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清純派でいることに疲れたので、これからはビッチで通そうと思います  作者: きえう
終章ー3 清純派ビッチヒロインの最後
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第2話「話が勝手に進みます」

「妖精王女の権能において命ずる。姿をあらわせ。男運。そして、さげまん」


 違和感が体を走り抜ける。

 ぎゅっと。

 体が絞られるような、奇妙な圧迫感を感じて、それから。


 私の体の中から、2匹の妖精さんがぽんと飛び出した。


『え、誰?』

『……』

『……』


 オトコウンと。

 サゲマン。

 いや。

 本当にそうなのだろうか。


 眼が濁り、唇はひび割れ、肌だってしわだらけ。

 彼らの体は欠けていて、ボロボロで、その手足からは腐り落ちている最中であるかのような異臭が漂っている。


 なんて。

 不気味な妖精さん。

 それは神聖さなんて全然ない、邪悪なピエロのようで。


 私は。

 こわくなった。

 じゅうじゅうと煙を上げる体は溶け落ちて気持ち悪く、その傷口からは大量の白いウジが沸いている。


『な、なんで?』

『……』

『……』


 妖精さんは何も答えてくれない。


 違う。

 そうじゃない。

 妖精さんはそんな不気味な姿ではなかったはずだ。


 最初見たときにはもっと……純白で可愛げがあって、清廉な雰囲気をもっていた生き物だったのに。


 いまは。

 ぼろぼろだ。


 手足がなくて、服もすりきれて、羽もずたずたで。


 ウジ虫のような不気味な生き物に吸い付かれて、2人の妖精さんは苦悶の表情を浮かべている。

 神秘的なオーラが消えている。

 うるおいをなくして風化する最中のように、今にも息絶えそうな様子で地面に転がりもだえている。


「これで、無力化ってとこか?」

「のんのん。妖精はマスターから離れても契約解除にならない限りは力を発揮できる。それに、えろもんは妖精と関係ないスキルの力だから私には何もできない。管轄外」

「へえ。たとえば美咲が僕を守らずに、こいつを抱いたとして……そのデメリットは?」

「ノエルに嫌われちゃうよ。えろもん体に残るから。他の女のにおいがーとかなんとか言われて、たぶん修羅場まっしぐら」

「最悪だな……カップルクラッシャーかよ」


 ものすごく嫌そうな顔で、ウォーレン侯爵が私を見た。


「それに、いくら私でもセックスを通じて発動されるレベル2さげまん妖精の運命簒奪は防げない。だから間違ってもカエデちゃんを襲ったりしないでね。守り切れないから。キュウセイだって正気には戻せたけど、奪われた運までが回復したわけじゃないんだよ」

「さげまんに偽りなしか」

「うん。運命改ざん系の妖精2匹とか、やばいよね。頭がぱーになるレベル。もともと妖精のマスターは精神がおかしくなる傾向があるっていうのにさ」


 と、そこで。

 つんつんと頬をつつき。

 妖精少女はウォーレン侯爵に対して非難の視線を送っている。


「……なぜ僕を見るのだ」

「自覚ないの?」

「僕は正常だ」

「正気じゃない人はみんなそう言うんだよ」


 はあ、とため息をついて、妖精少女はぴっと私を指さした。


「とにかく、カエデちゃんは妖精持ちプレイヤーの中でも特別やばい。妖精を2匹連れてるプレイヤーなんて世界でもたぶんカエデちゃんだけだよ」

「そうなのか?」

「うん。引きが尋常じゃない。レベル2妖精はコストが高いんだ。妖精系スキルの取得には1匹150ポイント、2匹で300ポイントが必要だから。まともにやったんならポイントが足りないはず」

「個人の特殊スキルってやつか?」

「それはない……はず。あれはそこまでバランスブレイカーな設定じゃないの。妖精スキルはこの世界のプレイヤー全員で奪い合うものなんだから、最初から2匹も付与されるなんてありえない」

「こいつは持ってるぞ?」

「うん。だから、よっぽど本人向けのスキルがよかったのか……もしくは、非正規ルートで転生したか」

「非正規?」


 ウォーレン侯爵はかるく首をかしげてから妖精少女に問いかけた。


「非正規とはなんだ?」

「パソコン画面でキャラクター設定する。これがルートA。自殺か事故死で転生するのがルートB。学校の中に点在する転生イベントに巻き込まれて転生するのがルートC。ルートA以外は非正規だけど、運しだいでは普通じゃないスキルが得られる」

「ふうん」

「カエデちゃんのスキルはこれかもね。魅了2と強運2の効果があるスキルって、ウルトラスーパーレアだから。スキル性能単独ならこの子、カルラよりも上だよ」

「僕はどうだ?」

「マスターは別格。私とセットだし」


 妖精少女は自慢げに胸を張った。


「ルートBは自殺……ってことだが、そんなやつがいるのか?」

「さあ。たぶんいないはず。飛び降り自殺とかだと難易度高いよね。普通しないし。強いて言えばルートCのイベントで危険度が高いものに巻き込まれて死んだとか。この場合は能力値にボーナス入るから、かなり強力な転生者になるらしいけど」

「へえ」


 そりゃー厄介だな、とウォーレン侯爵はつぶやいた。


「つーか教えろよ。僕以上の転生者もいるかもってことだぞ?」

「妖精は聞かれないことは教えられないんだよ。てゆーか、聞かれないと情報を得られないというべきか。今の説明だってカエデちゃんと出会ってはじめて開放されたの。小出し主義なんだよねえ」


 困ったように眉を寄せて、妖精少女は金の鱗粉をまき散らしながらくるくると空を飛んだ。


「で、こいつもそのルートBかCのクチなわけ?」

「たぶんね」

「こいつ、最底辺から3年で子爵まで成り上がったってことだよな。すごすぎだろ。成り上がり能力ならクラス最強なんじゃねーの」

「そだね。でもそれは魅力の力だよ。男にくっついて引き上げてもらっただけだから、自分の力で成り上がったというのはどうかな?」

「魅力200の力か。お前、たしか魅力は部下の忠誠心には影響ないとか言ってなかったか」

「部下にはないけど恋人にはもちろんあるよ。だって魅力だもの。マスターの場合だとノエルとか、普通の魅力ならもっと早く落ちてただろうと思うし」

「カルラはどうなる」

「あの子は凌辱願望持ちだからね。神鳥きららの場合、むしろ魅力が少ない方がモテるかも」


 なんだ、その会話は。

 カルラ・ブロッコリー公爵令嬢。

 彼女も転生者なのか。

 上位貴族と言うのは転生者だらけか。


 いや。

 そういえば。

 心当たりはあるな。

 カルラ様はたしか、ウォーレンがもし負けたら私が相手をしよう、などと言っていたような気がする。


 それは。

 勝ち負け、の話なのか。

 私たちはそもそも、この世界で何をやらされているのだ。


「まあ、システム上の魅力ってのは恋愛においてのみ作用する力だから。友愛とか家族愛なんてものには関係ないし、上下のつながりにも影響はないんだよ。限定的なんだよね。だからまあ、魅力一つでのし上がったカエデちゃんが超すごいってのは誰もが認めるところ。クラスで一番の怪人だと言ってもいいかもね」

「だよなあ」

「てゆーかさ、ルートC転生ってデメリットが大きいスキルばっかりのはずだから、設計的には3年以内に死んじゃうのが自然なの。さげまん2とかえろもんとか、やばいでしょ。カエデちゃんは奇跡的にスキル同士が弱点を補いあって、かろうじて生きてるだけって感じかな。もっとも」


 それも長くはなさそうだけど、と、妖精少女はまとめた。


 二人の意識が。


 私へと向いた。

 どうなる?

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