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第5話 「コロシアム」



"人間立ち入り禁止"


美乃を背負いながら大きな木の近くまで行くにつれ、このような意図を示す看板を見掛けるようになった。


中には人間の頭蓋骨をぶら下げたものまであった。


異様なまでの憎悪や嫌悪を感じる。


なぜだろうか。

差別にしてもやり過ぎだ。

別にここまでする理由がない。

意味もなく喧嘩してるだけなのに。


「うぇっ。気持ち悪い」


美乃が俺に担がれながら呟く。


本当に気持ち悪い。

反吐が出る程に。


「これなんだか過激な宗教っぽいね!」


「確かに宗教だなこれ」


「あたしはTKG教の教祖だよ!めっちゃ色んな美味しい食べ方知ってるもん!例えば……」


なんかベラベラ喋りだした。

知らんがな。

とりあえずシカトしとくか。


まぁ、確かに宗教っぽい。

宗教ってことは教祖がいるのだろうか。

人間は悪だ。

人間を殺せ。

そんな内容を唱える教祖が。

人間の魔族に対する考えも宗教的だ。

魔族は悪だと魔族殺せと唱え続けてる教祖がきっと存在する。

そいつらをぶっ倒せば人間と魔族の共存も実現できるかもしれないな。


思考を巡らせてる最中なのにゴニョゴニョうるさい声が邪魔してくる。

美乃がまだご高説を垂れていた。

下ろすぞ、てめぇ。


「納豆を入れても美味しいけど、納豆入れちゃうとTKGというより納豆ごはんになっちゃうから反則なんだよね。やっぱりTKGはシンプルが1番!違うものを入れるのは禁止!醤油だけだと卵の美味しさが……」


「違うものを入れても旨いならいいだろ」


「ダメ!それだとTKGじゃなくなっちゃう!」


「生卵が入ってればTKGってことでいいじゃん。その固執した考えがTKGの幅を狭めて、さらなる深みにいけなくなるぞ?」


「ぐぬぬ!TKG界の革命児め!その意見少しは取り入れてやろうぞ」


はぁ……。

TKG教はちょろいな。

人間と魔族を仲悪くしてる教祖もこいつくらい簡単に説得されてくれよマジで。




●○●○●○●○●○●○●○●



やっと大きな木の近くまで来た。


「美乃、もうちょいだ」


返事がない。

眠ってんのか?


大きな木の近くの道は綺麗に舗装されている。

文明レベル結構高いんかな?


塗装された道を歩くと大きな木を囲うように高い塀がそびえ立っていた。


相当広いぞこれ。

村というより街だな。


高い塀に沿うように歩くと巡回中なのだろうか?警察っぽい服装の魔族に出会う。

警察がいるってことは治安もしっかりしてんのかな?


「どっからこん中に入れんの?」


「だ、大丈夫ですか?背負われてる方、お怪我されてるようですが」


優しいなこいつ。


「大丈夫。で、どっち?」


懇切丁寧に城門までの道を教えてくれた。

人間の村の図書館に書いてあった野蛮な生物ではない。


人間も魔族も優しい奴は優しい。


きっかけさえあれば絶対に人間と魔族は共存できる。

きっかけ作りは俺がなんとかしてやる。



城門では大量の多種多様な魔族が

出入りしている。


門を潜ると活気に満ち溢れた魔族の喧騒に圧倒されてしまった。


横浜中華街かよ。

人混み苦手なんだよなぁ……。


病院を探して街を散策する。


学校、警察署、食品売り場、酒場、ギルドなどを見つけた。

ちゃんとしてんじゃん。


病院もこの文明レベルだし当然あった。


どうにかして美乃を入院させた。

お金の事をもにょもにょ言ってた気がするがシカトした。


美乃が回復するまでどうしよう。

とりあえずあのデカイ木まで行くか。




●○●○●○●○●○●○●○●



木の近くまで行くとより大量の魔族の喧騒に溢れていた。


「今日もまたハヤトが勝つよ!」


「間違いないな。歴代でも最強のチャンピオンだ」


「急に現れたと思ったら50連勝だもんね!」


途中、ハヤトって名前をそこら中で耳にした。

嫌な予感がする。


デカい木は内部に入れる仕組みのようだ。

入ってみるか。


パチンコ屋に入ったときのような耳を総攻撃する歓声が襲ってきた。


歓声の先では2人の魔族が決闘をしている。


中は東京ドームくらいの大きさのコロシアムになっていた。


5万人くらいは入るんじゃないか?


決闘は見ていて最高に楽しい。

2人の努力とプライドのぶつかり合いだ。

見ているとつい大声で歓声を送ってしまう。


5組くらいの決闘を観戦してしまった。

熱中すると時間が過ぎるのは早い。


「次が最終試合のチャンピオン戦です!」


怒号が如く歓声が打ち上がる。


「ハヤトーーー!!!」


「ハヤトいけーーー!」


「ハヤト!ハヤト!ハヤト!」


例のハヤトの登場か……。

嫌な予感が当たらなければいいが。


「ハヤト、入場!!!」


ワァアアアアア!!!!


今日1番の大歓声だ。


入場したのはハシビロコウと人間のハーフみたいな見た目のスラッとしたイケメンの魔族だ。


嫌な予感は大体当たる。

その魔族は赤いマントをしていた。


「キャーーーー!!」


横の女が奇声を発した。

うるせぇーマジで。


まぁ、こんだけイケメンでチャンピオンなら人気も出るだろう。


赤いマントでハヤトか。

たぶんそうだろう。

最終確認の為に決闘を見るか。



カンカンカン!!!


相手選手の紹介もそこそこにゴングが鳴った。


決闘って何なのだろうか。

そう考えてしまうほどの有り様だ。

まるで訓練された軍人が赤子をあやしているみたいな決闘だった。


けれども知りたいことは知れた。

歩き方や細かい所作からして間違いないな。


俺の同級生で、卒業した内の1人。


ハヤト…隼人だ。

如月隼人に違いない。




○●○●○●○●○●○●○●○



隼人の出待ちをして声をかけた。


「隼人!お前もこっちに来てたんだな!」


「ん?誰だよお前?」


「本城だよ!こっちの世界のジョーカーとして転生したんだ!」


「え?本城さん?」


「そうだよ!」


「いやー!本城さん!嬉しいなぁ!まさかジョーカーが本城さんだったなんて!こっちに来てからずっと心細かったんですよ!」


こいつは自分より強いと思った相手には敬意を表して敬語を使っている。

この敬語からして間違いない。

やはりハヤトは紛れもなく如月隼人だった。


「お前チャンピオンってスゲーな!よくやってるじゃん!」


「いやー、人間ぶっ殺す軍隊作ろうと思って資金集めしてたんすよ。本城さんこの街にいるってことは魔族側に付いたんですか?」


隼人らしいな。

しっかり計画を立てて行動しているのだろう。

ちゃんと説得して俺の味方にしないと後々ヤバいことになりそうだ。


「それなんだけどさ、人間と魔族を和解させて皆で生き返れたらなって思ってんだけどさ。俺に協力してくれよ」


「え?嫌ですよ面倒くさい」


「は?なんで?」


「早く生き返りたいんで。自分が人間さっさと滅ぼすつもりなんでそういうの大丈夫っす」


「いや、お前よく考えろよ。人間も魔……」


「あ、そうだった」


隼人は唐突に手をポンと叩いた。


「おい、本城」


は?タメ口?

こいつに初めてタメ口聞かれた。


「前の世界では俺の方が弱かったけどな、こっちの世界ではまだ分からないじゃねーか」


なるほどね。


「本城お前、ここのコロシアムで俺と決闘しろ」


ハヤトって聞いた瞬間にこうなる未来は想像してた。


「俺が勝ったら俺の作る軍隊に入れ、お前が勝ったらお前の言うこと何でも聞いてやる」


「言ったな?何でも言うこと聞くんだな?」


こいつ俺に勝てる気でいるのかよ。

腹立つな。

今すぐにでもシバき倒してぇ……。


「本城、明日でいいな?」


「おう」


「決まりだな。楽しみに待ってるよ」


隼人は俺の前から消えていった。



隼人あいつ俺を舐めすぎじゃねーか?

今後一生俺にタメ口聞けないように完膚なきまでに叩きのめしてやるよ。





●○●○●○●○●○●○●○●



入院してる美乃に会いに戻ってきた。


「美乃、大丈夫か?」


「もう大丈夫!魔法で治してもらった!元気満々だよ!」


「それは良かった」


確かにもう万全の様子だ。

これでひと安心だな。


「それでね、医療費が10万円だって!」


は?高くね?

しれっと言いやがって。

こいつに申し訳ないとかって感情はあるのだろうか?

でもまぁ、明日には大金が手に入るし、問題ないな。



如月隼人か……。

あいつ俺に1度も勝ったこと無いくせになんであんなに自信ありげだったんだろう?


………。

あ!そうか!

ギフトの存在忘れてた!


時間停止とかのチート能力じゃ

ありませんように。








































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