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清純派でいることに疲れたので、これからはビッチで通そうと思います  作者: きえう
終章ー2 人生最後の思い出を作りましょう
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第8話「上流階級からの命令」

 そして。

 それから。


 なんとなくエリカちゃんのことが気に入った私は、定期的に家に呼んだり寮に押しかけたり。


 たまにはお茶などに誘って、エリカちゃんから断られたり誘拐したり殴られたりしつつ、学園生活をつづけた。


 で。

 済めばよかったのだが。

 しかし。




 ある春の日のこと。

 学校から呼び出しがあった。

 何事かと顔を出してみると……部屋の中にはずらりと、学校でもそれなりの地位にいる淑女のみなさまがた。


 なぜ、こんな場所に呼ばれたのか。

 ということは。

 すぐに説明があった。


 5人ほどの有力貴族女の中でも特に地位の高い、ナインテール公爵家の直系嫡孫オリンピアダ様が私に向けて真っ向から声をあげる。


「いい加減、目障りなのですよ」

「ははあ」

「どうにかしなさい」

「えーっと」


 目障り、なのは。

 もちろん私ではなく。

 キュウセイ伯爵子息にことあるごとに付きまとい、最近では授業中やら社交界やらでも頻繁にでしゃばっているエリカちゃんのことだ。


「なぜ私に言うのですか?」

「え、だって、エリカはあれでもブロッコリー公爵家派閥の生徒なのでしょう? こちらで虫のように潰すこともできますが、その前にそちらで内々に処理したほうが平和だというだけの話です」

「…………なるほど」


 そうか。

 エリカはあれでも、カルラ派閥の生徒だと認識されていたのか。

 実態は違うのだけど。


 私がひんぱんに連れまわして歩いている関係上、いつの間にかそういう生徒だと思われていたようだ。


 この学校にある貴族派閥は3つ。


 エニウェア侯爵家やブロッコリー公爵家が属している革新派。

 アクアタス侯爵家やナインテール公爵家が属している保守派。

 あとは、その他大勢が属する中小貴族閥。


 番外として、どこの派閥にも属していない中立派というのもあるけれど。


 勢力は上から順に。

 革新派>保守派>穏健保守の中小貴族>完全中立の個人主義者、という感じ。


 一番後の勢力にはアトラス公爵家とかも含まれるので、必ずしもこの順番で偉いというわけでもない。


 派閥と言えども学校内でのこと。

 領地運営に関わる重要なことを決める権限なんてのは一切ない。

 結束もゆるゆる。

 革新保守なんてのも傾向的にそうというだけで、派閥の力は学校内においてどれだけ『でかい顔』を保っていられるかどうかという点についてのみ使用される。

 

 よーするに。

 大派閥に属していれば人をいじめられるし、人からのいじめも受けずに済む。

 それだけ。

 もちろん派閥内部での権力闘争などによって被害を受けたりもするが、基本大派閥に属していれば美味しい思いができるという考えで間違いない。

 

 中小貴族派閥は上の2つに入りたくても入れない人が属する勢力であるから、基本無視してオーケー。

 警戒すべきはナインテール公爵家がまとめる保守派閥。

 今回私を呼び出して注意喚起しているのも、ナインテール公爵家の孫娘であるオリンピアダ様だ。


 オリンピアダ様は16歳。

 ぴちぴち。

 カルラ様ほどではないにせよ美人だし、魔力もそれなりにある。

 家柄の良さは言わずもがな。

 金髪ロングストレートの超正統派な美少女で、まさしくおとぎ話に出てくるお姫様そのものといった雰囲気を持っている。


 しかし。


「私の記憶では、ブロッコリー公爵家とナインテール公爵家が敵対しているという話は聞かなかったのですけれど?」

「当然です。両家は友好関係にあります」

「なら、そちらで処理しても問題はないように思われますが?」


 ピキリ、と顔をひきつらせて、オリンピアダ様は私をにらみつけた。


「身内の恥をそそぐのは身内であるべきです」

「いやあの……だから、それ、私がやる必要ありますか? お姉さまがたがやればいいのでは?」

「あれでもキュウセイ様の知人です。暗殺は望ましくない」

「私もやりたくないですけど」

「カエデ様は……その、名声が汚れているので。いまさら問題ないのでは?」


 うわあ。

 正気かよ。

 無茶苦茶いいやがるな、このアマ。


 エリカちゃんもたいがいだと思うけど、オリンピアダ様はオリンピアダ様で公爵一族としての自覚がありすぎる。


「汚れてるから、なおさらひどいことはしたくない。そういうものなのです。話が終わりなら、これで」

「ま、待ちなさい!」


 部屋を去ろうとする私をオリンピアダ様が引き留めた。


「たかが子爵が、私を敵に回すつもりなのですか!?」

「どういう意味です?」

「ど、どうって」

「私は戦場で人を斬ってまわったし、自分より上の相手と何度も真っ向から殺し合ってきました。殺されかけるのには慣れています。敵に回すとは、そういう意味での発言ということですか?」

「な、に、を」


 オリンピアダ様は真っ青になって震えている。


 ふん。

 軽くにらんだだけで、それかよ。

 小娘が。

 私は子爵家の当主だぜ。

 いくら公爵家の嫡孫だからって。

 お前が公爵の地位につけるとは限らないし、それも20年以上先の話だろ!


「いくら……いくらカルラ様からの寵愛があるからって、好き放題していいことはないのですよ!?」


 おお。

 すごいな。

 オリンピアダ様が拳を握りしめて勇気を叫んでいる。


 私みたいな頭のおかしい女に意見できるなんて。

 よっぽどのことだ。

 これはどうも、ちゃんと考えなければならない話なのかもだな。


 私は。

 目を閉じて吟味して。

 そして。


 結論を出した。


「…………少し、時間をいただけますか。こちらでうまく処理できなければ、オリンピアダ様の側で対処をお願いします」

「けっこう」


 オリンピアダは堂々と胸を張ってうなずいた。

 ううむ。

 引き受けた……ことになってしまったか。

 らしいな。

 貴族社会のルールはともかく。


 私の持つ翻訳スキルは、この件に関しての責任が私に移ったことを伝えている。


 ううう。

 カルラ様がこの学校にいればなあ。

 こんな公爵家の孫娘ごときにでかい顔させないんだけど。


 しかし。

 彼女は現在、長男のコウモク公爵子息と継承戦争の真っ最中であるらしく。

 ここにいない。

 ので。

 学校内におけるヒエラルキーが微妙に変わり、ナインテール公爵家の一派が台頭しているという感じであるらしい。


 まあ。

 いずれにしても。

 たかが庶民の分際で調子に乗りすぎているエリカちゃんをしつけるのは、いつか誰かがやらなければならない課題なのは間違いない。


 はあ。

 嫌だな。

 妹みたいに可愛い子だから、そういう役目は人に任せて甘やかしたいんだけど。


 やむをえないか。




 と。

 ゆーわけで。

 私は心を鬼にして。


 ざまあ作戦を行った。

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