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清純派でいることに疲れたので、これからはビッチで通そうと思います  作者: きえう
終章-1 死の気配が押し寄せています
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第2話「誘拐されました」

 終わりは突然やってきた。


 冷静に考えれば、この時の私は地雷原を鼻歌まじりに歩き回っていただけで。

 いつ爆発するともしれない。

 そういう状況にあった。

 の。

 だが。


 それに気づいたのは、本当にどうしようもなくなってからであった。


 周囲一帯の貴族と関係を持ちまくり。

 出会いと恋愛にどっぷりつかった春が風のように過ぎ去り。

 そして。


 季節は初夏。

 その日、私は伯爵貴族が主催するパーティーに呼ばれていた。

 ドニス伯爵。

 47歳。

 白髪交じりの低身長デブ男。

 外観的にはまったく魅力はないが、権力はすごくある。


 エーデン平野一帯では一番大きなアクアタス侯爵家に次いで発言力の高い、レベルゴ伯爵家の当主様だ。


 屋敷に入ると、青や赤のマーカーでごっちゃになった参加者が表示される。


 ううん……ちょっと赤い、かな?

 10近く。

 私への敵意を持つ人間が参加しているようだ。


 奇妙だ。

 2人や3人ならともかく。

 妖精さんマップにおいても、これだけ敵意のある参加者が大量にそろっていることは珍しい。

 しかも。

 一部がぼやけている。

 参加者が持っている魔力などの詳細がよくわからない。


 まあでも、この程度なら。


 私は楽観した。

 出かける前から相手の家に非好意的な人物がそろっているのはよくあることであるし。

 10名足らずでは。

 私は倒せない。

 仮に敵意ある者全員が結託して私に襲い掛かって来ても、十分対応できる程度の戦力しかいないようだ。


 私は。

 嫌われていた。

 男を寝取りすぎた。

 行く先々の社交会場において。


 婚約者や妻や幼馴染から水をかけられたり。

 罵声を浴びせられたり。

 そういうことは、よくあった。


 私はこのあたりから、人に敵視されることに慣れすぎてしまっていた。


 だから。


 そのバケモノ共が、自分の戦闘力を妖精さんサーチから隠せる力を持っている、などということは。

 考えたことも、なくて。


 結果。


 気づいた時には、人気のない屋敷の地下にまで。

 呼び出され。

 囲まれて。


 そして。

 目の前には敵だらけ。


「カエデ殿。私はドニス伯爵。悪いようにはしないゆえ、ご同行願おうか」

「……勝手なことを」


 私は男たちをにらみつけた。


 総数。

 10名か。


 獣耳の女が2人と、後は複数の強兵たち。

 兵士はともかく。

 あの女。

 2人とも。

 かなりやばい。

 一人一人が、私に匹敵するぐらいの実力者だ。


 武器もない。

 ドレスで肌はむき出し。

 敵地。

 窓なし逃走ルートなしの地下空間。

 叫んでも声は上に届かない。


 この状況下ではとても。


 勝ち目は。

 ないか。

 私は手をあげて降伏することにした。


「……わかりました。しかし、あまり手荒な真似はしないでほしい」

「いいとも」


 チビブタのドニス伯爵はおうようにうなずいた。


 で。

 手枷足枷にさるぐつわ。

 プラス。

 魔力ショックを与えるタイプの気絶魔法を、何度も何度も体に打ち込まれて。


 私は気を失った。

 そして。


 浚われて。

 運ばれて。

 監禁と。


 そーゆーコンボを受けて。


 私は頑丈な鉄格子で固められた塔の一室に幽閉され、そこで苦悶の日々を過ごすことになった。


 え。

 えええ。

 うっそー。




「……出しなさい! なんのつもりですか!? 私はファルコーン子爵家の当主なのですよ!」


 さすがにあせって、解放を訴える私だが。


 女の護衛達は……汚らしいものを見るような目で私を見て、まるで助けてくれない。


 どころか。

 ドニス伯爵に襲われている私を見て、くすくすと笑いながら。

 時には積極的に両手両足を押さえつけて、泣いている私を指さして楽しそうにはしゃぐのだ。


 お。

 お前ら。

 ころす。

 殺してやる。


 顔は。

 覚えたぞ。

 絶対に許さない。


 私は空想の中で何度も彼女たちを斬り殺し。

 この手に剣さえあればと。

 屈辱の涙を流した。




 ある日のこと。

 ドニス伯爵はいとおしそうに拘束されている私の体をなでつけながら、寝物語をはじめた。


「これがなんだかわかるか?」

「それは?」


 伯爵の手の中には、奇妙な宝石のようなものが埋まっている。


「これは力の欠片……『異世界転生者の核』よ。他の誰にわからずとも、お前ならおそらくこの意味がわかるのではないかな?」

「それは……」


 私たちの。

 平和京高校生たちの、何かか。

 残念ながら私には、その意味はよくわからないけれど。


「ははは、つまり私には、お前の持つ魅了の力がそれほどには及ばぬのよ。だから、たとえば」


 ずぶり、と私の手の甲に、鉄製の串が刺し通された。


「あああああああああああああああああ!?」

「と、このようなこともできる」


 ドニス伯爵は悲鳴をあげる私を楽し気に観賞する。


「幸運だ。私はな。おそらく出会うことさえ困難であろう、もはや世界に20人とおらぬ1年A組の怪物。神の使徒をこの手に抱けるとは、まさに僥倖。このような劣化品の核など、貴様自身の価値に比べれば塵芥ほどでしかない」


 恍惚とした表情で話を続けるドニス伯。


「今はまだ、誰も知らぬ。これの価値をな。しかし……いずれ世界が気づくだろう。私はその前に可能な限り有利な状況を作りたい」


 ドニス伯爵はひとつうなずいて、


「カエデよ。お前は、それゆえに。ここで余生をすごして」


 むき出しの私の腹にほおずりし、うっとりとした表情を浮かべ、そして、


「我が子を産め」


 と、絶望的な未来を口にした。

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