょっと重たいか。

 太陽の光を受けて、ガラスのようにキラキラと光っている。


「だんな様? なんですか、これ?」

「え? 魔石粉だけど」


 ファビオは普通にそう言った。


「カエデちゃんの担当はこのへん一帯ね。全体にまんべんなく。ふりすぎないように注意して」

「わ、わかりました」


 そのように言われたのだが。

 なんだろう。

 私が想定していた汚い肥料とは、根本的に違うもののような?


『妖精さん……魔石粉とは何だ?』

『えっとー』

『それはねー』


 魔石粉。

 それはそのまんま。

 魔力を蓄えた魔石を粉々にして、粉の状態にしたもの。


 なんでもモンスターの死体や魔石鉱山からはこれが取れるらしい。


 粉を畑にまく。

 太陽の光を浴びる。

 すると晶合成とかいう謎の化学反応が起こって、窒素化合物とかリンとかカリウムとかに変化するそうだ。


 バケツ一杯の魔石粉をまくだけで。

 10アール1000平米の畑一年分の収穫をまかなえるほどの効力を発揮してしまうらしい。


 ええー。

 なにその無駄にファンタジーなのか科学的なのかわからない謎現象。

 魔石ってそんなものなの?


 私はてっきり。

 魔術の触媒とか錬金術とか。

 そういうのに使うと思っていたのだが。


 いや。

 これも錬金術か。

 ハーバーさまやボッシュさまも真っ青の空気パン製造術である。

 この魔石肥料さえあれば。

 連作障害やら土壌改良なんて一切気にせずに、永遠に作物が取れる。

 こうかはばつぐんだ。


 なにそれ。

 ずるい。

 チートすぎる。

 この世界、もしかして前世よりも便利なのではなかろうか。


『妖精さん……この世界って人口どれぐらいなの?』

『ひゃくおくー』

『いじょうー』


 ごくりとつばをのみこむ。

 えええ。

 100億。

 以上。

 それってつまり、現代の地球より多いってこと?

 その規模の人口を、この程度の科学技術で養ってしまえるものなの?


 どれだけ世界が広いのだ。

 いや。

 それだけ魔石肥料がチートなのか。

 ふれば作物が取れる。

 まさに神の恵み。

 この世界では人があまりにも軽視されすぎていると思ったが。


 そこまで簡単に食い物が取れるのであれば。

 産みたいだけ産める。

 増やしたいだけ増やせる。

 そういうことか。

 多少死のうがどうでもいいと考えてしまうのも無理はない。


『まこー』

『まこー』


 妖精さんの合いの手に従って肥料をぱらぱらする。

 お散歩気分だ。

 他の仕事と比べても格段にかんたん。


 秋風が少し冷たいが。

 それぐらいか。

 村のそこかしこで肥料がまかれている。


 大地主の息がかかった名士が集まって、一斉に肥料をまく。

 秋の風物詩だそうだ。

 冬はどれだけ土が肥えていても草が出ない。

 が、寒い。

 働く気が起こらない。

 肥料まきというのは収穫を終えた晩秋から冬にかけてやるものらしく。

 その時にはみんな暇のため。

 村中総がかりで方々に粉を撒くとのこと。


 すぐに終わってしまった。


 あっけない。

 なんだ。

 こんな仕事に村中で注力する必要があるのだろうか。


 よく見ると。

 この仕事は小作人がいっさい関わっておらず。

 土地持ちの有力者がみずから働いているために、結果として村中で働いているように見えるのだ。


「完全に人任せにすると、トラブルが起きやすいんだよねえ」

「へー」


 仕事を終えた私はファビオと一緒にぬくぬくとお茶を飲んだ。

 メイドさんが茶請けを用意してくれる。

 謎のもちもち団子。

 うむ。

 ふつう。

 べつに美味しくはないが。

 とりあえず体に悪くはないし腹もふくれるため、これはこれでありか。


「昔は小作人に任せてたんだけど、魔石肥料ってかなり貴重品だからさ。ネコババして横流ししちゃったりもするんだよ」

「なるほど」

「他にも、よその農家の土地にまいて、後から賄賂を受け取ったりとかね。すぐにばれるんだけど。魔石肥料はあるのとないのとじゃ全然作柄が違うから、担当者は首切られて見せしめに処刑コース」

「うわー」


 ひどい。

 そこはむち打ちとかにしておけばいいのに。


 この世界では下層の人間の命が本当に軽んじられているため。

 窃盗やらケンカなんて程度の事件でも。

 わりと。

 すぱっと。

 殺されてしまうことがあるようだ。

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