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清純派でいることに疲れたので、これからはビッチで通そうと思います  作者: きえう
終章-1 死の気配が押し寄せています
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第4話「子供も死にました」

「…………!」

「…………っ!」


 防ぐ。

 ナイフを素手で。

 きつい。

 体が重い。

 相手もケガをしているが、それ以上に私の体調が悪いのだ。


 あるいは。

 全力で魔力を使えば、まだ五分に持ち込める。

 かもしれない。


 し、しかし。

 私は躊躇した。


 それは、まずい。

 気がする。

 本能が叫んでいる。

 誰にそれを教えられたわけでもないのだが。


 妊娠中に魔力をフル活用して動くのは。

 もしかして。

 胎児に負担がかかるのでは?


 迷いが隙を生む。

 衝撃。

 腹を殴られた。


 う。

 ううう。

 子供を守る、ためにも。


 まず私は、自分を守らねば!


 私は迷いを振り切って全魔力を開放した。


 痛みが消える。

 重さも。

 体がすごく軽い。


 私は足を跳ね上げて、ハイキックの外回し蹴りでマリリンの側頭部を打った。

 ガード。

 されたが。

 衝撃を逃がしきれなかったマリリンが壁際までいっきに吹き飛ぶ。


 こ。

 ここだ。

 迷うな。

 ここで攻め切れなければ、監禁生活で体力が落ちた私に勝ち目はない!


「うおおおおおおおおおおおおおおっ!」


 叫ぶ。

 全力で。

 全魔力を体から噴出させる。


 突き放すためのジャブを払い、服をつかみ、強引に壁に押し付ける。

 ガンガンと。

 何度も、頭突きを浴びせた。

 そのうちに相手の腕力がなくなって、呼吸も荒くなってきた。


 いける。

 私も、汗だくで、へろへろだが。


 私はマリリンを地面に引きずり落とし、そのまま勢いよく蹴りつけた。


 転がる。

 2度。

 3度。

 逃げる戦闘メイド。

 しかし。

 それがどうした。

 私は機敏に動き、腕で強引に体を押さえつけてから何度も顔を殴った。


 殴る。

 殴る。

 殴る。


 顔の形が変わる。

 反抗がなくなった。

 狐耳メイドのマリリンはみっともなく泣きだした。

 はは。

 ぶざまだな。

 鏡でみせてやりたい。

 私は手をふりあげ、トドメとばかりに全力で叩きつけた。


 ガン、と、すさまじい手ごたえがあって。

 マリリンは動かなくなった。

 死んだか?

 いや、それは問題ではない。

 抵抗がなくなったのだ。

 生きていようが死んでいようが、次の瞬間には同じことになる。


 私は立ち上がり。

 マリリンの顔を力いっぱいに踵で踏みつけてやった。




「カエデ様!」


 助けがやってきた。

 部屋の端で。

 私は震えている。


 いたい。

 いたい。

 いたい。

 気持ち悪い。

 吐き気が際限なくこみ上げて、腹の中にあるものが異物であるかのように気味悪く蠕動している。


 う。

 ううう。

 汗がとまらない。

 ま。

 まずいぞ。

 これは子供が無事とか以前、もはや、私そのものが。


「か、カエデ様! すぐに医者が来ます! 気を確かにお持ちください!」


 私はわけがわからない状態で運ばれて、塔からの脱出を果たした。




 私は助かった。

 しかし。

 子供は流れてしまった。


 う。

 ううううう。


 ショックで真っ白になる私。

 医者から。

 告げられるまでもなく、理解はしていたが。

 しかし。


 悲しい。

 なぜ。

 どうして。

 育てるのに。

 ちゃんと私は、子供だと認識して一人前になるまで育てるのに。


 嫌いな男の子供とか、そんなのには一切関係なく。

 私の。

 はじめての。

 こどもが。


 う。

 うああ。

 うああああ。


 私は病室のシーツに顔をうずめて泣きまくった。


 ばかだ。

 わたしはばかだ。

 なにをやっているのだ。

 ちょっと監禁されていじめられて逆恨みされたからって。

 身重の状態で、護衛メイドにケンカを売って。

 子供を。

 殺されてしまった。


 そのまま、逃げられたかもしれないのに。

 へこへこと。

 頭を下げてやりすごすべきだった。

 ちょっと誘拐されて牢屋に入れられて屈辱的な扱いを受け続けて殺意にまみれていたからといって。


 だから。

 どうしたのだ。

 復讐が自分の子供よりも大事だったとでもいうのか。




 今回はダメージがでかかった。


 一か月。

 何もする気が起きないままぼんやりと時をすごす。


 療養中。

 たまにファルコーン子爵家の家臣のみんなとか。

 一緒に寝たことのある男とかが訪ねてきてくれて。


 なんとはなしに。

 お見舞いの品を食べながら。

 つらつらと。

 無駄話に花を咲かせつつ、穏やかにのんびりとした時間が流れていく。


 誰も私を責めない。

 怒らない。

 心配してくれる。

 たまに手を握ってうるうると、視線を合わせてキスをして。


 また会おうと。

 元気になったら、どこかにデートでもしようと。

 そんな風に。


 家臣やら貴族家のボンボンやら商人やらから何十回も言われているうちに。

 私は。

 復活した。




 リカバー。




「本当にありがとうございました」

「いいんだ。カエデ。僕は当然のことをしただけだ」


 今回お世話になった人たちにお礼を言って回る。

 なんなら。

 心の準備ができている人については、視線と言葉とでそういう空気を作ってから。


「もう……だめかと思いました。怖かったです」

「カエデ」

「叶うなら、忘れさせてください。しばらく会えないかもしれません。せめて今夜だけでも、お情けを」

「カエデ、わかった」


 と。

 ゆーわけで。

 抱き合って肌のぬくもりを感じて、瞳を濡らして見つめ合い。


 ギシギシ。

 アンアンと。


 私はこの体一つを捧げて謝礼に代えておいた。


 ちょろい。

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